結婚生活の中で積もり積もった不満や違和感。もう離婚しかないと思うほどの不仲やトラブル。
さまざまな夫婦の在り方があるからこそ、ふたりの間だけで解決できない悩みや問題を抱える人も少なくないでしょう。
夫婦カウンセラーとしてこれまで2000組以上の夫婦をサポートし、著書『夫は、妻は、わかってない。夫婦リカバリーの作法』でも注目を集める安東秀海先生が、読者の皆様から寄せられた夫婦関係のお悩みにお答えします。
今回は、夫に不倫され、子育てが落ち着いたら離婚したいと言われてしまったという、まりさんからのご相談です。
まりさん(仮名)からのご相談
主人が職場内不倫で、不倫相手を好きになってしまい、私に対して愛情はないと言われました。
こどもがまだ1年生なので、落ち着いたら離婚したいと言われ、私は毎日苦しくてうつ状態になってしまいました。
もう再構築は無理なのでしょうか……
(妻・まり、夫・まさ)
※頂いたご相談に編集を加えております。ご了承ください。
「離婚」に囚われず、今の夫婦関係を見つめ直すには……
夫である、まささんが職場の同僚と不倫関係にあることを知ってしまったという、まりさん。
いただいたご相談からは、その関係がまだ継続しているのかは判断できませんが、まささんの中では依然として、相手女性への気持ちが残っているようです。
傷つきながらも、再構築をと考えるまりさんに対し、まささんは子育てが落ち着いたら、と離婚も視野に入れている様子。
「もう再構築は無理なのでしょうか?」と言うまりさんですが、どこか一段下がった所に立っているように見えます。
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夫が不倫をしていた。それは紛れもなくショッキングな出来事です。
加えて、まだ相手女性に気持ちがあって、さらには夫婦としての愛情はないから子育てが落ち着いたら離婚したい。そんな風に言われては、心が折れてしまうのも無理はないのかもしれません。
妻としての立ち位置を奪われ、居場所さえなくなってしまう感覚すらあるのではないでしょうか?
浮気や不倫によってパートナーがどれほど傷つくのか、この問題の本質がここにも表れていると思うのですが、そうであるからこそまりさんは、まず自分の場所を取り戻すことから始める必要があります。
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不倫をされた側の心理
繰り返しになりますが、夫や妻の不倫にショックを受けない人はいないでしょう。
怒りや嫌悪感が溢れてしまうのも無理はありません。許せない、もう一緒にいたくない、相手に「✕」をつけたくなる気持ちも理解ができます。
けれど、時としてこの問題は、不倫をされてしまった側にも「✕」をつけてしまう場合があります。
不倫をされたのは私に魅力がなかったからではないか? 私に至らないところがあったから、こんなことになってしまったのではないか? そんな風に、自分にバッテンをつける。
まりさんもそうなってはいないでしょうか?
夫の不倫を「私たちの問題」と夫婦単位で捉えるのは再構築に向けて必要な考え方です。けれど「私は不倫をされた妻」「愛されない妻」のように、どこかで自分の価値を下げるような考えになっているとしたら、そこは見直しておきたいところ。
夫婦の間にどんな行き違いや問題があったとしても、不倫に至ったのはまささんの責任で、まりさんの責任ではないと思うのです。
「離婚」に囚われすぎない
パートナーから離婚を持ち出されて冷静でいられる人は少ないでしょう。
まして自分に「✕」がついている状態でそれを言われると、知らず識らずのうちに離婚が前提条件になっているような気がしてしまうかもしれません。
でも落ち着いて、一歩下がって状況を見れば、まりさんが同意をしない限り、離婚が成り立つことはありません。
もちろん、そうだからといって「離婚したい」と言われたショックや悲しみが癒えるわけではありませんが、今はまだ離婚について考える時期ではないと思うのです。
大切なのは、離婚ありきでこれからの夫婦関係を考えないこと。
彼が離婚まで考えてしまうのは、今の夫婦関係に問題があると感じているからで、少し先の未来にふたりの関係がどうなっているかは、まだ誰にも分かりません。
夫は今、離婚を考えてしまうような心境にある、とだけ受け止めて、「離婚」という言葉に囚われすぎないことが大切ではないでしょうか。
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「今、ここ」の関係にフォーカスをする
これから先、どんな未来が待っているかは分かりませんが、まりさんとまささんの未来は積み重ねる「今」の先にあります。今、ここで目の前にある関係を少しでも良くすることに注力することができれば、その先にあるふたりの関係も変わるかもしれません。
大切なのは「今、ここ」の関係にフォーカスをすることなのですが、傷ついた心のままではどうしても過去の痛みに囚われてしまいやすいものです。
「どうして不倫なんてしてしまったの?」
「家族のことを考えてはくれなかったの?」
と、彼を責めてしまいそうになるのは心が傷ついているから。ここではまず、まりさん自身の心の傷を癒やすことも必要です。
