吹奏楽部員たちが部活に燃える日々の中で、書き綴るノートやメモ、手紙、寄せ書き……それらの「言葉」をキーにした、吹奏楽コンクールに青春をかけたリアルストーリー。ひたむきな高校生の成長を追いかける。
第58回は玉名女子高等学校(熊本県)#2
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自由曲の物語を絵に
玉名女子高校吹奏楽部にとって2025年最初のコンクール本番は7月24日、熊本県大会だった。その5日後の29日には代表選考会があり、3校が九州大会に駒を進めることができる。
はなたち部員は県大会に向けて、例年やってきたように課題曲《マーチ「メモリーズ・リフレイン」》にオリジナルの歌詞をつけた。歌を歌うことで課題曲を自分たちのものにしていくのだ。
みんなで意見を出しあい、曲の冒頭はこんな歌詞にした。
卒業式 最後の日 離ればなれ 友だちと
だからちょっと寂しい気がする だけど前向きで行こう
課題曲のタイトルと曲調に自分たちの高校生活や思いを重ね合わせた歌詞だった。
一方、自由曲《サントス・デュモンの大空への夢(2024年版)》のほうには、実際のサントス・デュモンの人生を調べた上で、自分たちなりに曲にストーリーを当てはめ、それに合った絵を描いた。曲のイメージを言葉だけでなく、ビジュアルでも共有するための取り組みだった。
短調でセンセーショナルに始まる曲の冒頭には「サントス・デュモンがつくった飛行機が戦争で使われ、爆撃によって街中が燃えている。」というエピソードとともに、炎上する街を背景に煙を上げながら飛ぶ飛行機の絵を描いた。
その後は年月を遡り、サントス・デュモンが大空を夢見て仲間たちと飛行機作りを開始したところから、試行錯誤と産みの苦しみ、飛行機の完成、それが戦争の道具にされる哀しみと平和への思い、希望を失わずに未来に向けて飛ぶ様子をエピソードと絵にした。そして、最後はサントス・デュモンが手がけた飛行船の写真を貼りつけた。
はなは、みんなで絵をつけながら物語を作っていくことで、以前はまったく知らなかったサントス・デュモンという人物に、同じ人間として親しみを感じるようになった。
課題曲も自由曲も、演奏するのは決して簡単ではない2曲だが、こうして「自分たちの音楽にする」準備は整い、はなたちは本番に向けて練習を重ねていった。
♪
しかし、玉女の道のりは決して順風満帆ではなかった。
もっとも大変だったのはコミュニケーションだ。まず、はなたち3年生の意思疎通がうまくとれておらず、活動する上での連携不足が目立った。問題があることはわかっていたから、何度か3年生だけで集まり、話し合った。
「もっとお互いが考えていることを伝え合おうよ」
「ここは改善できるんじゃない?」
「3年生がちゃんと協力できたら、1、2年生もついてきやすいと思う」
いろいろな意見が出た。
はな自身も、玉女のリーダー的な存在としてみんなにどう声をかけ、どうやってみんなの気持ちを束ねていけばいいのか迷っていた。3年生同士の意思疎通も問題だったし、3年生がまとまったとしても、1・2年生が置いてけぼりでは意味がない。コンクールメンバーだけが頑張ればいいわけでもない。
「良い演奏は良い活動から生まれる」
それが米田先生や歴代の先輩たちが大切にしてきた玉女のモットーだ。
(私たちはまだ「良い演奏」のもとになる「良い活動」ができてない……)
はなは強い危機感と不安を抱いた。
過去最低点の衝撃
はなの不安が現実になる出来事が起こった。
熊本県大会に出場した玉女は、次の県代表選考会へ進めることが決まったが、点数化された審査結果が過去最低の点数だったのだ。...
