エースの三笘薫を欠いた状態で日本はどう戦うべきか

 

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いよいよあす6月15日(現地時間14日)、日本のW杯が開幕する!

グループリーグ初戦の相手はオランダ。エースの三笘薫を欠いた状態で日本はどう戦うべきなのか。「勝点1で十分」という考え方は正しいのか、それとも勝ちに行くべきなのか。サッカージャーナリストの河治良幸と、スポーツライターのミムラユウスケが、メンバー構成から試合の進め方、そして終盤の采配まで徹底的に語り合った。

三笘不在の穴を埋める左ウイングバックの人選、オランダの最大の脅威であるダンフリース対策、さらに森保監督の交代策が持つメッセージ性まで、リアルな必勝プランに迫る。

「点を取るのはかなり難しい。ただ隙は必ず生まれる」

 

 

――まずオランダ戦に向けて、そもそものマネジメントという観点からどう臨むべきかを聞かせてください。グループリーグを見渡しながら戦うという考え方もありますが。

河治良幸(以下、河治):基本的に選手というのは目の前の試合にしか向かえないんですよ。監督はどこかでそのあとのことを考えているかもしれないけど、あくまでも選手の前では「ここ100%でいくぞ」ということでしか動けない。

もちろん分析やスカウティングはしますよ。でも何が起こるか分からないじゃないですか。例えばスウェーデンとチュニジアの裏側がどうなるか、チュニジアがまさかの快進撃を遂げているかもしれない。

そんなこと誰にも分からないんで、柔軟に対応するにしても、やっぱり迫ってきたら「1試合100%でいこう」とならないといけない。

優勝争いに慣れているチームなどは「70%で入る」なんて言い方をすることもありますよね。でも意識としては多分100%でいっているはずです。コンディションのコントロールという意味で表現が変わるだけで、初戦から全力で臨むというマインドセットは変わらない。

ミムラユウスケ(以下、ミムラ):前回で言えば、コスタリカがあんなに大差で負けるなんて誰も想像しなかったじゃないですか。

それで相手のメンタリティもチーム状況も全部変わってくる。日本だってオランダ戦の結果によって状況が変わってくる。だから裏側の結果はすごく大事で、それが頭に入りながらも、今の試合だけを見るという姿勢が求められる。

――では実際にオランダから点が取れるか、という視点ではいかがですか。

河治:基本はやっぱり0-0以上でしっかりいって、オランダが多少攻撃のバランスを考えなきゃいけない状況になったところの裏側を突くというのが1つの形になると思います。

90分という時間の中で、どんな強いチームでも攻守のバランスに強弱はついてくる。そこの隙ができるところを逃さないというのが日本の狙い目じゃないですか。あとはもちろんセットプレーで点を取ってしまうというオプションもある。

ただ、点を取ること自体はかなり難しい相手だとは思います。3月のイングランド戦なんかに比べてもオランダはより硬く来るはずで、普通に考えれば2018年のコロンビア戦でサンチェスの退場を招いてPKを得たような、びっくり仰天させる猛プレスを仕掛けてという展開でもないと厳しい。

ミムラ:でもそういう戦いをしようとしているのが森保監督ですから。ミドルゾーンでブロックを作りながら、点が取れたら少し後ろに引いて守り切るというイメージ。オランダ戦とラウンド16でブラジルのような相手と当たったときは特にそうなると思います。

 

 

スポーツギロン

スポーツ界のトピックについて、スペシャリストを招きながら、その「次」を探る、新感覚スポーツ討論コンテンツです。

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左ウイングバックは鈴木順之助、最大の脅威はダンフリース

 

――三笘選手が怪我で不在という状況の中で、メンバー構成についてはどう見ていますか。

ミムラ:私は左ウイングバックに鈴木順之助選手が入る可能性があるかなと思っています。三笘選手が怪我をしたから余計に。伊藤選手をウイングバックに置いて、シャドウに中村慶藤選手という形ですね。高さ対策という意味でも、その可能性はあるかなと感じます。

河治:セットプレーの頭数を考えると、オランダ戦は190センチ近い選手に攻める選手を6枚は揃えていかないといけない。鈴木順之助選手なんかは180センチちょっとしかないけど、190センチの選手と自由にやらせないだけのものを持っている。

右側を菅原由勢選手にするという方法もあるかもしれないけど、やはりこのチームの軸として堂安律選手は外しにくいじゃないですか。三笘選手がいなくなったことで、久保建英選手も余計外せなくなっている。となると左側を鈴木順之助選手にしてというのは、1つ大きな選択肢としてあるだろうなと。

――オランダの中で最も警戒すべき選手は誰でしょうか。

ミムラ:ダンフリースじゃないですか。右から入ってきて左からのクロスに飛び込んでくる、あの動きは止めにくい。最初から正面で待ち構えていれば捕まえられる場面も多いんですが、斜めに飛び込んでこられると難しい。だから鈴木順之助選手を左ウイングバックに置くというのは、そこへの対応策としても理にかなっている。

