吹奏楽部員たちが部活に燃える日々の中で、書き綴るノートやメモ、手紙、寄せ書き……それらの「言葉」をキーにした、吹奏楽コンクールに青春をかけたリアルストーリー。ひたむきな高校生の成長を追いかける。

第38回は聖ウルスラ学院英智高等学校(宮城県)#2(#1はこちらからご覧になれます)。

本連載をもとにしたオザワ部長の新刊『吹部ノート 12分間の青春』(発行:(株)日本ビジネスプレス 発売:ワニブックス)が好評発売中。

吹奏楽部員、吹奏楽部OB、部活で大会を目指している人、かつて部活に夢中になっていた人、いまなにかを頑張っている人に読んで欲しい。感涙必至です!

【前回までのあらすじ】
仙台の強豪・聖ウルスラ学院英智高校吹奏楽部。ファゴットを選んだ男子部員「アレン」は「変わりたい」と願い、努力を重ねてきたが、人間関係では不器用さを拭えず悩み続けていた。仲間の支えに励まされながら迎えた高2の全国大会は銅賞。残されたラストチャンスに向け、彼は「変わること」「全国金賞をとること」を誓う。

未知の楽器への挑戦

 全日本吹奏楽コンクールと全日本マーチングコンテストが終わると、聖ウルスラ学院英智高校吹奏楽部は3〜8人の少人数、指揮者なしで演奏するアンサンブルコンテストへとシフトした。アンサンブルコンテストは例年冬に予選がおこなわれ、3月下旬に全国大会が開催されることになっていた。

 アンサンブルコンテストは単に競いあうだけでなく、新年度に向けて1、2年生が技術力を伸ばす機会ともなっている。

 部内でいくつかのアンサンブルチームができていく中、アレンが気にかかっていたのはサックスパートだった。

 一般的に吹奏楽部ではソプラノ・アルト・テナー・バリトンという4種のサックスが使われ、高音から低音までを同一パートでカバーできる。アンサンブルでもサックスのみでチームを組むことが多い。

 

 アレンはウルスラのサックスパートの演奏が大好きだったが、彼らは何やら困っているようだった。

「今年は8重奏の曲をやりたいんだけど、バリサク(バリトンサックス)が足りなくて……」

 ほかは奏者がふたりずついるのに、バリトンだけひとりしかいないのだという。それを聞いて、アレンは考えた。そして、「こんなことを言ったら怒られるかな」と思いながら、おずおずと提案してみた。

「僕がバリサクやろうか?」...