街を歩いていると、不意に耳に入ってくる言葉がある。誰かの会話、カフェのBGM、看板の文字。芸人・鈴木ジェロニモが、日常の中で出会った“ちょっと気になる言葉”に耳をすませて、思考を巡らせます。(連載の詳細はこちら)

茨城県の大洗。海鮮バーベキューをしよう、ということだけを決めて私たちは市場をうろつく。ヤリイカ安い。いいなあ。焼くのとか良さそう。でもどうやって捌く? ううむ、と決めかねていたところで友人の一人が市場のおじいさんに尋ねる。イカどうやって食べたら美味しいですか?
「ヤリイカはね、美味いよ」。おじいさんが市場の活気を束ねるように教えてくれる。「目玉を取るときは水の中で。そうすれば跳ねないから。ぬめりをさっと洗って輪切りにする。ぐらぐらに煮立ったお湯で茹でてから焼く。マヨネーズなんか付けたらね、美味いよ」。語りのリズムが良くてうっとり聞いてしまう。ありがとうございます、と言いはしたものの果たして自分たちで上手く捌けるだろうか、という不安が私たちの苦笑いから漏れそうになる。「そしたら俺のところで捌いてやるから、こっち持って来な」。おじいさんがどうしてか察知してくれて私たちはひよこのようについて行く。
市場から道を挟んで向こう側に鮮魚の加工場のような建物がある。おじいさんは足早にまな板と包丁を取り出し、外に設置された見るからに魚を捌く用のテーブルでヤリイカを捌き始める。鼻歌に楽器を添えるように鮮やかに、そしてものすごい速さでイカが捌かれていく。...
