「涙が出るほど感動する音楽を、こんなに中高生が演奏しているんだ」、そう語るのは、吹奏楽作家のオザワ部長。

10年以上にわたり延べ500校以上を取材し、部員たちの言葉をすくい上げてきた。金属アレルギーで楽器を吹けなくなった部長、6年ぶりの全国大会を目指した部員たちの「勝ちにこだわる」という宣言、本音でぶつかり合うことを選んだ高校生たち。その言葉の裏側に、どんな青春のドラマが隠されているのか。高校生の青春を追いかけ続けるオザワ部長に、取材の秘話を語ってもらった。

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知らなかった吹奏楽の世界がこんなに広くあるんだ

――まず、オザワ部長さんが吹奏楽のノンフィクション作家として活動されるようになった経緯を教えてください。

オザワ部長(以下、オザワ) 中学時代に吹奏楽をやっていました。その後、たまたまいろいろな縁があって吹奏楽のあるある本を出したんですが、取材を重ねていくうちに自分が知らなかった吹奏楽の世界がこんなに広くあるんだと気づかされたんです。

想像を超えるレベルの高い演奏、個性的でおもしろい指導者、沢山の素敵な曲、そしてコンクールで聴くと、涙が出てくるぐらい感動する音楽を、中高生が演奏しているんだということにすごく感銘を受けて、「こんな素晴らしい文化が日本にあるんだよ」「こんな素晴らしいことを中高生がやってるんだよ」ということを伝えたくて、今まで活動を続けてきました。

今はシンクロナスで、『吹部ノート』という連載を続けさせていただいています。

 

 

PUSH CONTENTS

全国の中学高校の吹奏楽部員、OBを中心に“泣ける"と圧倒的な支持を集めた『吹部ノート』。目指すは「吹奏楽の甲子園」。ノートに綴られた感動のドラマだけでなく、日頃の練習風景や、強豪校の指導方法、演奏技術向上つながるノウハウ、質問応答のコーナーまで。記事だけではなく、動画で、音声で、お届けします!

 

 

「初めはこの宿命を、神様をとても憎んだ」
金属アレルギーと向き合った部長

――連載の中で特に印象に残っている言葉を教えてください。

オザワ 「初めはこの宿命を、神様をとても憎んだ」という言葉です。旭川明成高校吹奏楽部の2024年度の部長がノートに綴った言葉です。

彼女はユーフォニアムという金属の楽器を演奏していたんですが、まさにコンクールを目指そうというときに金属アレルギーになってしまった。いわば「もう楽器を吹けない」という宣告のようなもので、高校3年生の最後、すべてをかけてきた大会を前にして、部長である自分がそこに参加できないという状況でした。

 

でも顧問の佐藤淳先生や、卒業生・同期・後輩たちからの支えがあって、だんだんと「奏者としてはコンクールに出ないけれども、この吹奏楽部で自分がやっていくべき役割」を見つけていったんですね。

自分が一番目指してきたことが絶たれたときに、神様を憎むまでの状況を克服していく。それは本当に感動的なストーリーでした。

先生が今年全国大会初出場を果たせた理由の一つとして、「昨年の部長の存在があったから」とおっしゃっていました。

吹奏楽部というのはその年だけではなく、前の年にあったことが後輩たちに受け継がれて、それが頑張る理由になっていくんです。そういうところを、今年の旭川明成の全国大会初出場という快挙を見て改めて感じました。

深い言葉が生まれる取材の秘訣

――オザワ部長が生徒たちから深い言葉が引き出せる理由は何でしょうか。

オザワ 自分ではあまり自覚していなくて、自然とお話ししている間にそういった言葉が出てくるんですよ。でも、もし引き出せているとすれば、生徒を子どもだと思っていないからでしょうか。1人の人間として接しているし、とても素晴らしいことを成し遂げているリスペクトできる対象、と常に考えています。

私自身も吹奏楽をやっていたので、頑張ってる気持ちとか悔しい気持ちに共感ができる。そしてすべての話を肯定する。「何を話しても大丈夫だよ」という雰囲気を作るようにしています。

取材は1校につき1日から2日程度で完了しています。できる限り生徒さんたちの練習の時間を妨げたくないという思いがあるので。

コンサートやコンクールで中高生が演奏する音楽を聴いて、涙が出るほど感動するんです。こんな素晴らしいことを中高生がやっているんだよということを、もっとたくさんの人に知ってもらいたい。そんな思いで、これからも取材を続けていきます。

 
オザワ部長

「あるある吹奏楽部」シリーズで大ブレイク、『オザワ部長の吹奏楽部物語 翔べ! 私たちのコンクール』(学研プラス)で「吹奏楽部ドキュメンタリー」という新ジャンルを確立。吹奏楽関係著書は20冊以上に及ぶ。朝日新聞「My 吹部 Seasons」、ぶらあぼ「ぶらあぼブラス」連載中。テレビ・ラジオ出演、司会などでも活躍。著書にシンクロナスの連載をもとにした『吹部ノート 12分間の青春』(発行:日本ビジネスプレス 発売:ワニブックス)、『いちゅんどー!西原高校マーチングバンド 〜沖縄の高校がマーチング世界一になった話〜』(新紀元社)、『空とラッパと小倉トースト』(Gakken)などがある。