石井琢朗× 菊地高弘が示す「指導者の現在地とこれから」
シンクロナスYouTubeで毎月配信中の『スポー“ツギ”ロン』から注目のテーマについてテキストで深掘りしていく本コンテンツ。
不適切指導が相次ぎ、「指導者のあり方」が改めて問われている令和の野球界。
コンプライアンスが重視される一方で、選手のために踏み込むことの難しさも増している現代。指導の線引きはどこにあるのか、そして“伝える”とはどういうことなのか。
今回の『スポー“ツギ”ロン』では、長年プロ野球の現場で指導に携わる、読売ジャイアンツ二軍監督の石井琢朗と、アマチュア野球の現場を取材し続ける野球ライターの菊地高弘が、「指導者の現在地とこれから」をテーマに議論を展開する。
現場を知る二人だからこそ語れる、リアルな言葉の数々ーー。石井は、これからの指導者に必要な要素として「個性」や「人間臭さ」、そして「情熱」の重要性にも言及。
時代が変わっても、変わらないもの。そして変えていくべきものは何か。これからの指導者像を考えるヒントが詰まった議論を、ぜひご覧ください!
これからの時代に求められる「指導者」とは?
――いま、どんな指導者が求められていると思いますか? 厳しさ、コミュニケーション、やらせる力、叱る、褒める、データに詳しい……情報が増え、アクセスも容易な現在は、指導者はどうあるべきか、も難しい時代です。
菊地高弘(以下、菊地) (表現は難しいのですが)いわゆる教育困難校の取材をするケースがちょこちょこあります。
そこですごく痛感するのが、現場の先生方は言い方が悪いですけども……なんというか、知性・理性を超えたもう野性味溢れる生徒さんを……言葉を選びすぎですね(苦笑)。あの手この手で、社会に出すために一生懸命に奮闘されてる方がいっぱいいらっしゃる。
ときどき、進学校の先生とそういう先生の給料が一緒でいいのかなって思っちゃうぐらい苦労があって。
今すごく難しい時代なんですね。愛があっても厳しい指導をすれば、体罰だと騒がれてコンプライアンスを指摘される。
だから、選手に向き合おうとすればするほどバカを見てしまうっていうのも現実として横たわってるんです。
僕としては、やっぱりそういう信念を持ってやってる先生を今後も理解したいとも思います。
その生徒のために思ってよかれと思ったことが、その瞬間、暴言と取られてしまうかもしれないけど、でも5年後、10年後、彼が卒業したあとに「あの時の先生はこういうことを伝えたかったんだ。俺に言ってくれてたんだな」って伝わるような指導というものを、信念を持ってやる先生は応援したいし、頑張ってほしいなというのは強い思いとしてあります。
――信念があるほど、その指導者の言動が、切り取られ方によっては「良くない先生・指導者」ということになっちゃうわけですね。
菊地 気に食わない先生だから辞めさせてやろうって、計画すれば、怒られているところを動画で撮らせて、ネットにあげて、辞めさせちゃうみたいなことも、スマホひとつで簡単にできちゃう時代です。
だから(指導者にとっては)一線を引いちゃう方がラクはラクなんですよ。
――確かに。距離を取った方が問題は起きないですもんね。
菊地 「ああ、もうこいつダメだ」ってサジを投げちゃった方が無傷でいられるわけですから。でも矜持を持って教壇に立たれてる教育者の方もいらっしゃる。
そういう人たちが単純に「暴力教師」「暴力指導者」だとか、そういう風に言われてしまう風潮はちょっと僕はどうかなって思うところもあります。
――暴力は絶対的に肯定できないのは大前提のうえで、その背景にはさまざまな可能性があるわけですね。
菊地 はい。
スポーツ界のトピックについて、スペシャリストを招きながら、その「次」を探る、新感覚スポーツ討論コンテンツです。
👇これまでの主なテーマとスペシャリスト👇
※テーマをクリックするとYouTube動画をご覧できます。
第1回:柿谷曜一朗×橋本英郎
前編 どうなる森保ジャパン!?9月シリーズで見えた世界一への指標
後編 元日本代表に聞く!W杯優勝の可能性は何%?
