吹奏楽部員たちが部活に燃える日々の中で、書き綴るノートやメモ、手紙、寄せ書き……それらの「言葉」をキーにした、吹奏楽コンクールに青春をかけたリアルストーリー。ひたむきな高校生の成長を追いかける。
第79回は常総学院高等学校(茨城県)#3
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スケジュール帳に書いた「全国!」の文字
2026年9月5日、東関東吹奏楽コンクール。
常総学院高校吹奏楽部の副部長でフルート担当の3年生、佐久間暖音(はるね)は宇都宮市文化会館の舞台裏に待機していた。もうすぐ表彰式が始まる。そうしたら舞台上に出て、部の代表として評価を受けるのだ。4年ぶりの全国大会出場がかかっている。心拍のテンポがどんどん上がっていた。
「私、緊張しすぎて立ってられなくなるかも……」
暖音が言うと、隣にいた同期の部長、コントラバス担当の添田空斗(そえたそらと)が「屈伸して体を動かしたらいいよ」と言った。言われたとおりやってみると、たしかに少し楽になった。
ステージには幕が下りていて、客席の様子は見えない。ざわめきだけが聞こえてくる。
役員にうながされ、ステージに出た。出場した24校が壇上にずらっと並ぶ。
(もう……後戻りはできないんだな……)
暖音がそう思ったとき、目の前の幕がゆっくりと上がり始めた——。
♪
暖音が吹奏楽を始めたのは小学校3年のときだった。母に「吹奏楽やってみる?」と勧められたのがきっかけだった。
中学に上がる直前、母が福島県の中学校に通っているときに全日本吹奏楽コンクールに出場したことがあると初めて知った。
暖音は「すごいな」とは思ったが、夢の世界の話のようだった。
しかし、中3のコンクールが茨城県大会銀賞で終わったとき、「もっと上の大会を目指してみたい。できることなら、私も全国大会へ……」と思うようになった。
そして、県内一の名門、常総学院高校吹奏楽部の門を叩いたのだった。
高1のときは星組(サポートメンバー)だったが、高2から全国大会を目指す雪組に入った。暖音にとって初めての東関東大会では代表に選ばれず、号泣した。3年生の先輩に「来年がんばれ」と声をかけられ、「言わせたくない言葉を言わせちゃったな……」と悔しさが残った。
3年生の先輩たちが引退したあと、暖音は副部長に選ばれた。みんなで決めた部の目標は全国大会金賞。さらに、2026年のスローガンを「改革 〜初心を忘れず成長過程を楽しんで〜」に決めた。難曲を前にして硬くなるのではなく、もっと楽しんで音楽づくりをしていこう、という思いを込めていた。
暖音はひとりのフルート奏者として、自分の演奏に課題を感じていた。コンクールのときもそうだったが、緊張するとつい力んでしまい、それがミスにつながったのだ。いつも部活で使っているメモ帳に、暖音は大きな文字でこう書きつけた。...
