吹奏楽部の取材を長年続けてきたオザワ部長が、高校生たちのノートに書き残された言葉の数々を語った。
姉から妹へ贈られたメッセージ、「根拠のない自信」を持って舞台に立つことの意味、そして「円の発想」という組織論。16〜17歳の若者たちが紡ぐ言葉は、大人の心にも深く刺さる。
吹奏楽に限らず、何かを頑張っている人、頑張りたい人、あるいは頑張れていない自分を感じているすべての人に届けたい、青春の記録がここにある。
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「根拠のない自信を忘れません」―2年連続全国大会出場校の部長が寄せ書きに書いた言葉
――ある生徒の言葉が今も印象に残っているんだとか。
オザワ部長(以下、オザワ) はい。「自分を信じて、みんなを信じて、根拠のない自信を忘れません」という言葉です。
これは昨年、幕張総合高等学校シンフォニックオーケストラ部が2年連続で全国大会に出場したとき、高校2年生の部長が寄せ書きに自ら書いた言葉です。
――「根拠のない自信」というのは、少し矛盾しているようにも聞こえますが。
オザワ そうなんですよね。自信って、そもそも形がないじゃないですか。持てるときもあれば持てないときもある、とても曖昧なものだと思うんです。
でも、やはり自信を持って演奏することが、良い演奏につながる。自信過剰とかではなくて、良い意味での自信を持つことが大事で、その状態をあえて「根拠のない自信」と表現しているんだと思います。
この言葉を聞いたとき、演奏する前の舞台袖で、根拠なんてなくてもいい、ただ信じてステージに立つという覚悟が伝わってきて、すごいなと感じました。
全国の中学高校の吹奏楽部員、OBを中心に“泣ける"と圧倒的な支持を集めた『吹部ノート』。目指すは「吹奏楽の甲子園」。ノートに綴られた感動のドラマだけでなく、日頃の練習風景や、強豪校の指導方法、演奏技術向上つながるノウハウ、質問応答のコーナーまで。記事だけではなく、動画で、音声で、お届けします!
「死ぬとき、どっちが後悔しないかを考えた」
オザワ 9年前に、愛知県の安城学園高校の生徒さんがノートに書いていた言葉があります。正確に1言1句覚えているわけではないんですが、こんな内容でした。
「自分は高校に入るときに、JKみたいな生活をするか、吹奏楽にのめり込むかで迷った。でも、もし自分が年を取って死ぬときに、どっちが後悔しないかを考えて、吹奏楽を選んだ」と書いていたんです。
何かを選択するとき、自分の命が尽きる瞬間まで想像力を働かせて考えられる高校生がいるということに、純粋に驚いて。
大人でもなかなかそこまで考えられないじゃないですか。16年か17年しか生きていない子が、そこに至れるって素晴らしいなと思うんです。
自分もこれから先、何か迷ったときにはこの言葉を思い出して生き方を決めていこうと、今でも胸に留めています。
思いを「言葉」にすることの力
――高校生たちはなぜここまで豊かな言葉を持っているのでしょうか。
オザワ インタビューをしていると、高校生たちってほんとうに饒舌なんですよ。こんなに話せるのかと毎回驚くんですが、それはやはりそれだけの思いが彼ら彼女たちにあるからだと思います。
大事なのは、その思いを漠然としたままにしておかないで、言葉という形できちんと整理して把握しているところだと思います。言葉にすることで、自分のやってきたことを理解して、その先に活かすことができる。言葉にできることもすごいし、言葉にすることにも意味がある。両方が大切なんだと取材を通じて感じてきました。
――最後に、この取材活動を通じて読者に伝えたいことは何ですか。
オザワ 吹奏楽や中高生に限らず、何かを頑張っている人、頑張りたい人、あるいは頑張れていない自分を感じている人にこそ読んでいただきたいんです。
人間って、人が頑張っている姿に胸を打たれたとき、自分も頑張ろうと思えるじゃないですか。
私もこの取材を通じて、たくさんの高校生たちからその力をもらってきました。きっと読んでくださった方の心にも、何かが届くと思っています。
「あるある吹奏楽部」シリーズで大ブレイク、『オザワ部長の吹奏楽部物語 翔べ! 私たちのコンクール』(学研プラス)で「吹奏楽部ドキュメンタリー」という新ジャンルを確立。吹奏楽関係著書は20冊以上に及ぶ。朝日新聞「My 吹部 Seasons」、ぶらあぼ「ぶらあぼブラス」連載中。テレビ・ラジオ出演、司会などでも活躍。著書にシンクロナスの連載をもとにした『吹部ノート 12分間の青春』(発行:日本ビジネスプレス 発売:ワニブックス)、『いちゅんどー!西原高校マーチングバンド 〜沖縄の高校がマーチング世界一になった話〜』(新紀元社)、『空とラッパと小倉トースト』(Gakken)などがある。