テレビドラマ化された『転職の魔王様』でも話題の小説家・額賀澪が教える動画講座「「書き上げる力」が身につく小説の書き方」が、2023年7月よりスタートしました。毎月最終週は「編集部より、今月のお話」として、今月の講義内容をテキスト記事でお送りします。

 今回は、第3回「プロットの作り方〈後編〉」、第4回「小説に不可欠な視点の話」をまとめてお届け。復習としてお役立てください。

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【小説の書き方】書き始める前に考えておきたい「物語のセットアップ」とは?
【小説の書き方】一人称?主人公視点?多くの人が意外と知らない「人称」と「視点」の関係

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【編集部より】プロットの要素、作り方のコツなど 8月の講座内容を総復習

プロットの役割

 プロットの作り方〈前編〉でお話ししたことのおさらいになりますが、プロットを作る上で大事なことが二つあります。

 一つは「やりたいことを明確にする」ということ。作者が作品の中でどういうことをこれからやろうとしているのか、作者自身の中で明確にすることです。

 もう一つはそのために「執筆に必要な要素を明確にする」こと。

 これがプロットの役割であるというのが前回のお話でした。

「書き上げる力」が身につく小説の書き方 第3回 プロットの作り方〈後編〉

 プロットの構成要素としては、この小説にどういう人が出てくるのか、登場人物を決めます。そして、その人たちがどういう場所で何をするのかといった舞台設定を決めて、それを実際のストーリー展開に落とし込んでいきます。

 これをただ書いただけでも一応プロットの形にはなりますが、このままだと要素を並べただけの状態なので、そこからさらにブラッシュアップをしていく必要があります。プロットの作り方には必ずしも正解はないのですが、ここでは私自身のプロットのブラッシュアップの仕方についてお話しします。

物語のセットアップ「起」

 物語の構成で、起承転結というのがあります。その起承転結の「起」、導入部分から見ていきます。

 「起」の部分では、物語の立ち上げに必要なことがしっかりやれているかが大事になってきます。

 では物語の立ち上げに必要なこととは何かというと、この物語の主人公はどういう人で、どういう環境にいて、どういう人たちに囲まれて暮らしていて、どういうことが物語の中で起こっていくのか、これを明確にすることです。

「書き上げる力」が身につく小説の書き方 第3回 プロットの作り方〈後編〉より

 このことを物語のセットアップといいます。

 パソコンを買ったときに、まず必要なソフトをインストールしたり、アカウントを設定したりすることを、セットアップといいますよね。これと同じ考え方で、これから物語が始動していくのに必要な要素を読者にしっかり見せてあげるというのが、物語のセットアップです。

 このセットアップをどれだけ早く完了させられるかというのが、導入部分での作者の腕の見せ所になります。

 上手な作家さんになると、本をめくって、2ページほどで物語のセットアップをすませてしまい、そこからどんどん本編を進めていきます。このセットアップをいかにうまくやるかが、物語の導入で求められることです。

 さらに、物語のセットアップをしつつ、読者に面白い話が始まりそうだなという期待感をどれだけ持たせられるかということが、大事になってきます。

 セットアップだけを意識すると、主人公はこういう人で、こういう場所にいて、周りにこういう人がいて、こういうことをしていきますと、どうしても話が説明的になってしまいます。これをいかに面白く書くかというのが、小説の導入部分を書く上での難しさでもあるし、楽しさでもあるのではないかと私は思っています。

 では、説明的になりがちなセットアップをどのようにして面白い話にしていくのかというと、ただ説明したいことを書き連ねるのではなく、それをエピソードとして落とし込ことが大事になります。

 例えば、...