結婚生活の中で積もり積もった不満や違和感。もう離婚しかないと思うほどの不仲やトラブル。

 さまざまな夫婦の在り方があるからこそ、ふたりの間だけで解決できない悩みや問題を抱える人も少なくないでしょう。

 夫婦カウンセラーとしてこれまで2000組以上の夫婦をサポートし、著書『夫は、妻は、わかってない。夫婦リカバリーの作法』でも注目を集める安東秀海先生が、読者の皆様から寄せられた夫婦関係のお悩みにお答えします。

 今回は、夫婦共に仕事をしているにも関わらず、家事育児の負担に偏りがあり納得いかないというご相談。議論しても平行線のまま、ギクシャクした関係になってしまっているようですが……

あっちゃん(仮名)からのご相談

 中高生の子どもが2人います。

 夫婦共にバリバリ仕事をしながら家事・育児に奔走してきました。

 子どもの出産〜育児は、私が中心に担ってきました。結果、私の同期は今や課長や管理職、一方の私は夫の転勤もあり休職期間も長い上に、子どもが幼い時は時間制限の中仕事をしてきたので、人より5年キャリアが遅れています。

 

 子どもも成長し、やっと私も仕事に打ち込めるようになり、重要なプロジェクトリーダーも担うようになりました。ただし、子どもたちの食事の用意などの日常的な家事はもちろん必要ですし、子どもが病気になり、常に夫婦のどちらかは自宅にいないといけない状況になりました。

 そんな中、主人は私の仕事をサポートする、応援するとは言うものの、自分の働き方は変わらず、頻繁に海外出張や国内出張で家を不在にします。その期間は私がワンオペです。

 要は、「サポートする」というのは「自分ができる時は頑張る」という意味であり、自分の働き方を家族に合わせて調整するということではないのです。

 結果、私は自分の仕事の都合に関わらず家事・育児を担う必要があります。重要な報告会議に参加できなかったり、私だけオンライン会議での参加となったりして、仕事における自分の存在感が思うように示せないことに苛立ちを感じています。

 

 そういった状況を夫に話し、出張回数を減らすことだとか、どうしても私が会社に行かないといけない時は家事担当をしてもらうことなどをお願いしました。夫はそれに対して了解するものの、結局出張が入ったと不在にし、私は出社できず……ということが続きました。

 そうした状況に苛立ちが溜まり、夫をなじると、夫からは、

「俺は最大限協力してる、君に気を遣ってる。それなのにそこは感謝されず、俺は君の仕事を応援するのに、俺の仕事は応援もサポートもされない。頑張っても認めてもらえないなら、頑張る必要ないかと思ってしまう」

「そもそも僕と君は管理職と一般で立場が違う」

と言われます。

 私は「あなたが今そうして管理職の立場で自由に仕事できてるのは誰のおかげ?」と反論しますが、夫は「だから俺は最大限できる事はやってる」と言って、口論になります。

 

 実際、夫は子ども思いで、家にいる時は家事も何でもやってくれます。

 ただ私の立場から言うと、仕事と家事を完全に分担した夫婦関係ではなく、お互い同じ位の仕事量を抱えているので、家事・育児も半々であるのがベースだと思っています。

 そうした考えを言うと、自己主張が強い、ジェンダー平等を主張しすぎだと、あたかも私がわがままのような言い方をされるので、余計に腹が立ちます。

 

 この夫婦関係の問題の根底には、家事・育児の負担に関するベースの考え方、価値観に相違があるため、どれだけ議論をしても平行線にしかならない気がしています。

 しかし、いつも私だけ家にいて、子どもが熱を出せば学校に駆けつけるのは私で、どんなに重要な会議案件があっても、主人の仕事や出張が優先されることに納得いきません。主人への腹立たしさで怒りが込み上げます。

 こんなことならば結婚しなければよかった、子どもを産まなければよかったとさえ思ってしまいます。それくらい子どもができた後の私の人生は、仕事と家事の負担で、幸せというより辛い部分が多かったです。

 

 ただ、冷めた夫婦関係を求めているのではなく、できるならば、仲の良い夫婦でいたいと思っています。

 しかし、今の状況に自分自身が納得感を得られないため、夫に笑顔で話しかけることはできません。夫もその雰囲気を察知してなんとなく私を避けます。

 この状況、どのようにしたら改善できますか? アドバイスをいただきたいです。

(妻・あっちゃん、夫・けんくん)

仕事と家事育児に関する価値観の違い…
わかり合うために、まず心のわだかまりを解く

 中高生のお子さんを夫婦共働きで養育されているあっちゃんさん(以後、あっちゃんとお呼びします)。

 今でこそ男性の育児休暇が話題になることも多いですが、あっちゃんが出産をされた18〜14年前はというと「父親が育児のために休職する」なんて考えられない時代でした。

 当然、育児の負担は母親であるあっちゃんに大きくのしかかったはずですが、家事・育児の実働以上に重かったのは「育児は母親のもの」という無言の役割分担だったのではないでしょうか。

(写真:itakayuki / iStock / Getty Images Plus)

 ご相談の中にもありましたが、子どもが熱を出した時のお迎えなど、予期できない体調不良や突然のトラブルに対応する心理的負担は相当なものです。

 スケジュールを立てる時にもどこか不安を覚えながら、予定が決まったら当日まで何事もない事を祈って過ごす、そんな日々だったかもしれません。

 コロナ禍を経験した今なら、その感覚を社会全体がある程度は共有できている印象もありますが、以前はというと、その重みを我々男性はあまり理解できていなかったのかもしれません。

 その孤立無援はどれほどだったでしょう。

 まして、共に家庭を運営しているはずの夫にさえ分かって貰えなかったなら、その負担感は何倍にも大きく感じられたはずです。

 

 こうして、独りで抱えざるを得なかった心の負担は少しずつわだかまりになって、夫との間に大きな壁を作ってしまいます。

 わだかまりがあると人は、思うように優しくなれないものですから、あっちゃんが夫の前で笑顔になれないのも無理はないことなのかもしれません。

 それでも、ここから夫婦の関係を改善したいと考えるなら、まずは心に積もったわだかまりをリセットすることから始める必要があります

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