
雑誌編集部時代、冬の朝に差し入れで笑顔が生まれた一杯
寒くなってくると恋しくなるのが身体の芯までじんわり沁みる温かなスープです。
元々食事の時には汁物が欲しいタイプ。季節の野菜のポタージュや熱々のオニオングラタンなどを洋食屋さんのメニューに見つけたら、頼まずにはいられません。
お店でいただくだけでなく、もちろん自宅でもよく作ります。いちばん出番が多いのが実家の母譲りのにんじんのポタージュ。甘さをじっくり引き出したレシピはにんじん嫌いの人にも美味しいと言ってもらえるのが自慢。
材料はにんじんと玉ねぎにとろみを出すためにほんの少しのお米を使うのがポイントです。ざく切りにしたにんじんと玉ねぎをバターでじっくり蒸し焼きにしてから煮込むので、独特の青臭さが消えて、甘さが引き立ちます。
まだ私が出版社で雑誌を作っていた頃、寒い時期にはこのスープを保温ジャーに入れて現場の差し入れにしていました。
ファッションの撮影は朝早くスタートします。撮影が始まる前には2時間近く、ヘアメークや着付けに時間がかかるので朝6時集合などは当たり前。スタッフは皆、慣れているとはいえ、まだ薄暗く、凍えるように寒い冬の朝は思わず、体が縮こまってしまう。眠いし、寒いし、ロケバスの中はなんだかどんより……。
朝食用におにぎりやサンドイッチを用意するのですが、ティーバッグにお湯を注ぐだけでは味気ない。それならスープがあったらどうだろう。少しでも温まってもらいたくて、自家製のスープを差し入れしてみたのです。
すると、その効果は抜群! 熱々のスープを注いだカップを手渡すと思わず笑顔に。とろみのあるスープは紙コップの中でもなかなか冷めず、暖を取るのにぴったりだったのです。
私の作るにんじんポタージュは牛乳なども使わないシンプルなものなので、紙パック入りの生クリームを別に用意して、好みで垂らしてもらう。スープは750mlの大ぶりの保温ジャー2本に入れてたっぷり用意。カメラマンやスタイリストのアシスタントちゃんたちにも行き渡るように……。
気軽に始めたスープ作りだったのですが、そのうち評判になり、「あれ、美味しかった!」「私も飲みたい!」「今日はスープないの?」とのリクエストが殺到するようになったのです。そうなるとこちらには作って、あちらには作らないということができなくなり、撮影の前の晩は遅くまでスープ作りする羽目になってしまいました。
保温ジャー2本分で大ぶりのにんじんを8本ほど、夜中に何してるんだろうと苦笑しながらスープを煮込んでいたのも今ではいい思い出です。
シンプルでやさしい、にんじんスープの作り方
ということで、自慢のにんじんスープの作り方を簡単にご紹介してみましょうか。...
