吹奏楽部員たちが部活に燃える日々の中で、書き綴るノートやメモ、手紙、寄せ書き……それらの「言葉」をキーにした、吹奏楽コンクールに青春をかけたリアルストーリー。ひたむきな高校生の成長を追いかける。

第65回はノースアジア大学明桜高等学校(秋田県)#2 

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ギョウザ耳のコントラバス奏者

 3年連続で全日本吹奏楽コンクールに出場するノースアジア大学明桜高校吹奏楽部は、「ホール」と呼ばれる学校内の専用練習場で合奏練習をおこなっていた。明るく推進力を感じさせる演奏が響く中、部員たちの中に異彩を放つ男子部員がいた。
 岡田隆之介。コントラバス担当の3年生だ。

岡田隆之介(3年生・コントラバス)

 真剣な目つきで石崎聖也先生の指揮を見つめる隆之介は、右耳が「ギョウザ耳」になっている。ギョウザ耳とは、格闘技で耳が強い摩擦や圧迫を受けることで、ギョウザのように変形することだ。

 実は、隆之介は高1の秋まで、レスリング部に所属していたのだ。

 隆之介は、中学時代はいくつかの部活に入ったりやめたりで、キックボクシングのジムには通っていたが、学校は休みがちだった。明桜高校に入学すると、「何か格闘技がしたい」とレスリング部に入った。だが、レスリングは隆之介に合わず、やる気をなくした。学校もまた休みがちになり、家でゴロゴロしながらスマホでゲームをするようになった。

 

 高1の夏、石崎先生が受け持った音楽の講座を受けた。誰でも自由に受講できるが、吹奏楽部員以外に参加していたのは隆之介だけだった。独学でエレキベースを弾いており、音楽に興味があったのだ。隆之介は一度も休まず講座に参加し、途中で居眠りすることもなかった。音楽というものの存在が隆之介の中で日に日に大きくなっていった。

「何をやっても続かない自分を変えたい。何もしてない自分が嫌だ!」

 そう考えた隆之介は驚くべき行動をとった。石崎先生に「吹部に入りたいです」と入部を志願したのだ。まったくの初心者が、1年生の途中から全国有数の強豪バンドに飛びこむのはハードルが高い。

 石崎先生の答えは「吹奏楽部はそんなに甘くないぞ。やめておけ」だった。先生は隆之介の欠席の多さや飽きっぽい傾向を知っていたのだ。だが、隆之介はめげず、何度も先生のところへ直談判に行った。...