吹奏楽部員たちが部活に燃える日々の中で、書き綴るノートやメモ、手紙、寄せ書き……それらの「言葉」をキーにした、吹奏楽コンクールに青春をかけたリアルストーリー。ひたむきな高校生の成長を追いかける。
第61回は玉名女子高等学校(熊本県)#5
本連載をもとにしたオザワ部長の新刊『吹部ノート 12分間の青春』(発行:(株)日本ビジネスプレス 発売:ワニブックス)が好評発売中。
全日本吹奏楽コンクールで金賞を連続受賞中の玉名女子高校吹奏楽部。その中で、青木楓凜那(かりな)は「空っぽの金賞」への違和感を抱えていた。鹿児島から進学し、激しいホームシックを乗りこえた楓凜那は、クラリネットの技術を磨くことで玉女という「家族」の一員になっていった。そして、満を持して迎えた最高学年だったが、リーダーの補佐役となった彼女の前に、「3rd(サード)クラリネット」という新たな試練が立ちはだかる——。
どうせ私は3rdだから……
「これまでに比べて、今年は木管のクオリティが下がってるね」
合奏練習中に顧問の米田真一先生からそう指摘され、楓凜那は唇を噛んだ。
否定はできなかった。自分たちでもわかっていることだ。過去の先輩たちの演奏を聴いていると、その素晴らしさに驚かされる。自分たちの演奏からは聞こえない音、自分たちにはない表現、木管楽器全体のブレンド感などが先輩たちにはある。
だが、どうやったら自分たちにそれができるのかがわからない。きっと先生からも「わからないんだろう」と思われている。それも悔しかった。
ただ、楓凜那にはそれ以上に悔しいことがあった。
高校生活最後の年、玉女がコンクールで演奏する曲は課題曲《マーチ「メモリーズ・リフレイン」》、自由曲《サントス・デュモンの大空への夢(2024年版)》に決まり、55人のコンクールメンバーが選ばれた。
楓凜那は3年続けてクラリネット奏者として参加することになった。だが、与えられたパートはクラリネットの3rd(サード)だったのだ。
♪
クラリネットは1st(ファースト)、2nd(セカンド)、3rdという3つのパートに数人ずつ分かれていた。
楓凜那は玉女に入部したときから1stになること、それも、ソロなどを吹く首席(トップ)奏者になることが目標だった。メロディを担当することが多い1stは、クラリネットの中でも花形ポジションだ。しかし、3rd担当という現実を突きつけられ、楓凜那は打ちひしがれた。
吹奏楽にはさまざまな楽器があり、さまざまなポジションがある。それぞれが協働して初めて良い音楽がつくられる。わかっていたはずなのに、1st・2nd・3rdというのを上手な順のランキングのように思ってしまっていた。
合奏をするたび、楓凜那は自分が座っている場所にがっかりした。夢見ていた1stトップ奏者の反対側……。
先生から木管楽器やクラリネットパートの課題を指摘されても、ついこう思ってしまう。
「どうせ私は3rdだから……」
パートの方針はトップや1stが考えればいい。うまい人に従えばいい。3rdの自分が言ったって説得力がない……。
そして、楓凜那は口をつぐんできた。...