河治:サイドバックやウイングバックで縦に来る選手を止められる選手は結構いるんですよ。でも斜めに入ってくる選手を止められる反対サイドの守備者というのはなかなかいない。鈴木順之助選手はそこのスペシャリストで、オフの状態から早い段階でもう捕まえてしまって、危険なゾーンに行かせないというマッチアップが彼の真骨頂。

ガクポは最初から場所が分かっているのでスリーバックの中でなんとかなる。でもダンフリースはやっぱり飛び道具的に入ってくるから、常に察知していないといけない。マレンを抑えながらダンフリースも見るという、ある種のゾーンとマンマークのハイブリッドみたいな形になるかもしれないですね。

ミムラ:世耕選手はリーグアンでずっと空中戦の勝率がトップ15に入り続けているんですよ。そういうところが評価されているんじゃないですか。フィジカルのバトルが強くて、アンダー20の頃からそこが持ち味だった。世耕選手は意外と出場機会があるんじゃないか、むしろ裏のキーマンになるかもしれないと私は見ています。

河治氏&ミムラ氏が考える「日本vsオランダ」予想スタメン
 

交代策が持つ「メッセージ」。終盤の采配で森保監督は何を語るか

――オランダという相手そのものについてはどんな印象を持っていますか。

河治:オランダは欧州予選を見ていても、そんなにバランスを崩さないまま戦っている。バランスが崩れるのはリードされたときだったりする場面で、それまではクーマン監督も無理はしないでしょう。極論、引き分けでもいいぐらいの計算は持っているはずです。今回3位までが上位に行けるという条件もあるから、オランダも残りのスウェーデン戦とチュニジア戦で勝点を積み上げられると踏んでいる。そこは日本と似ているところですよね。

オランダ人というのは基本的に「美しく勝ちたい」という気質があるじゃないですか。でもクーマン監督はリアリストの部分を持っている数少ないオランダ人なんです。オランダがこれまで優勝候補の中では少し低めだと思われていたときに上がってきた場合というのは、だいたい守備とのバランスがしっかり取れた監督のときです。理想だけで戦わなかったとき。

ミムラ:2014年のファン・ハール監督のときもそうでしたよね。なのでクーマン監督にもその感覚があると思うんで、森保監督との唾の競り合い、お互い崩さないまま進んで、セットプレーなどでスコアが動いたときにどちらかが動かざるを得なくなる。そこで表と裏が出てくる。固め合って70分、80分になってきたときに、どちらかが隙を突いてパッと点を取るというのが、この試合の面白さになると思いますね。

――「0-0のマインドで入る」という選択肢はあるのでしょうか。前回のコスタリカ戦が引き合いに出されることもありますが。

河治:それは森保監督はしないんじゃないですか。コスタリカ戦を振り返って、大会後のインタビューで「0-0でも良かったけど、あくまでも勝ちに行けと言い続けた。最後の最後になって0-0でも引き分けのままでいいよと伝えるべきだったかもしれない」と言っていた。その反省が相当大きく残っているはずで、そういう指示はしないと思います。

ただ基本的に守備に隙がないチームを作れば、引き分けという状況になっても守り切れる。だから勝ちに行くというマインドでやっても、日本代表の選手たちはバランスを取るんです。岡崎慎司選手が「俺は生粋のストライカーや」と口では言いながら、めちゃめちゃ走って献身的なことをするじゃないですか。あれと同じで、勝ちに行くぞと言ってもちゃんと締めるというDNAが日本の選手にはある。だからそこの心配より、引き分けでもいいぞと言ってしまうことによるマインドセットへの影響のほうが怖い。

ミムラ:終盤の選手交代がはっきりとしたメッセージになると思います。ボランチに板倉選手を入れたら「守り切れ」ということ。ウイングバックに冨安選手や菅原選手あるいは遠藤選手が入ったら「締めにいく」というサイン。逆に堂安選手を前に上げてゆきな選手をウイングバックに入れたら「攻めにいく」というメッセージになる。選手の組み合わせによって意図がはっきり伝わる。ある意味で監督が主導権を持って指示を出せる構成になっているのが、今回のメンバー選考の特徴でもあると思いますね。

河治:鎌田大地選手も、イングランド戦のときに「シャドウで使われているときは守備をしろということだと理解して、攻撃のことは全然考えていなかった」と言っていましたよね。割り切って守り切るという場面で鎌田選手のシャドウというのも1つのメッセージとして機能する。グループリーグ突破のための最低条件は絶対に負けないこと。消耗を最小限に抑えながら勝点を積み上げていく。そのための交代策を、森保監督は必ず複数パターン用意しているはずです。

フルバージョン「初戦オランダは『勝点1で十分』? 三笘不在のリアルな必勝プラン」👇

 【スポー”ツギ”ロン#7(ミムラユウスケ×河治良幸)のテーマ】
前編 「26人」から推理する森保ジャパンの戦略
中編 初戦オランダは「勝点1で十分」? 
後編 チュニジア戦で決めるべき?「1勝2分・勝点5」シナリオと天敵スウェーデン対策
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