街を歩いていると、不意に耳に入ってくる言葉がある。誰かの会話、カフェのBGM、看板の文字。芸人・鈴木ジェロニモが、日常の中で出会った“ちょっと気になる言葉”に耳をすませて、思考を巡らせます。(連載の詳細はこちら)

正月なので帰省した。風呂に入る。父親が最初に入り、出て、母親にすぐ入るよう急かされる。んん、うーい、みたいな気の抜けた返事をする。すぐに入る意思はない、ということだ。どうしてか意思疎通ができて「ああそう、じゃあ先入ります」と母親が入る。
「もう寝ますから後はよろしくね、電気とかストーブとか」。ん、あい、あーい。ちゃんとはできないかもしれませんよ、と期待値をできるだけ下げるための返事。両親が寝室に向かい、リビングに私が一人残る。
でけーなー、と思いながらテレビを観る。深夜のお笑い番組。先輩が普通に出てる。スタジオの綺麗なセットが綺麗なセットだと分かるくらいの高画質。テレビ番組は人間が作っているということが鮮やかさによってむしろ明瞭に伝わってくる。テレビという手作りの美しい沼。みんな頑張ってるんだなあ、の気持ちが私の風呂への背中を押す。
浴槽の湯量が足湯程度の低さで面白い。自分でお湯を足してってことね、と理解する。お湯用の蛇口からぼぼぼぼぼと注ぎ、熱く高くなる浴槽の湯を自分の体を使って撹拌する。この動き。懐かしい。そのときふと、高校3年生の冬の体が訪れる。
...
