リバプールに移籍した遠藤航選手。プレミアリーグで2試合プレーをした印象、そして現在地を独占告白——。

取材・文:シンクロナス編集部

【質問抜粋】
・改めて移籍の経緯を教えてください
・シュツットガルトへの思いも強かった?
・シュツットガルトのチームメイトたちの反応は?
・「監督が厳しい評価」と大きなニュースになりましたが…
・注目度の高いクラブで批判も付きまとうけど…?
・プレミア仕様に変えなきゃいけないと感じることは?
・慣れるだけでなく「知ってもらう必要」とは?
・年齢的にも「即戦力」としてプレーも求められているのでは?
・1対1で剥がされるシーンがクローズアップされ、スピードが遅いとも言われるけどどう思っている?

もともと移籍の線引きははっきりしていた

――いろいろなところで既に報じられていますが、改めて移籍の経緯を教えてください。

遠藤航(以下、遠藤) 本当に急でしたね。もともとどこからかオファーがあるかもしれない、みたいな話は代理人から聞いていたのですが、現実としては「クラブにオファー」が来ないと何も始まらないので。

 代理人から聞いていたのは、プレミアの中堅クラブをはじめ、いくつかの可能性程度で……、だからオファーを聞いたときは嬉しかった。18日にオファーを聞いて、そこからは怒涛でした。すぐにイギリスに飛んで、メディカルチェックをして、サインをして……撮影をしたり、取材を受けたり。

 ……はい、とにかく急でしたね(笑)。

――迷いはなかったですか。

遠藤 もともと僕の中で移籍の線引きははっきりしていました。

 まずシュツットガルト。そのうえで、自分の夢である「プレミアリーグ」で、選手として成長できる可能性のあるチャンピオンズリーグに出られるクラブなら検討したい。

 迷うとしたらプレミアリーグ以外で、チャンピオンズリーグに出られるクラブから話があったときかな……みたいな。

 でもこのあたりは、実際に話がない段階でアレコレ考えても仕方がないですから、それは本当に来たときに考えよう、くらいの気持ちでしたけど。

――プレミアリーグはずっと夢だと話していました。一方で、そのくらいシュツットガルトへの思いも強かったわけですね。

遠藤 そうですね。もちろんプレミアへの憧れはすごくありました。でも、同じくらいシュツットガルトでのキャリアに充実感がありました。キャプテンとして3シーズン目を迎えるところでもあったし、責任もあります。

 海外でキャプテンをするというのはなかなか経験できないことです。

 だからそういう(移籍の)話があれば、チームはきちんと選ぼうと思っていました。

 ただ……、リバプールはさすがに「行く」しか選択肢はなかったですよね。

――チャンピオンズリーグには出られないけど……

遠藤 リバプールですから(笑)。この年齢で、こんな世界的なクラブから「来てほしい」と言ってもらえて、プレーするチャンスがあるのに、「NO」という選択肢はなかったです。

 開幕直前だったからシュツットガルトも簡単に首を縦に振らないかもなという想像もしていたんですけど、快く送り出してくれました。

 そこはすごく感謝しているし、自分がやってきた4シーズンを評価してもらえたのかな、と思っています。

――移籍金含めて、シュツットガルトにとっては大きなものだったと思います。

遠藤 そうですね。僕を獲得したのに3ミリオンもかかってないはずだから……(笑)。

心打たれた18歳の選手からのメッセージ

――シュツットガルトのチームメイトたちの反応は?

遠藤 InstagramやWhatsAppでメッセージをもらいました。(原口)元気くんは「マジ? マジで来たの!?」って自分のことのように喜んでくれて。(伊藤)洋輝もメッセージをくれましたね。

 

――印象的な言葉はありましたか?

遠藤 ラウリン・ウルリッヒというドイツ人で、18歳の選手からもらったメッセージは嬉しかったですね。彼はこれからが楽しみな若いミッドフィルダーなんですけど、一緒に試合でプレーする機会はほとんどなかった選手です。

 そんな彼が「あなたから色んなことを学ばせてもらった、ありがとう」って連絡をくれました。

(何度もここで書いていますけど)僕はキャプテンとして、あまり言葉を発するタイプじゃない。だから若い選手ほど、接する機会も少なくなってしまう。

【遠藤航:「海外でキャプテンをやる難しさ」】

 姿勢で伝えていこう、というふうに考えて行動していたんですが、それが伝わっていたんだな、って感じられて……。

 他にも僕を見て、学んでくれたっていう選手たちの言葉がいくつかあって、なかなかチームは勝てなくて申し訳なかったですけど、少しはクラブに貢献できたのかなと思えましたね。

――いい話ですね。

遠藤 あとは「you deserve it」って、あなたはこのチーム(リバプール)に値する選手だ、それだけの活躍をしてきたよね、みたいに言ってくれる選手が多かったですよね。それは元気くんも言ってくれて、元気くんはドイツ語だったかな。

……「you deserve it」って日本語に訳すのが難しいんですけど……、伝わりますかね?(笑)

――伝わります。話は逸れますが、日本語に訳す難しさは、リバプール移籍後にも痛感したのでは?(笑)

遠藤 え?

――初めてスタメンで出たニューカッスル戦後、クロップ監督が遠藤選手に厳しい評価――酷評ともいえる言葉を発した、と日本で大きなニュースになりました。結局、誤訳だったということが分かったのですが……

遠藤 ああ、友人からそんな連絡が来ていました(笑)。

――もともとは「Metro」というイギリスのメディアがweb版で報じたものが切り取られていて、それを日本語訳をした「遠藤は何も分かっていない」というものがさまざまなメディアで……

遠藤 確かに、日本語でニュアンスを伝えるのは難しいですね。僕は全然、気にしていなかったですけど(笑)。

――そうなんですか。

遠藤 だって、僕は実際に監督(クロップ)と会っているわけなんで。たくさん話をしたわけじゃないですけど、試合後も一緒にいますし、それなのにいきなり批判をするわけがない、ってわかっていますから。

 それにある程度、英語は理解しています。(発言の)前後のニュアンスもあるだろうし……切り取られた部分だけをみたら批判に見えるのかもしれないですね。

 

フィットしていくのは当たり前、そこに加えて必要なものは…

――なるほど。ただ、これからは注目度の高いクラブで批判も付きまとうと思います。

遠藤 そういう反響の部分でビッグクラブにきたな、というのは感じています。こんなにも注目されることがなかったので……(笑)。

 でも、メディアにおけるそういうものは基本的に気にしていないです。メディアの人もビジネスのひとつなんでしょうし……まあ、でもサポーターのみなさんもあまりメディアに踊らされないようにしてください。

 これをメディアの人に向かって言うのは申し訳ないけど(笑)。

――ははは。とはいえ、リーグが変わり、実際に2試合プレーをしてみて、レベルにしろ、違う環境への適応にしろ、不安や変えなきゃいけないと感じることも多いのではないですか。...