吹奏楽部員たちが部活に燃える日々の中で、書き綴るノートやメモ、手紙、寄せ書き……それらの「言葉」をキーにした、吹奏楽コンクールに青春をかけたリアルストーリー。ひたむきな高校生の成長を追いかける。

第67回はノースアジア大学明桜高等学校(秋田県)#5

シリーズ最新刊『吹部ノート 第73回全日本吹奏楽コンクール』(発行:(株)日本ビジネスプレス 発売:ワニブックス)が好評発売中。

「楽器を吹く資格がない」と言われた私

「芙実子は楽器を吹く資格がないぞ」

 顧問の石崎聖也先生にそう言われ、奥寺芙実子は事の重大さに気づいた。

 それは1年ほど前、高2の5月のことだった。芙実子は触角(顔の輪郭に沿って垂らした前髪)を巻いて登校し、整容検査に引っかかった。「これくらいは大丈夫だろう」という思いもあったし、引っかかったときも自分ひとりが怒られて終わることだと思っていた。

 しかし、部活全体を巻き込む問題になってしまった。

奥寺芙実子(3年生・フルート)

 吹奏楽部員わずか8人の小さな中学校から、憧れのノースアジア大学明桜高校吹奏楽部に入った。同期は30人もいて、中には全国大会を経験してきた強者(つわもの)もいた。

「こんなところでやっていけるのかな。みんなに追いつけるのかな……」

 そんな戸惑いや不安を抱えながらも、大好きなフルートを必死に練習してきた。なのに、身だしなみという音楽とは関係のないところで失態を演じてしまった。

 石崎先生は言った。

「ホールに掲示されている言葉をすべて『部活ノート』に書き写してこい」

 ホールと呼ばれている専用練習場には、部員が心に刻むべき言葉がたくさん貼り出されている。芙実子は言われたとおりノートを持って練習場の壁に向き合った。背後ではみんなが練習をしている。精神的にきつかったが、それによって改めて自分がみんなに迷惑をかけ、信頼を失ったことを思い知った。

(きっと私はいま——変わるチャンスなんだ)

 大事な言葉は、ただの見慣れた景色になってしまっていた。それをノートとともに、自分の心にも刻み直した。

 すべて書き終えてから、石崎先生のところへ行くと、こう聞かれた。

「明桜高校が大事にしている12のキーワードも写してきたよな? 芙実子はいくつ守れている?」

 練習場の目立つところには、「助言を求める」「気持ちを集中」「失敗から学ぶ」などの12のキーワードが掲示されている。いつも帰りのミーティングでみんなで唱和し、大切にしている言葉だ。

 

「私が守れているのは……3つです」...