教育ジャーナリストでも、我が子の中学受験は迷ってばかり

こんにちは。教育ジャーナリストの佐野倫子です。

これまで学校や塾、教育にかかわる専門家、そして中学受験を経験したご家庭を取材し、記事や書籍を書いてきました。

私生活では2人の息子の母でもあります。長男は2024年に中学受験を終え、次男は現在、小学5年生。つまり私は今、一度目の受験を振り返りながら、二度目の中学受験に伴走しているところです。

簡単に我が子の中学受験歴を紹介しておきます。

 
 

「教育ジャーナリストなら、中学受験も順調だったのでしょう」

そう思いますよね?……ところがですね、まったく、もちろん、そんなことはなかったんです(涙)。

塾選びにも迷いましたし、テストの成績に一喜一憂もしました。言わなくていいひと言を言い、言うべきひと言が出てこなかった夜もあります。

教育について取材し、原稿を書く仕事をしていても、自分の子どもの前では、手探りどころか大いに迷走。知識があるぶん、「こんな方法もある」「いや、こちらの専門家は反対のことを言っていた」と選択肢だけが増え、余計に迷ったことさえあります。

当初は順調だった息子のクラスも、一番の難所、6年生の夏前に急落。なんと恐ろしいタイミング……!

今も忘れられないのが、長男が小学6年生の前期のことです。

「今日、先生に、『おい、一体どうした? 教室長(校舎の責任者)がお前のクラスと席次[1]を見て、ものすごく悲しそうな顔をしてため息をついてたぞ! しっかりしろ! 頑張れ!』って言われた」

[1] SAPIXは入塾時にテストがあり、その成績で初回のクラスが決定。その後も1〜2か月に1回のテストでクラスを見直し、常に実力に合うクラスで授業を受けます。席順に関しては校舎によって方針が異なるようですが、成績順になことも。

塾から帰宅した長男が、もぐもぐ食事をしながら、なんでもないことのように、でも絶対内心は穏やかでない様子で言うのです。息子をいつも叱咤激励してくれる厳しくも愛情深い先生。その先生が、息子の成績急落を見て深いため息をついた……。

先生がため息をつきたくなる気持ちは、私にも痛いほどわかりました。息子が4年生の時から見てくれている先生ですから、さまざまな要因がきっと見えていらっしゃるのでしょう。

そして夏期講習中に、とうとうクラスが一気に5つ落ちました。(ちなみにこれは、翌年度の保護者会で「夏に校舎で一番クラスが変動したレジェンド」として語り継がれていました……)

しかも、これがまったく勉強していなかった結果ならまだいい(?)。しかし本人、結構頑張っていたように見えるのです。

毎日のように塾へ行き、帰宅後も宿題ですから、1日10時間以上は勉強していたと思います。夏休みらしいイベントはなく、机に向かっている時間だけを見れば、私が小学6年生だったころの何倍も勉強していました。

それでも、成績は下がった。残酷に、あっけなく下がったのです。

中学受験には、ときどき、努力と結果のつじつまがどうしても合わない時期があります。そしてそんなとき、親の頭には、ありとあらゆる選択肢が浮かびます。

家庭教師をつける?
個別指導塾を追加する?
睡眠時間を少し削る?
学校を休ませる?
そもそも、この志望校は現実的なのだろうか……

不安になってインターネットを検索すると、

「6年生の夏が天王山」
「秋からの逆転は難しい」
「この時期の成績で、受験校を見直すべき」

といった心拍数を上げてくれる言葉が、次々と目に入ります。

何と恐ろしい……。私は必死に考えました。
どうして成績が下がった? 
きっと勉強のやり方によくないところがあるんだ。それは何だろう?

結論から言うと、その後、私たちは志望校を変えることはせず、家庭教師もつけず、個別指導にも通わず、学校も2学期までは皆勤で頑張りました。

そして代わりに私がしたのは、塾の先生に電話をかけること。少々電話しづらいとそれまでは感じていましたが、それどころではありません。

「この状況で、息子は何をするべきでしょうか? 先生! アドバイスをお願いします! まずいです!」

……今になって振り返れば、あのとき長男の成績が下がったことには、いくつもの要因があったと思います。

そのあたりについては、この連載でおいおい書いていきますね。

ただ、あの夏、私は痛感しました。中学受験は、始める前に思い描いていたものと、実際に始めてから見える景色が、ずいぶん違うものなのだと。

この連載では、そうしたときの迷いのひとつひとつについて、私自身の経験と失敗を、できる限り正直に書きながら、取材で得たプロの知見をお伝えしたいと思います。

自分が楽しかったから、息子にも中学受験を

さて、読者の皆様のなかには、まだ中学受験をするかどうか迷っている、という方もいらっしゃるでしょう。中学受験のメリットって、お金も時間も膨大に投入するわりにはわかりにくいですよね。

我が家の場合は完全に、私が主導でスタートしました。私自身が、30年以上前に中学受験を経験したことが大きかったように思います。

といっても、幼いころから難関校を目指して英才教育を受けていたわけではありません。今よりも呑気な時代でしたから、小学6年生から近所にあった進学塾に通い始め、1年間猛勉強をして、なんとか第3志望の学校に滑り込みました。令和の中学受験では、なかなか再現しにくいスケジュールです。

ともかく滑り込んだその中学校・高校で過ごした6年間が、私はとにかく楽しかったのです。

部活動や学校行事もよく設計されていて、今も付き合いの続く友人にたくさん出会いました。しっかり勉強することがごく自然な環境があり、振り返ればあの6年間で、ものの見方や教養の土台のようなものを身につけさせてもらったと感じています。

ですから、子どもが生まれたときも、「本人が嫌でなければ、中学受験をしてもいいかな」と、ごく自然に考えていました。

……それが少々甘かったというのは、こちらも追って書いていきたいと思います(笑)。

本連載では、取材で得た情報、プロの視点を多角的に集めていきたいと考えています。そのなかから、読んでくださる方が「これは、我が家にも使えそう」と思えるものを持ち帰れるような、実践的な中学受験マニュアルにしていきたい。

大切なのは、誰かの「正解」をなぞることではなく、その子と家庭に合った歩き方を見つけること。これから中学受験を始める方、すでに少し迷子になっている方に、この連載が少しでもそのヒントになりますように。

 

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1・佐野倫子の取材ノート ―合否を分ける「考え方」と「判断軸」

数多くの受験家庭への取材、塾本部・講師へのインタビュー、そして自身の伴走経験から見えてきた「本当に見るべきポイント」を解説。

塾選び、学校選び、教育費、SNS、最新トレンドまで、情報過多の時代だからこそ、情報に振り回されず、我が子にとっての最適な選択をするための「考え方」と「判断軸」をお届けします。

2・我が家の中学受験伴走記

教育ジャーナリストでありながら、一人の母親として中学受験する我が子と向き合う日々は、決して思い通りにはいきません。テストの点数に一喜一憂し、親子げんかをし、「もう受験をやめたい」と思ったことも——。専門家としてではなく、一人の親として悩み、迷い、ときに立ち止まりながら歩んだ、成功談だけではないリアルな「私の記録」をお届けします。

            

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