コロナ禍で旅行や飲食、外出など、ストレス発散にも制限がかかる中、心の不調を訴える人も増えている。今こそ必要なのは、自分で自分の心の調子を整え、いつでも幸せを感じられる様にメンテナンスすること。とはいえ、なかなか学ぶ機会のない「心の扱い方」。じつは、ヨガの世界では何千年も前から語りつがれているという。
 そこで、瞑想・ヨガインストラクターの椎名慶子先生に、さまざまな悩みやネガディブな気持ちに対応するヨガの智慧や瞑想法を教えていただきました。第3回は、子育てのイライラが抑えられない時。

椎名慶子
瞑想・ヨーガ・
シータヒーリング ®️・ベビーサイン講師
ウタール ヨーガ・ヒーリングスクール主宰

NYにて全米ヨガアライアンスを取得後、アメリカ、日本、インドにて瞑想やヨーガ哲学、マントラなどを専門的に学び、ホットヨガスタジオLAVAの創業インストラクターとして数々の人気プログラムを開発。1000名を越えるヨーガインストラクター教育を担う。現在は瞑想を主にしたウタール ヨーガ・ヒーリングスクールの主宰を務め、「一人ひとりがハッピーに生きること」をテーマに活動している。
Uttal yoga & healing school https://uttals.com/

 

イライラや怒りは過去に対して起こるもの

 皆さんこんにちは。

 瞑想・ヨガインストラクターの椎名慶子です。「心の扱い方〜ヨガと瞑想に学ぶセルフメンタルケア」として、自分で自分のココロに向き合い、不安や苛立ち、悲しみなどに気づき、手放すことで穏やかな気持ちを取り戻していく、セルフメンテナンスの方法をお伝えしたいと思います。

 第3回のテーマは、「子育てをしていて、イライラが抑えられない時」。

Ponomariova_Maria/ iStock / Getty Images Plus/Getty Images

 子育てをしていてイライラが抑えられない時、それはあなたが疲れ果て、ストレスを感じている時のサインです。

 私たちは疲れやストレスなく自然な状態でいる時、穏やかで優しく、愛に満ちた存在です。

 ですが、疲れが溜まりすぎたりストレスを感じていたりしている時には、自分自身の本質を見失ってしまうのです。ですから、イライラを感じる時は、とにかく自分の頭と心と体を休ませることが大切です。

 ヨーガ的な「休み」とは、適度な運動による血流改善と休息、瞑想による心身の休息がメインとなります。

 イライラしていたとしても、「あぁ、私は今、イライラしているな」と自覚して、言動を選択できるようであれば、それは問題にはなりません。

 ですがもし、イライラして思わずとってしまった言動に満足しないようであれば、それは変えていくことがお勧めされます。

いくつかの対処法をお伝えします。

対処法1:気持ちを「今、この瞬間」に向けること。

 イライラや怒りは、過去に起こった出来事に対して湧く感情です。過去に起こった出来事を、今変えることはできないんですね。気持ちが「今、この瞬間」だけに向いている時、イライラは落ち着くようにできています。

例1)「またイヤイヤが始まった!」イライラ
→過去のイヤイヤ!にも気持ちが向いてイライラしています。「今、この瞬間」の状態にだけ目を向けてみると、子どもが何か表現したいことがあって、表現しているという状況をイライラすることなしにありのまま受け止めることができます。

例2)ごはんが終わった後に「お腹空いた」と言われてイライラ
→「だからさっき、食べなさいって言ったでしょ!」と過去にも気持ちが向いてイライラしています。「今、この瞬間」の状態にだけ目を向けると、子どもが「お腹が空いた」ことを表現しているという状況をイライラすることなしに、ありのまま受け止めることができます。そして、冷静に優しく、今後はどうしてほしいのかを伝える機会を持つことができます。

対処法2:この世界の特徴は「不完全である」ことを知ること。

 イライラは完璧を求めすぎる時にも起こります。
 この世界はもともと不完全にできています。「不完全な姿が完璧な姿だ」ということです。ですから、不完全さを目の当たりにした時に、イライラする必要はまったくないんですね。

 このことを知ると、気持ちが少し楽になります。

 では、実際に、イライラを手放すための呼吸法と瞑想をご紹介します。ぜひ音声ガイドを聴きながら、一緒に実践してみてください。

音声ガイド 03:15〜

【イライラを手放す呼吸法&瞑想】

①指先を思いっきり振る。(20~30秒)
・手をパーにして胸のあたりに持ってきて、指先についたお水のしずくを振り払うような感じで振ります。
 体の中に溜まったイライラは、指先から流れていきます。指先まで血液が流れ、リラックスしやすくなる効果もあります。

②猫背になって深呼吸する。(2~3回)
・猫背になり、首までだらりとリラックスさせながら、自分をいたわるように鼻から大きく息を吸って、息を吐くときには、疲れやイライラが流れ去っていくようなイメージで空気を吐ききります。
・リラックスした気分になるまで2~3回繰り返したら、ゆっくりと背筋を伸ばします。

③ブラーマリー・プラーナーヤーマ:蜂の音の呼吸法(2~3回)
 精神的な緊張をほどきリラックスを引き出す、からだと心に調和をもたらす呼吸法です。
・楽な姿勢で背筋を伸ばして座ります。(椅子に座っても、床に座ってもOK)
・目を閉じて眉間に意識を向けます。
・鼻から深く息を吸って少し止めてから、ゆっくりと静かに蜂の羽音のような安定したハミングの音を眉間に響かせるようなイメージで、ハミングしながら鼻から息を吐きます。
・吐き終えたら、大きく息を吸ってからゆっくりと息を吐き、普通の呼吸に戻って30秒ほど静かに余韻を味わいます。
・2~3回繰り返します。

④「今、この瞬間」に気持ちを向ける3つの箱の瞑想。(2~3分)
 この瞑想法は、自分の中にある感情や感覚について、それが「良いか、悪いか」をジャッジすることなく「今、この瞬間」に意識を向けるとても良い練習になります
・自分の前に、過去の箱・現在の箱・未来の3つの箱があることをイメージします。
・目は閉じたまま自分の中に流れる感情や感覚や考えごとを観察して、それが「過去のこと」なら過去の箱に、「現在のこと」なら現在の箱に、「未来のこと」なら未来の箱にしまうイメージをします。箱にしまい終わったら、また観察に戻ります。どんな感情、感覚、考え事が出てきてもかまわないので、出てきたら3つの箱に仕分けて下さい。
・区切りのよいところで、3つの箱をすべて、自分の手から手放すイメージをします。

 2~3回深呼吸をしてから、ゆっくり目を開いて瞑想を終わりにします。

 

 ※瞑想は、1日1回、毎日やることをおすすめしています。歯磨きのように、やる時間を決めて、毎日の習慣にするのが継続するコツです。