街を歩いていると、不意に耳に入ってくる言葉がある。誰かの会話、カフェのBGM、看板の文字。芸人・鈴木ジェロニモが、日常の中で出会った“ちょっと気になる言葉”に耳をすませて、思考を巡らせます。連載の詳細はこちら

【過去の記事を読む】鈴木ジェロニモの「耳の音」 記事一覧

鈴木ジェロニモの「耳の音」#28「魔法使いが、魔法を使えなくなったら、どうするんだろう」

 

 ロロ『まれな人』のアフタートークに登壇させていただいた。人力舎の後輩の人間横丁が俳優として出演。客席で観ながら、いけっ、どうだっ、そうそうそう、ほーら見たか、はい完璧、ありがとう、とマナーを守って心臓だけで万歳を繰り返す。

「魔法使いが、魔法を使えなくなったら、どうするんだろうって」。ロロの主宰で脚本家の三浦さんとのアフタートーク。青春の最中は、そこが青春であることを知らないまま、きらきら走り続けることができる。その時間は魔法のように、触れるもの全てを輝かせる。しかし、そして、人生は続く。魔法が使えなくなってから、自分が魔法使いだったことを知る。あのとき確実にきらめきだった。ロロの舞台に演劇のちからで魔法が立ち上がる。

 砂場を思い出していた。幼稚園の、やわらかくて灰色の砂場。...