吹奏楽部員たちが部活に燃える日々の中で、書き綴るノートやメモ、手紙、寄せ書き……それらの「言葉」をキーにした、吹奏楽コンクールに青春をかけたリアルストーリー。ひたむきな高校生の成長を追いかける。

第78回は常総学院高等学校(茨城県)#2

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「才能より努力」を実践する「ちびまる子ちゃん」

 「私にとって吹奏楽コンクールとは何かと聞かれたら、やっぱり『青春』だなぁ。

 もし吹奏楽部に入らなかったら、バイトをしたり友だちと遊んだりして、高校時代をエンジョイしていたかもしれない。でも、そういうのを我慢し、全日本吹奏楽コンクール出場という夢に向かってみんなでいっしょにがんばってきた。

 吹奏楽は運動部とは違って、はっきりと得点が入ったり、勝ち負けが決まったりするわけじゃない。目に見えない結果に向かって長い時間をかけて練習し、たった12分間の演奏に全身全霊をかける。

 そして、コンクールの結果がどうなったとしても、『いい演奏ができたよね』とみんなで思えることが素敵で——。

 そういう日々の連なりをひと言で表すなら、やっぱり『青春』だ」

 美憂はしみじみそう思う。

 常総学院高校吹奏楽部が長年大切にしてきたモットーは「才能より努力」だ。

 高3の鈴木美憂(みゆう)はその言葉は自分のためにあるのではないかと思う。自分には才能はない。でも、「人一倍の努力をした」と自信を持って言える。

 なにせ入部したときにはフルート奏者だったのに、高3のコンクールではオーボエとコールアングレでソロを吹くことになったのだから。

鈴木美憂さん(3年生・オーボエ、コールアングレ)

 美憂は小柄で顔が似ているからと、まわりから「ちびまる子ちゃん」と呼ばれることもある。フルート奏者としてやっていくつもりだったが、入部2週間ほどでオーボエに楽器転換(コンバート)された。同学年にオーボエが誰もいなかったからだ。顧問の本図智夫先生に音程感とフレーズ感のよさを見込まれての抜擢だった。

 楽器が変わると、ゼロからのスタートになってしまう。だが、美憂は「やってみたい!」と前向きに引き受けた。自宅は千葉県野田市。親が1時間半かけて送迎してくれていたが、その車内でオーボエを練習し続けた。

 最初のうちは成長曲線がグッと上がって楽しかった。しかし、ある程度までいくと伸び悩み、「これでいいのかな。どうしたらいいんだろう」と考え込むようになった。

 美憂はいくつもの壁にぶつかったが、最大の壁は高2のコンクールだった。...