石井琢朗・菊地高弘が見た「大谷翔平」の効果とは?

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 ワールド・ベースボール・クラシック(以下、WBC)で連覇を目指す侍ジャパンは明日14日(日本時間15日)、いよいよベスト8に挑む。

 対戦相手はベネズエラ。WBCでの対戦は初となるが、ロナルド・アクーニャJrやサルバドール・プレスなどメジャー屈指の強打者ぞろいだ。

 ベネズエラ戦は負けたら終わりの一発勝負、決勝ラウンド序盤のまさに大きな山場となる。

 報道によれば、エース山本由伸がマウンドに上がりそうだが、グループステージを3勝1敗で突破した中南米の強豪相手にどんな投球を見せるのか、注目が集まる。

 もう一つ、今回のWBCにおいて多くのファンから注目されているのが、大谷翔平の”二刀流起用”の可能性についてだ。

 前回大会、”二刀流”でMVPに輝いたが、果たして再現はあるのか。

前回大会、大谷翔平は”二刀流”として大活躍し、日本を世界一に導いた
【PLAYBACK〜2023WBCの大谷翔平】
打者では「打率.435、1本塁打、8打点」。投手では初戦・中国戦で先発登板し、準々決勝・イタリア戦で5回途中から登場。2失点で勝利投手となった。決勝では最終回にクローザーとして登場。最後の打者、アメリカのキャプテンのマイク・トラウトを三振に打ち取り、胴上げ投手となった。

 投げて、打つーー。かつては「非常識」とさえ言われたスタイルを、世界最高峰の舞台で成立させた大谷翔平。

「野球をやっていて人をうらやましいと思ったことはない。でも大谷翔平だけは別」と語るのは、読売ジャイアンツ二軍監督の石井琢朗だ。

 石井自身は現役時代、投手としてプロ入りし、その後野手へ転向。「投げる」「打つ」のどちらも経験したからこそ感じる「二刀流」への思いとはーー。

 そんな大谷翔平の「二刀流」が野球界にもたらした影響について、読売ジャイアンツ二軍監督の石井琢朗と、アマ野球を長年取材する野球ライターの菊地高弘が徹底議論。ぜひご覧ください!

同級生・鈴木誠也とハイタッチする大谷翔平

球界でも唯一無二こんな選手は現れない。 野球をやってて人を「うらやましい」と思ったことはないが、大谷選手だけはうらやましい

――(石井)琢朗さんには、大谷(翔平)選手はどのように映っていますか?

石井琢朗(以下、石井) 球界でも唯一無二、もうこんな選手は現れないでしょう。 野球をやってて人を「うらやましい」と思ったことはないですが、大谷選手だけはうらやましいですね(苦笑)。

僕は(現役時代)ピッチャーをやっていたので、今の時代だったらもしかしたら両方やらせてもらえてたのかな、という気持ちもすごくあります。

 ただ、僕はピッチャーに未練を残して野手に転向したわけではないので、今さら両方やりたいとは思わないですけど……。 でも当時だったら面白かったなとは思います。 

現役時代、投手と野手を経験した石井琢朗。「今さら両方やりたいとは思わないが、当時だったら面白かったな」と話す

――(石井)琢朗さんは高校卒業後ピッチャーとして入られて、しかも勝利も挙げられて(※)。いいキャリアを積まれながら、ご自身で野手に転向を直訴された。「両立は難しい」という思いは、どこかにあったんですか? 

※石井琢朗は1988年ドラフト外で横浜大洋ホエールズ(現在横浜DeNAベイスターズ)に投手として入団。プロ3年間(1989-1991)で通算1勝4敗を記録

石井  (両立する・しないの選択肢はなくて)当初はどっちかしかないじゃないですか。

――常識的に(両方する選択肢は)ないですもんね。

石井 はっきり言って、ピッチャーはそんなに打たなくてもいい時代ですから、打席に立ってもバントだけやれていればいいですよっていう。

――見てみたかったと思いますよ。

石井 ピッチャーをやってる時はもうピッチャーのことしか考えてなかったので、自分本位の視点でしかなかった。 野手に転向してからですね、視野が広がったのは。バッター目線、自分が打席に立った時にピッチャー目線で立てるようになった。

