街を歩いていると、不意に耳に入ってくる言葉がある。誰かの会話、カフェのBGM、看板の文字。芸人・鈴木ジェロニモが、日常の中で出会った“ちょっと気になる言葉”に耳をすませて、思考を巡らせます。(連載の詳細はこちら)

2月発売の「&Premium」という雑誌に出ている。正確には『&Premium MOOK「&Words/明日を生きる言葉。」』。歌人の穂村弘さんと伊藤紺さんと私で「短歌をベターライフの道標に。」という企画に参加している。お悩み系のお題7つに対しそれに応えるような短歌をそれぞれが7首ずつ選んでいる。この企画は&Premium2024年9月号に載ったものの再掲版である。
今号を手に取るとまず、大きい、と思う。藤本タツキさんの漫画『ルックバック』のイラストが表紙に大きく描かれていて眩しい。大きい絵。大きい字。これは漫画単行本や通常の週刊誌では感じ得ない気持ちだろう。
言ってしまえば情報を得るだけだったらインターネットで事足りるかもしれないものを、わざわざ特集誌を手に取るというのは、この物理的存在が欲しいからに違いない。この重量とこの手触りを感じながら読むことにはもはやスポーツ的よろこびがある。言わせてもらう。雑誌はスポーツだ。
私たちの特集を開くとそこでもイラストが目に入る。穂村弘さん伊藤紺さん私のそれぞれの宣材写真をもとに、イラストレーターのnaohigaさんが似顔絵を描いてくださっている。すごく良い。こうありたいという表情をしている。2026年2月の私は心からそう思うが、2024年9月の私は違っていた。
当時の私は何というか、おおーこう見えるってことかあ、とその良さを解釈しきれずにいた。良いことは間違いないはずなのに、自分の中にそれを測る目盛りが設定されていない感じ。かっこよさの基準が狭く絞られていて、そのスコープが揺さぶられることに逐一びっくりしていたのかもしれない。
同じ絵を、1年半後に良いと思う。それは私の中で、雑誌的な良さに近い。速さではなく長さで届ける。ふと自分を省みる。私は私を長く届けられているだろうか。今の私の行動を1年半後に良いと思えるかどうか。まあどうせ良いと思うんだろうけど、と私歴31年の私が早口で割り込む。迷ったとき、未来の私から見張られていることを思い出したい。
▼以下、写真2枚+キャプション▼
【次回更新は2026年3月14日(土)正午予定】
プロダクション人力舎所属。R-1グランプリ2023、ABCお笑いグランプリ2024で準決勝進出。第4回・第5回笹井宏之賞、第65回短歌研究新人賞で最終選考。第1回粘菌歌会賞を受賞。YouTubeに投稿した「説明」の動画が注目され、2024年に初著書『水道水の味を説明する』(ナナロク社)を刊行。文芸誌でエッセイ掲載、ラジオ番組ナビゲーター、舞台出演など、多岐にわたり活躍。>>詳細

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芸人・鈴木ジェロニモが、“ちょっと気になる言葉”に耳をすませて、思考を巡らせるエッセイ連載。(毎週土曜 昼12時更新)
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