結婚生活の中で積もり積もった不満や違和感。もう離婚しかないと思うほどの不仲やトラブル。
さまざまな夫婦の在り方があるからこそ、ふたりの間だけで解決できない悩みや問題を抱える人も少なくないでしょう。
夫婦カウンセラーとしてこれまで2000組以上の夫婦をサポートし、著書『夫は、妻は、わかってない。夫婦リカバリーの作法』でも注目を集める安東秀海先生が、読者の皆様から寄せられた夫婦関係のお悩みにお答えします。
今回は、夫とのセックスレスがつらいというご相談です。夫から伝えられた言葉にショックを受けたそうで……

まーりーさん(仮名)からのご相談
女性として見れず、家族としては大事だけど、できないかもしれないと主人から言われ、ショックを受けてます。風俗行ってもいいよ、と……。
この先どうしたらいいのでしょう。
主人が心の支えなのでずっと一緒にいたいのですが、セックスレスがつらいです……。
(妻・まーりー、夫・あきら)
※頂いたご相談に編集を加えております。ご了承ください。
さまざまな原因が入り組んだ「セックスレス」を紐解く
夫から「女性として見ることができない」と言われたという、まーりーさん。たとえそこに「家族としては大事」という言葉が添えられていたとしても、「女性として見れない」なんて、「君には魅力がない」と言われているようで、深く傷つくのもムリはありません。
今回の相談では、夫であるあきらさんが、なぜそのような発言に至ったのか、詳細は分からないのですが、これは単にセックスができないというだけでなく、夫婦関係の根幹を揺るがしかねない問題といえそうです。
幸い、まーりーさんはこれからも彼と一緒に、とお考えですから、ここはまず問題となっていることを整理して、それぞれ必要なアプローチを考えてみたいと思います。

なぜセックスレスは始まるのか?
まず、セックスレスになる背景について考察をしてみましょう。
「セックス」というと、どうしてもその行為ばかりが気になりますが、そこには様々な気持ちと感情、信念が絡み合っているものです。それだけに「レス」になる原因もひとつではなく、複数の要素が重なりあっていることが考えられます。
特に、生活と時間の大部分を共有している夫婦の場合、セックスまでの流れは、恋人時代とはずいぶん違ってきます。結婚に伴うライフスタイルの変化は大きく、恋愛的な情熱や性的な衝動によるセックスは自然と減っていくものなのかもしれません。
また、子育てや仕事で忙しくなると、夫婦二人の時間や会話が少なくなり、お互いを意識する機会が減ってしまうことも、セックスレスにつながる原因のひとつと考えられます。
さらに、「夫」「妻」「親」といった役割が固定化されてくることも、セクシャルなコミュニケーションを遠ざける要因になる場合があります。
というのも、役割は責任とセットになることが多く、強すぎる責任感は私たちから気持ちと時間のゆとりを奪います。「仕事のあるウィークデーはセックスをする気持ちになんてなれない」というのは、単に時間がないというだけでなく、心にも余裕がない、ということなのかもしれません。
また、「父親」「母親」の役割を強く認識しすぎると、知らず識らずのうちに相手をセックスのパートナーと見做しにくくなるのも頷けます。

もちろん、セックスは性的な欲求を満たすだけでなく、心の繋がりや安心感、仲の良さを確かめ合う大切なものでもあります。ただ、個人差によるところは大きいものの、夫婦として安定した関係を築くほど、セックスへの衝動が生まれにくくはなるものでしょう。
あきらさんの言葉をポジティブに捉えるなら、二人の関係が男女の恋愛的な関係性から、より落ち着いた安定的なものに変わってきた、と考えることもできるかもしれません。
少し話が変わりますが、夫や妻の不貞発覚後、一時的に夫婦のセックスが増えるケースがあります。安定的な関係であるからこそ、セックスがなくても大丈夫で、不安や危機感がセックスにつながる場合もあるというのは、このテーマの複雑さを示しています。
「女性として見れない」という、言い出しにくいはずの気持ちを話すことができているのは、ふたりの関係が安定的な段階に進んでいることを示唆しているのかもしれません。
ただ、その言葉がどれほど妻を傷つける可能性があるのかを、あきらさんはあまり考えていないようにも思えます。もしかするとそのあたりに、夫婦関係の構造的な課題を紐解くヒントがあるのかもしれません。

傷つく発言はなぜ生まれたのか?
たとえ安定した夫婦関係と信頼に裏打ちされた発言であったとしても、「女性として見ることができない」という言葉は、まーりーさんの自己肯定感や存在意義を根底から揺るがすほどの衝撃を与える可能性があります。さらに、「風俗に行ってもいい」という提案は、問題を解決する意思がないと受け取られかねない、非常に配慮に欠けたものでしょう。
では、なぜそのような傷つく発言が生まれたのでしょうか?
まず考えられるのは、二人の関係が近くなりすぎているケースです。
お互いを尊重し合える関係においては、適切な境界線を保つことが非常に重要です。ところが、強い信頼関係が意図せず境界線を曖昧にし、お互いのプライベートな領域への配慮を欠くことがあります。「言っても大丈夫だろう」「分かってくれるはず」といった期待が、相手を傷つけるかもしれない行動への無頓着さを生むことは十分に考えられます。
一方、感情的な衝突を背景にするケースもあるでしょう。例えば、その発言に至るまでにセックスレスについて口論のようになっていた場合、積み重なった感情が爆発し、配慮のない言葉が発せられることはあり得ます。
また、口論に至らずとも、日常的にストレスが蓄積している場合、相手の立場を想像する柔軟性が失われている可能性も考えられます。例えば、家事や育児の負担の偏りなど、日々の生活における認識のずれが、相手への配慮を欠く言動につながることもあります。
このように、「女性として見ることができない」という発言には、あきらさんの配慮不足があって、その背景にある要因を深く見つめ直すことが「セックスレス」への取り組みにつながる可能性があります。
ただ、その取り組みは夫婦二人の問題として、あるいはまずあきらさん自身が取り組むべき課題であり、決してまーりーさん一人で抱え込むべきことではないと思うのです。
【後半へ続く 6月2日(月)正午 更新予定】
後半の記事では、これらの問題に取り組むために必要なアプローチについてお話しします。
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