ピッチャーだけで生きていたら、自分の投げたいボールをがむしゃらに投げることしか考えてなかったのが、バッターは一生懸命投げなくても打ち取れることに気づいて。野手にならなかったら気づいていませんでした。そういう気持ちでマウンドに立てて投げていたら、もっと違っていたのかなって思いますね。

――昔、(石井)琢朗さんと、2013年に現役を引退した前田智徳さんと、元広島カープトレーナーの鈴川卓也さんの共同著作のタイトルが『過去にあらがう』でしたね。過去にあらがわないと過去に引かれちゃうという。

確かに「たられば」で言うと、僕も石井琢朗が二刀流で投げている姿を見てみたいと思っちゃいますね。

石井 今時点でも、野球人としてまだ「あらがおう」としてる自分がいますからね(苦笑)。

その気持ちがなくなったときは、ユニフォームを脱ぐときだと思っています。

 

 

スポーツギロン

スポーツ界のトピックについて、スペシャリストを招きながら、その「次」を探る、新感覚スポーツ討論コンテンツです。

👇これまでの主なテーマとスペシャリスト👇
※テーマをクリックするとYouTube動画をご覧できます。
第1回:柿谷曜一朗×橋本英郎
前編 どうなる森保ジャパン!?9月シリーズで見えた世界一への指標
後編  元日本代表に聞く!W杯優勝の可能性は何%?
第2回:菊地敏幸×菊地高弘
前編  2025プロ野球ドラフト会議 注目選手は? 
後編 スカウト会議〜阪神名スカウトの仕事裏側に迫る!
特別編 名スカウトが明かす「阪神ドラフト秘話」
第3回:石井琢朗×菊地高弘
前編 「ビッグスター・大谷翔平登場」で野球界はどう変わった?
中編 指導者・取材者目線!一流選手は「何」を持っている?
後編 消えゆく「昭和の練習」、指導者はどうなるべきか?
第4回:ミムラユウスケ×河治良幸
前編 「CL経験知」足りない日本、どう戦うべきか?
中編 森保ジャパンW杯悲願達成のキーマンは?
後編 南野、遠藤…主力選手の負傷の影響は?
第5回:吉井理人×中島大輔
前編  WBC2026展望!データで見る優勝候補。どう攻略する?
後編 吉井理人が明かす!世界一の舞台裏&連覇のポイント

 

 

プロに入ってくる選手は、エースで4番の選手が多い。そういう選手の方が大成しやすい……可能性を感じる

 

 

―― それは、いいことですよね。ところで、大谷選手の活躍によって、これまでの常識が変わってきていると思いますが、アマチュアの現場はいかがですか?

菊地高弘(以下、菊地) 大谷選手の影響で、二刀流でプロに行きたいと語る選手がすごく増えています。

どっちかに絞るケースが、ほぼ90%以上です。でも選択肢を狭めないという意味で、すごくいい風潮だと思いますね。

実際にやっている人たちに「ピッチャーもバッターも練習するのは非効率では」と聞いてみたところ、基本的にはピッチャーの練習中心という人がほとんどでした。

ピッチャーのトレーニングをすることは、運動能力向上にもつながりますし、ジュニア期のトレーニングとしては野手をやるうえでも役立つという考えの方が多かったんです。二刀流と言いながらピッチャーをメインにしつつ、体もしっかりトレーニングできるという風潮です。

石井 すごくいいこと。

――本当ですか?

石井 僕はいいと思います。 最初ピッチャーで入ってきて3年間投手だったんですけど、やっぱり野手に転向して何が大きかったって、ピッチャーの3年間の練習である程度、基礎体力的な礎ができていたので。

野手に転向してからも、基礎の部分はしっかりやらなきゃいけないと考える癖がつきました。3年間は自分にとって貴重な期間でしたね。

今、アマチュアの中でも両方やりたい子どもが増えてきて、両方やらせているという話じゃないですか。 すごくいいこと

再来年からセ・リーグもDH(指名打者)制度になって、あまりピッチャーが打席に立つことはないと思うんですけど。プロに入ってくる選手は、エースで4番の選手が多い。そういう選手の方が大成しやすいと僕は思っています。 

ずっと野手だけをやっていた人よりも、エースで4番、ピッチャーもやっていた方のほうが可能性を感じるんですよ、ポテンシャル的に。

フルバージョン「石井琢朗、真剣討論!『二刀流・大谷翔平』野球界の急速な変化、現場はどうみる?」👇