街を歩いていると、不意に耳に入ってくる言葉がある。誰かの会話、カフェのBGM、看板の文字。芸人・鈴木ジェロニモが、日常の中で出会った“ちょっと気になる言葉”に耳をすませて、思考を巡らせます。(連載の詳細はこちら)

栃木県の報徳看護専門学校から講演の依頼をいただいた。90分。90分!? と以前までならなっていたかもしれない。しかし少し前に母校の栃木県さくら市立氏家中学校で90分の講演をやらせていただき、その後栃木県立宇都宮女子高等学校で90分の短歌講座をやらせていただき、自分の中に栃木県で講演をするなら90分、という尺のイメージができ始めていた。全然やりますぜひお願いします。湘南新宿ラインで雀宮駅へ。
「お待ちしておりました。こちらです」。職員の方が駅で待っていて、車に誘導してくださる。「鈴木先生は、さくら市のご出身でしたっけ?」。鈴木先生。一瞬誰のことか分からない。すぐに、ああ自分か、と思い至る。そうか、今日は鈴木先生として講演するのか。そうですね、さくら市の、元々氏家町ってところで。自分の声と姿勢が若干凛々しい。先生として人前に立つという意識が自分をそういうモードに誘う。
「お笑いに限らず、短歌やエッセイなど、マルチに活躍していらっしゃいます。鈴木ジェロニモ先生です!」。理事長の方が張りのある声で紹介してくださる。っどうも〜〜。自分の中の先生モードと芸人モードがせめぎ合って、低い声でへらへら登場。どちらでもない人になる。
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