吹奏楽部員たちが部活に燃える日々の中で、書き綴るノートやメモ、手紙、寄せ書き……それらの「言葉」をキーにした、吹奏楽コンクールに青春をかけたリアルストーリー。ひたむきな高校生の成長を追いかける。

第66回はノースアジア大学明桜高等学校(秋田県)#3 

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小さな町からやってきたトロンボーン少女

 秋田市から北へ30キロ。秋田県内でもっとも小さく、人口約5千人の八郎潟町(はちろうがたまち)。

 その自然豊かな町から約1時間かけてノースアジア大学明桜高校に通学しているのが、高3の青山侑里香(ゆりか)だ。トロンボーンパートのパートリーダーとして、明桜高校吹奏楽部の明るく迫力のあるサウンドを支えている。

青山侑里香(3年生・トロンボーン)

 部内には小学校や中学校で全国大会を経験した猛者も少なくないが、侑里香の所属していた八郎潟中学校は部員が20名ほど。コンクールは小編成部門に出場し、県大会で銀賞や銅賞というレベル。アンサンブルコンテストでも地区大会から先に進んだことはない。

 だが、明桜高校の演奏の圧倒的な迫力や表現力と、顧問の石崎聖也先生の指導を受けたいという思いから、侑里香は秋田が誇る強豪バンドに飛びこんだ。

 もとから負けず嫌いで、周囲の部員だけでなく「自分にも負けたくない」という意志を強く持っている侑里香は、入部後にひたすら練習に打ち込んだ。練習中に石崎先生が要求する演奏ができず、大きな瞳から何度も悔し涙を流したが、そのたびに侑里香は大きく成長していった。

 高1で早くも55人のコンクールメンバーに選ばれ、未知の世界だった全日本吹奏楽コンクールに出場することができた。だが、侑里香の成長はそこで止まらなかった。

 侑里香はプロ奏者やコーチに指導を受けたとき、大切なことを「レッスンノート」に書き記している。高1の冬、「どうすればもっといい音が出せるようになるのか」と悩んでいたが、レッスンの先生からもらったアドバイスに目から鱗が落ち、ノートに記録した。

どうすれば良い音が出せるのか…
 →そう考えるのではなく、どんな時に良い音が出たかを考える
 

「そうか、いい音が出せたときのことを覚えておいて、それを再現すればいいんだ!」

 この気づきが転機となり、さらに侑里香の成長は加速した。

 高2ではトロンボーンの首席(トップ)奏者に抜擢された。ただ、先輩がいる中でパートのトップを務めることに侑里香は悩んだ。

「先輩がトップだったときはまとまっていたのに、私になったらまとまらない……。どうしたらいいんだろう」

 侑里香は責任を持ってパート練習などでメンバーに指示を出すよう努めた。それだけでなく、「トップ奏者は自分が奏でる音でも示さないと!」と人一倍練習を重ねた。先生からトロンボーンパートに与えられた指導や課題は誰よりも早く理解し、必死に克服した。

 自分に厳しく、誰よりもストイックに。侑里香が努力を続けた結果、トロンボーンパートはまとまりを見せ、3年連続の全日本吹奏楽コンクール出場にも貢献した。全国大会の結果は銅賞で悔しかったが、「最高のパフォーマンスはできた」と後悔はなかった。

自らたぐり寄せた希望の光

 高2の冬、明桜高校ではアンサンブルコンテストへの取り組みが始まった。

 金管8重奏チームが2つ結成されたが、トロンボーンの人数が少なかったため、侑里香は2チームを掛け持ちすることになった。曲は同じ《テレプシコーレ舞曲集II》。片方は同期だけのチームで、もう一方は後輩も入ったチーム。本音では同期だけのチームで大会に出たかった。しかし、校内予選で選ばれたのはもう一方のチームだった。...