フィギュアスケートの五輪代表に決まった(前列左から)男子の三浦佳生、佐藤駿、鍵山優真、女子の坂本花織、中井亜美、千葉百音、(後列左から)ペアの木原龍一と三浦璃来、森口澄士と長岡柚奈、アイスダンスの吉田唄菜と森田真沙也 写真/アフロスポーツ

2026年2月、イタリアで開幕するミラノ・コルティナオリンピック。

冬季オリンピックが開催されるたびに、日本でも花形競技の一つとして存在感を高めてきたフィギュアスケート。

日本人が世界のトップで戦うのが当たり前になっている現在、そこに至るまでには、長い年月にわたる、多くの人々の努力があった——

日本人がフィギュアスケート競技で初めて出場した1932年レークプラシッド大会から2022年北京大会までを振り返るとともに、選手たちを支えたプロフェッショナルの取材をまとめた電子書籍『日本のフィギュアスケート史 オリンピックを中心に辿る100年』(松原孝臣著/日本ビジネスプレス刊)が2026年1月20日(火)に発売。

昨年末に決定したミラノ・コルティナオリンピック日本代表の選手と、それぞれの意気込みを紹介します。

「新生ジャパン、みたいな感じです」

 2025年12月21日、全日本フィギュアスケート選手権が終了、ミラノ・コルティナオリンピック日本代表が発表された。

 男女各3のシングルは、

〇男子 鍵山優真、佐藤駿、三浦佳生

〇女子 坂本花織、中井亜美、千葉百音

 2組のペアは、長岡柚奈/森口澄士、三浦璃来/木原龍一

 アイスダンスの団体戦メンバーは、吉田唄菜/森田真沙也

 が選出された。

 見渡してみると、一つ、時間が過ぎたことを思わせる。男子は複数大会出場した羽生結弦、宇野昌磨が競技から退き、鍵山が唯一の経験者。女子は坂本が3大会連続出場となるが、中井亜美と千葉百音は初出場だ。

「新生ジャパン、みたいな感じです」

 と鍵山も語る。

 顔ぶれは変化したが、オリンピックへの気持ちはそれぞれに強い。

 鍵山は、経験者としての責任を果たしたいと考える。

「4年前(の北京オリンピック)は、先輩方の背中を見て、オリンピックという舞台を楽しんだので、今回は自分が背中を見せる番だと思っています」

 北京では個人戦、団体戦の双方で銀メダル。自身の演技も「攻める姿勢が大事だと思います」と一段の進化を誓う。

 鍵山と同学年でずっと切磋琢磨してきた佐藤。グランプリファイナルでは2年連続3位、2位の鍵山とともに表彰台に上がっている。

「(2014年)ソチオリンピックの羽生さんのショートプログラムをテレビで観て、同じ舞台に立ちたいという思いが強くなりました」

 ようやくかなえた舞台だから、笑顔で終わりたいと思う。

「今シーズン一のキスクラになるように、というのを目標に、頑張っていきたいです」

 もう一人の男子代表、三浦は「まだオリンピックレースが続いている気分です」と実感が湧かないことを明かす。それでも切磋琢磨してきた鍵山と佐藤とともに臨む大舞台を楽しみにする。

 佐藤と同じくソチオリンピックを強く記憶するのは千葉。当時通っていたリンクの先輩である羽生の姿を覚えている。

「全身全霊ですべてかけて演じていて、観ていて心が突き動かされましたし、強烈な印象が残っています」

 それが大舞台を目指す原点となった。だから「自分も」と考える。

 代表選手中最年少、17歳の中井は、シーズン当初、オリンピックをそこまで強く意識していなかった。だがシーズンが始まるとグランプリファイナルで2位になるなど成長を遂げ、切符をつかんだ。

「メダルを獲れるような練習をしていきたいです」

 見える風景が変わってきた今、成績も残したいと意気込みをみせる。

 日本女子初の3大会出場となる坂本は、以前から目標として掲げていた団体戦、個人戦双方での銀メダル以上をあらためて言葉にする。

「(北京の)団体は最初3位で、繰り上げで2位になったので、正真正銘の銀以上がほしいです」

 個人戦では北京で銅メダル。団体・個人両方で超えることを誓う。

 北京大会で日本ペア史上初の入賞を果たした三浦/木原。

「カップル競技は注目していただくことが難しかったので、僕たちが頑張ることによって次世代にチャンスを残せたら」(木原)

 種目の未来を広げるためにもメダルを手にしたいと語る。

 ペア代表のもうひと組、長岡/森口も飛躍を期す。

「見たことのない景色を目指して、頑張っていきたいと思っています」(森口)

 団体戦のみ出場の吉田/森田は、だからその責任を果たしたいと願う。

「私たちは(他の代表の)皆さんのおかげで出場できるので、チームに貢献できるよう、よい準備をしてしっかりと滑り切りたいです」(吉田)

「新生ジャパン」と鍵山が言うように、フレッシュな印象ももたらすミラノ・コルティナオリンピック代表だが、選手たちはそれぞれに大舞台に立つ日を思い描き、努力を重ねてきた。そしてそれぞれに、国際舞台でも実績を積み上げてきた。日本は世界の中でもフィギュアスケートの人気が高い国で、実力者ぞろいという点で一致しているが、それも選手たちの努力あってこそだ。

 そして有力選手がひしめく中でオリンピックの切符を手にした選手たちで構成される代表チームは、団体戦でも個人戦でも、メダルを狙える布陣がそろっている。

 今、大舞台は近づいている。

 これまでの歩みを大事にし、4年に一度の大舞台で輝けるよう、選手は残る時間を費やす。世界で輝くポテンシャルは、代表の誰もが備えている。 

 

 

『日本のフィギュアスケート史 オリンピックを中心に辿る100年』
著者:松原孝臣
出版社:日本ビジネスプレス(SYNCHRONOUS BOOKS)
定価:1650円(税込)
発売日:2026年1月20日