以前の「夫のW不倫が発覚して……」というご相談 でも、傷ついた自分の心をケアする方法についてご紹介をしました。
【関連記事】「夫とどう接していけばいいのか…」ダブル不倫をしていた夫と関係修復したい
大切なのは、まりさん自身の心の中に、どんなことでも話せる親友のような存在=インナーメンターを作っていくこと。
たとえば、これまで家族を守るために呑み込んできた言葉はないでしょうか?誰にも言えないと心の内にしまいこんでいたその気持ちを、インナーメンターにそっと伝えてみます。
「親友」がピンとこなければ、絶対に味方でいてくれる信頼できる「誰か」をイメージしてみても良いでしょう。
こうして自分の中に何でも話せる自分を育んでいくことで、傷ついた心は少しずつ回復していきます。
「再構築」という言葉にこだわらない
傷ついた心がケアされて、自分についた「✕」が取れてくるにつれて自然と「今、ここ」の関係に集中できるようになってきます。
過去の痛みや未来への不安に囚われないで「今」の夫婦関係に向き合ってみると、痛みを通してふたりの関係を見ていた頃とは違った景色が見えてくるかもしれません。すると、まささんの言葉にも少し柔軟に反応ができるようにもなるはずです。
「離婚」に囚われすぎないで、とお伝えしましたが、彼の言う「子どもが落ち着いたら離婚したい」は言い換えると、「今は離婚しない」ということでもあります。それはまだ小さいお子さんのことを想ってのことでしょう。
「子どもに負担をかけないよう、今は離婚をしない」なんて言われると、「子どものために離婚しないだけで、私への気持ちはないんだ」と聞こえてしまうかもしれませんが、一歩下がって見てみると、家族のために再構築をしたいと考えるまりさんと、「考え方」としては大きくズレていないのかもしれません。
彼の様子からは、再構築を望んでいるように映らなくても、「子どものために」と重なる思いに照準を合わせてみれば、今集中すべきことが見えてはこないでしょうか?
それは夫婦としての再構築ではないかもしれません。けれど、お子さんを含めた家族としての関係性にまで広げて見た時には、前向きな取り組みに繋がる可能性があります。
「夫婦関係の再構築」にこだわらず、今ある関係を少しでも改善することに目を向けることが大切です。
夫婦としての愛情は戻らないのか?
離婚したい、という言葉以上に、まりさんが傷ついたのは「君への愛情はもうない」という言葉なのかもしれません。
夫からもう愛されていない。
そんな風に考えると、胸は苦しくせつない気持ちにもなるでしょう。けれど今、まりさん自身、彼への愛情を感じることができるでしょうか? 不倫をされて、愛情はないとまで言われ、そんな今の彼のことを愛おしいと思えるでしょうか?
愛おしさも、好きという気持ちも、感情は常に不安定で様々な外的環境、内的環境の影響を受け、波のように満ちては引いていきます。
今、彼がまりさんへの愛情を感じられないのだとしたら、それは「愛おしさ」という感情が引き潮のように遠ざかっている、ということなのかもしれません。引き潮が何によって引き起こされたのかはわかりませんが、引いた気持ちをもう一度満たしなおすことができないわけではありません。
同様に、彼の言動に傷ついたまりさんが、彼への「愛おしさ」を感じることができなくなっていたとしても、その気持ちはまた満たしなおすこともできるはずです。
ただ、傷ついた心のままでは、自分にも相手の心にも「愛おしさ」を満たすことは難しいもの。繰り返しになってしまいますが、まずは自分をケアすること、そこから関係修復の道筋も、夫婦としての愛情を満たしなおす取り組みも始まります。
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関係修復のロードマップ
私たちは、自分が思う以上に感情の影響を受けています。冷静に考えた結果、と捉えている事柄であっても、思考プロセスに感情がどのように作用をしているかには案外無頓着なものです。
ネガティブな感情はマイナス方向に思考を導きやすいものですし、ポジティブな気持ちで描いた未来はおのずと楽観的なものになります。
離婚のように人生に大きな影響を及ぼす決断は冷静にしなければ、と頭で理解はしていても、実際には決して小さくはない作用を、感情から受けている可能性があるのです。
だからこそ大切なのは、今思い描いている未来予想図が、実のところ現在の心境を映し出しているのかもしれないと理解をしておくこと。そして現在の心境は、傷ついた過去の痛みによって方向づけられているのかもしれないと、そう理解をしておくことではないでしょうか。
今は関係修復に前向きになれなくても、気持ちが変われば前向きに思えることもまた、あるのです。
関係修復のロードマップがあるとしたら、心の傷を癒すことがファーストステップ、夫婦関係にポジティブに作用する取り組みをできるところからひとつずつ試してみるのが次のステップになります。
その先のことはここまで進んでみてから考えてみる、そんな風に少しゆとりをもって構えておくことが大切なのではないでしょうか。
【前回記事】「うちの夫は、妻は、依存症?」相談に訪れる夫婦が急増。向き合い方をカウンセラーが解説
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