選手の人生に関わっているから、無責任な指導はできない
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ワールド・ベースボール・クラシック(以下、WBC)で、連覇を狙う「侍ジャパン」。
3月6日に行われた1次ラウンド・プールC初戦の台湾戦で、先発投手として好投したエース山本由伸(ドジャース)。しかし、その独特な投球フォームは、かつて周囲から強く否定されたこともあった。
それでも、彼が挑戦を続けられた背景には何があったのか。
また、日米通算日米通算121勝・62セーブを達成した吉井理人は、山本由伸ように”自分で考える”ことが大事だと指摘する。
そのベースは、高校の恩師である、名将・尾藤公監督の教えにある。
「練習方法も『自分のやり方があるはずだから考えろ』『俺はもう何もかも教えない』と、尾藤公監督に言われてきた」(吉井)
これからの時代に求められるコーチや指導者の資質とは?また、吉井が語る「良いコーチング」「コーチングの順序は凧揚げ」の意味とはーー。スポーツライター中島大輔との白熱議論の一部を紹介。ぜひご覧ください!
――中島(大輔)さんは、『山本由伸 常識を変える投球術』を出されるなど、これまで山本投手の指導者にも取材されていますが、山本投手が生まれた背景は、ご自身の中でどのようにまとめられていますか。
中島大輔(以下、中島) 去年のドジャース優勝でもクローズアップされていましたけど、矢田(修)トレーナーとの出会いが大きくて。山本投手が独特な投げ方に変えた時に、めちゃくちゃいろんな人に「否定をされた」と山本投手が言っています。
既存の見方ではなく選手個人を良くするために、100%向き合って一緒に寄り添えるような関係性の方がいたのは大きかったんだろうなと思います。
言い方を変えれば、コミュニケーションがすごく取れていたということですよね。ドジャースでコーチの契約までして連れて行っているほどで、本当はもういらないかもしれないです。多分自分でできると思うんですよ。
それでも「契約してまでいてほしい」というのが多分理想のコーチなのかなと思います。
――なるほど。吉井さん、例えば山本投手を高校生のときにご覧になっていたら、独特な投げ方を含めて、そのまま育てることは難しいのですか?
吉井理人(以下、吉井) 自分はプロ野球のコーチしかやったことないんで、本当に「始まりの選手」に携わったことはないから、その辺の難しさがよく分かりません。
ただ私は、練習方法も「自分のやり方があるはずだから考えろ」「俺はもう何もかも教えない」と、(箕島高時代、2度の甲子園出場に導いた名将の)尾藤公監督(故人)に言われてきたんです。
”自分で考えるトレーニング”をしてもらったんで、プロ野球でもそこそこ活躍できたのかなと思っています。
「ああしろ、こうしろ」とズバッと言ってくるコーチをよく見るんですけれども、あんなに自信満々に言えるなと思いますね。
――いや、そうですよね。
吉井 選手の人生に関わってるわけですから、無責任な指導はできないと思っていますね。「どの指導者の言うことを聞くか」を含めて自分で考えてほしいですね。
スポーツ界のトピックについて、スペシャリストを招きながら、その「次」を探る、新感覚スポーツ討論コンテンツです。
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吉井理人が考える「良いコーチング」とは?
――指導者がどういう資質を備えるべきかは、指導者もみんなも知りたい。でも誰に聞いても、ふわっとした答えにしかならない「背景」は、どこにあると思われますか?
吉井 日本は昔から「指導」というと「師匠と弟子」みたいな関係になっているんで。プロ野球でも8割がそういうコーチですけれども。そこが一番、日本の指導文化の根っこにあるのかなと思っていて。でも今は、それでは通用しません。
選手のモチベーションにも関わってくるので、やはり自分でやろうと思って練習するように持っていかないとモチベーションが続かない。
「やれ!」とやらされるのも、一瞬は効果が出るんですが、やっぱり自分で「やろう」と思って取り組まないと長続きはしない。ゆくゆく自分のものにもならないと思っています。そういう意味で、コーチングは大事かなと思います。
――吉井さんが考えられる「良いコーチング」と、今の日本に合わない「コーチング」について教えてください。
吉井 うーん、言いづらいですね。そもそも選手に、いろいろなことを気づかせるのが教育だと思うんです。そのやり方はたくさんあるので、「どれがいい」「どれが悪い」とは言えません。ただ選手が気づかないような「これやらないといけないの?」と感じるような指導が、一番いけないかなと思っています。
山本投手と矢田先生のように、いい関係を作ってコミュニケーションを取る。まず、いい関係を作らなきゃいけないですね。うわべのコミュニケーションだけだと選手も本当のことは言わないし、こっちが言ったことも真剣に受け止めてくれない。そこまでになる関係作りは、コーチングの基礎になってくるかなと思いますね。
――プロ野球の場合、コーチ1人につき数十人の選手を見なければいけません。指導者はどのように臨むべきで、選手はどういう期待をすべきなのでしょうか?
吉井 難しい質問ですね。これも選手のレベルによるので。コーチングの順序としたら、凧揚げみたいな感じです。
凧を揚げるとき、上がるまでは引っ張ったり走ったりと、いろいろしないといけないけれど、上がってしまえば、あとは様子を見る。
風の動きも見て、引っ張ったりするだけじゃないですか。それによく似ていて、始まりの選手には、師匠のように手取り足取り教えなきゃいけません。
ある程度、できるようになって、一軍に上がれるような選手に対してはモチベーションも高いので、あまり技術的な指導をするとへそを曲げて下がってしまう。
逆に一軍から跳ね返されて帰ってきた人は、気持ちも沈んでいるので、しっかり寄り添って親身になって話していかなきゃいけない。
――なるほど。
吉井 一流になっちゃうと、コーチに質問してくるレベルが高くなるので、しっかりその人のパフォーマンスを見ておかないといけない。そこで答えられないと「なんだこのコーチ」と思われてしまいますから。
本当にちゃんとやろうと思ったら、コーチはいつも勉強と選手の観察。時間がいくらあっても足りないぐらい忙しい仕事です。オフにゴルフなんか行ってられないですよ(笑)。
フルバージョン「白熱議論!侍ジャパン連覇のポイント」👇
前編 WBC2026展望!データで見る優勝候補。どう攻略する?
後編 吉井理人が明かす!世界一の舞台裏&連覇のポイント
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