第2回:菊地敏幸×菊地高弘
前編 2025プロ野球ドラフト会議 注目選手は?
後編 スカウト会議〜阪神名スカウトの仕事裏側に迫る!
特別編 名スカウトが明かす「阪神ドラフト秘話」
第3回:石井琢朗×菊地高弘
前編 「ビッグスター・大谷翔平登場」で野球界はどう変わった?
中編 指導者・取材者目線!一流選手は「何」を持っている?
後編 消えゆく「昭和の練習」、指導者はどうなるべきか?
第4回:ミムラユウスケ×河治良幸
前編 「CL経験知」足りない日本、どう戦うべきか?
中編 森保ジャパンW杯悲願達成のキーマンは?
後編 南野、遠藤…主力選手の負傷の影響は?
第5回:吉井理人×中島大輔
前編 WBC2026展望!データで見る優勝候補。どう攻略する?
後編 吉井理人が明かす!世界一の舞台裏&連覇のポイント
指導者にも個性があった方がいい。大切なのは人間臭さ=情熱
――(石井)琢朗さんはどう感じられますか。
石井琢朗(以下、石井) 重要なことを話されてるな、と思います。
――本当ですか?
石井 はい。もう今、生きづらいです。そういう世の中になってるから、ずっと言葉を選びながら喋ってますから、指導もしづらいんです。
ーー琢朗さんは「1回スイッチ入ると結構怒るタイプだから抑えてる」と昔からおっしゃってましたけど、今どうなんですか?
石井 なんか年がら年中怒ってるみたいですが、そんなことない。そんなことない。
(中略)
ちょっと前にあの『不適切にもほどがある!』ってドラマやったでしょ? まあ嬉しかった。あのど真ん中にいた世代だからね。
今は「足並み揃えていきますよ」ってなるから団結力はあるかもしれないけど、強い集団はやっぱりできてこないし、個性がない。
菊地 確かに。
石井 個性がない。だから指導者・コーチにも僕は個性があっていいと思うんです。その人の人間味っていうか。
AIの時代がそのうち来たら、コーチなんか必要ないだろうかもしれないけれど。AIが全部指導するだろう時代には、自分はもう生きていないと思うんですけれど…。
菊地 でも、怒るにしても怒ると捉えられるか、叱られてるって捉えられてるかでやっぱり全然違うと思うんで、そこ(厳しく言うこと)はやっぱり大事なのかなと。
石井 そこが人間臭さなのかな、人間味というか、やっぱり必要なのは「情熱」なんですよ。
今あの菊池さんも言ってたんですけど、僕は選手に対して「ああ。言っときゃよかったな」っていうよりも、「ああ、余計なこと言っちゃったかな」って思っても言って後悔するほうが納得する。
だから今この先生がうるせえなって思われたとしても、今言っとかなきゃってことはなるべく言うようにしてる。
菊地 なるほど。
石井 自分もやっぱりそういう経験してますし、選手の頃に、うるせえなってコーチとかに言われててても、結局は後々自分がその立場になった時に、あ、こういうことだなと。
やっぱり同じ立場(=コーチ)になって選手に接するとーー今接し方も難しいんですけど、自分が二十歳の頃、もう自分の子どもみたいな、息子みたいな年齢との選手とかと接するわけじゃないですか。
その時にじゃあ自分が二十歳の時に何を考えてたかなって、まず考えるようにしている。その選手と同じ目線に。
その辺はジェネレーション・ギャップがあるんで、今の流行りだとかは分かんないですよ。コミュニケーション、コミュニケーションって言いながらも全然そこのギャップは埋められないんですけど(苦笑)。
ただ自分が二十歳の頃って何考えてたかな、コーチに何言われてたかなっていうのはなるべく考えるようにはしてます。
菊地 うんうん。
フルバージョン「石井琢朗×菊地高弘が白熱議論!一流選手は何を持っているのか?大打者の共通点とは?」👇
前編 「ビッグスター・大谷翔平登場」で野球界はどう変わった?
中編 指導者・取材者目線!一流選手は「何」を持っている?
後編 消えゆく「昭和の練習」、指導者はどうなるべきか?
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