街を歩いていると、不意に耳に入ってくる言葉がある。誰かの会話、カフェのBGM、看板の文字。芸人・鈴木ジェロニモが、日常の中で出会った“ちょっと気になる言葉”に耳をすませて、思考を巡らせます。(連載の詳細はこちら)

「急なお誘いで申し訳ないのだけど」。高校の同級生、野球部が一緒で大学も一緒の、からLINE。高校同期5人で集まる予定だったが1人来られなくなったためもし今晩空いていたらどうか、と。なるほどなるほど、と思いながら予定を見る。今日の予定を今日見るくらい刹那的に生きているわけで、行けちゃうことが判明する。行けちゃう、と返信。「お!ほんと!嬉しい!」。そういえば、彼はかなり良いやつだった。
彼に5万円借りていた。いや、えっと、借りている。大学4年の冬、卒業旅行の手続きをしに旅行代理店へ行った。頭金として1人5万円。その場で現金で支払う必要がある、と。ん、俺5万円ないよ。「え?」。当時から刹那的に生きていた私はなぜか5万円の存在を知らなくて、いや、本当はそういう連絡が来ていたのかもしれないけれど目視しただけで分かってはいなくて、とにかく5万円がなかった。じゃあ、まあまあ、と彼が一旦出してくれた。そして今に至る。は。
結構ありえない。だから彼と会うたび両手をパーにして、5万円、5万円、と私は言う。分ってます分ってます、と。「え、ああ、そうじゃん」。彼はいつも半分忘れていたみたいに笑う。笑ってくれる。結婚している。家を買っている。こどもがいる。ありえないだろ、と私は書きながら私に思う。...
