街を歩いていると、不意に耳に入ってくる言葉がある。誰かの会話、カフェのBGM、看板の文字。芸人・鈴木ジェロニモが、日常の中で出会った“ちょっと気になる言葉”に耳をすませて、思考を巡らせます。(連載の詳細はこちら)

本ができてきた。これを書いているときはまだ発売直前で、公開されているときにはもう発売中。エッセイ集『もっと真剣になればよかった』。小説も書いた。読んでほしい以外の気持ちがない。
サイン本を作るべく、版元であるリトルモアさんのオフィスへ向かう。折り畳み傘を持っているならば差すべきだろうくらいの霧雨の中、その通り折り畳み傘を差す。しかし差していないのと同じくらい、湿度で全身汗だるまになって到着。入り口前で数分汗を拭くも意味のなさに笑えてきて、何かに申し訳なさそうに入館。
入ってすぐの広いテーブルに、私の本がある。海のように広げられ、塔のように積まれている。「もっと真剣になればよかった」。題字と全ての装丁はデザイナーの佐々木俊さん。青、水色、エメラルド、そのどれとも言えてどれとも言えない鮮やかなカバー。オセロのように平面に並べるとカバーの色が繋がってどこまでも延びる水のよう。眺めるほどに愛着が湧いてくる。
撮ってもいいですか。「もちろんです!」。この角度で、いやこっちから、もっと近くで。最近ストーリーズに、学生時代の友達のお子様たちがよく映る。見るたびに、その素晴らしさに髪をかき上げて参りましたと呟きそうになる。しかし今、みんなもしかしてこういう気持ちで撮ってたのか、と心が通いかける。愛おしさに注がれる光をそのまま捕まえたかったんだ。
エッセイという言葉をずっとうっすら信じられなかった。...