街を歩いていると、不意に耳に入ってくる言葉がある。誰かの会話、カフェのBGM、看板の文字。芸人・鈴木ジェロニモが、日常の中で出会った“ちょっと気になる言葉”に耳をすませて、思考を巡らせます。(連載の詳細はこちら)

カラコルムの山々のライブ『カラコルム・ハイウェイ』を観た。
転換。次の演奏のために楽器が並べられていく。ドドドドドンドンドンスタラカタツースドドン。ドラムが音を確かめる。おっ、と思う。音が、いい。何がとかは全然分からないけれど、何というか、その演奏者が生きているということとドラムの音が約束のように手を結んでいる。いいですねいいですね。ふと見渡すと客数がぐんぐん増えている。波頭の白さが陸を追うように客席の熱気が演奏を待ち望む。
「戻れメロス」。そういうタイトルの曲の中で、戻れメロス、と連呼される。イヤホンで聴いていたものが今、目の前で演奏されている。あれ、この音って本当にキーボードで弾いてたんだ。ああこれもそっかギターで。おおおベース。そうだよなドラムも。かっこいい曲のかっこよさを、なぜか勝手にDTM的な、PCから流れる音であるかのように認識していた自分に気づく。でも今、そうじゃない。うおおおお。私の気持ちが涙のように集まって、体が熱くなる。
ステージにいるカラコルムの山々。そのメンバーが、彼らの手を動かさなかったら、声帯をふるわせなかったら、ここに音楽は現れない。人間の意志と身体が、動いてくれて、音を呼ぶ。それを信じて音を重ねる。無限の会話が同時に積み上がる。...
