教育ジャーナリストであり、2度の中学受験(1人は伴走中)を経験した佐野倫子さんが、悩みの多い中学受験について、「リアルな中学受験マニュアル」として配信をしていく本連載。

今回のテーマは、親がどうしても一喜一憂してしまう「偏差値」です。

「偏差値50」は本当に低いのか。頑張って勉強しているのに、なぜ偏差値が上がらないのか。知っているようで意外と知らない偏差値の見方と、数字に振り回されないための【判断軸】を紹介します。

■テーマ2■ 「偏差値」の判断軸
・中学受験「偏差値50」にがっかりする親が知らないこと(本配信)
・中学受験「偏差値60→55」で焦る親の落とし穴(11月11日配信)
・中学受験、成績が下がった日に親がやってはいけないこと(11月18日配信)

「偏差値50=低い」は大きな勘違い  中学受験「偏差値」の判断軸

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 「テストの結果に、一喜一憂しないでください」

 中学受験に伴走していると、一度は耳にする言葉ではないでしょうか。私も実際に長男(現在中学3年生)に伴走している頃、幾度となく塾の保護者会や取材先でその言葉をいただきました。

 たった一度のテストで子どもの力がすべてわかるわけではない。親が動揺すれば、子どもにも伝わってしまう……教育ジャーナリストとして、私もそのことは理解しているつもりでした。

 ところが、実際に子どもの中学受験に伴走していると、そうもいかないのも実情で……。

 これまでの回で、わが家がSAPIXを選んだ理由と、長男が通い始めたころの話を書きました。新4年生のころには上位クラスに入ることもでき、「自分は勉強が結構、得意なんだ」と思えていた長男。ところが学年が上がるにつれて、クラスは下降傾向。「クラスなんて気にしない親でいよう」と思っていた私もまた、成績表に一喜一憂する、ごく普通の受験生の母になっていました。

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 数字が上がれば、ほっとする。下がれば、心配になる。それだけならまだしも、つい日々の勉強のさせ方まで、全部間違っていたような気がしてくる。中学受験の数字には、そんなふうに親の気持ちを揺さぶる力があります。

 偏差値は、受験校や学習方針を考えるうえで大切な情報です。ただ、その数字から「わかること」と「わからないこと」があるのも事実。そこを整理するだけでも、成績表との付き合い方は少し変えられるのではないでしょうか。

罠その1  「偏差値50」を見て勝手にがっかりする

 そもそも、偏差値とは何でしょうか。

 皆さんご存知の通り、「そのテストを受けた集団の中で、どのあたりにいるか」を表す数字です。平均点に当たる偏差値は50。つまり、中学受験生のうち、その塾に通っている、あるいはその模試を受けた子のなかの真ん中の意。全国の同学年の子ども全員を並べたときの評価でも、その子の頭のよさを絶対的に測った数字でもありません。

 各大手塾は独自の偏差値表を出しています。参考に見ていただければ、それだけでも数字が絶対的なものではないとお分かりいただけるでしょう。

【参考】
◆日能研 2026年入試による結果R4偏差値一覧
◆四谷大塚 2026年度入試結果偏差値一覧

 ここが、知っているようで、案外意識の外に行ってしまう部分です。親が自分の高校受験や大学受験を思い出して、「偏差値50だと、このくらいの学校かな」と考える。けれど、令和の中学受験の模試と、かつて自分が受けた歴代の模試では、受験者層をはじめとして時代や背景、何もかもが違います。昔の自分の感覚を、そのままわが子に当てはめることはできません。

 さらに、中学受験の模試によっても受験者の集まり方は大きく異なります。「こちらの模試では50、あちらでは60だった」ということも大いにあり得るのですが、それだけで学力が急に上がったわけではありません。

 

 たとえば、A模試の成績をB模試の学校一覧に当てはめて、「この学校に届いた」「全然届かない」と判断すると、出発点からずれてしまいます。ネットで検索すれば偏差値表はすぐに出てきますが、数字の大きさだけでなく、どこが作った何年度の表なのかを確認することが先です。

 また、塾の範囲が決まった確認テストと、広い範囲から出る実力テストも、同じようには扱えません。前者で力を発揮できても、時間がたってから同じ知識を取り出せるかは、別に確かめる必要があります。どちらかが「本当の実力」で、もう一方が無意味ということではなく、わかることが違うのです。

「勉強しているのに偏差値が上がらない」理由...