街を歩いていると、不意に耳に入ってくる言葉がある。誰かの会話、カフェのBGM、看板の文字。芸人・鈴木ジェロニモが、日常の中で出会った“ちょっと気になる言葉”に耳をすませて、思考を巡らせます。(連載の詳細はこちら)

『大喜利スーパーキッズ』というライブに出演した。レギュラー出演者は人力舎の後輩のテツローと、家族チャーハン大石、ナユタホリコシ。私は初回ゲストだった。元々『大喜利コシ』というライブ名だったのだけどライブ中に改名会議が行われ『大喜利スーパーキッズ』になった。ホリコシの小学校時代のサッカーチーム名が由来とのことだったが、テツロー、大石、ホリコシに「スーパーキッズ」という名前がよく似合っていた。
テツローと私は芸歴は異なるが年が一緒で出身地が栃木県北部で野球をやっていて大学でアカペラサークルの代表を務めて今は人力舎に所属して骨格を持て余しながらぼそぼそ喋っている、というほとんど同じ人間なので、飲食を共にすることがよくある。大石とホリコシはライブの楽屋で会って挨拶するくらいだったので、しっかり話すのは今回が初めてだった。しかしふたりとも穏やかで優しくて適度に抜けたところがあり、私の緊張を早々に解いてくれた。
特にホリコシは私と大学・学部・学科が同じらしく親近感を抱いてくれていたようだった。「群像の『伝わらない言葉を言ってほしい』のエッセイ読みました。あれすっごく面白かったです」。え、まじか。嬉しくなって、小説家のカツセマサヒコさんもあのエッセイ良かったって言ってくれて、と口走る。「え、ほら、やっぱ面白いんですよ。うわーなんか嬉しい」。嬉しそうにしてくれて、それも嬉しかった。
ライブが終わって楽屋に戻る。今日すごくよかったなあ。思いながら3人を眺めているとある記憶がよぎる。『トキトケトーク』でダウ90000の蓮見くんと話したこと。「打ち上げ誘うのは先輩がやってよ、って思います」。蓮見くんの声で再生される。そうだよな。それが、今、だよな。よし。まずは頭の中で練習する。みんなで飲み行く?みんなで飲み行く?みんなで飲み行く? よしよし、言えそうだ。自分で自分を信用して口を動かす。
あの、なんかごはんとかいきます?
ちょっとちがう言葉が出た。後輩に敬語使ってるし「飲み」って言えなくて「ごはん」になってる。でもまあ言いたいことは伝わるか。大丈夫大丈夫。一瞬を永遠のように感じながら反応を待つ。「え、いいんですか」「うわー嬉しい」「もちろん行きましょうよ」。お、おおおおお。まじかよ。やったあ。気持ちが言葉に出過ぎないように我慢して、おけー、と言った。
▼以下、写真2枚+キャプション▼
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