日本サッカーの成長に必要なものを、世界で活躍するトッププレイヤーたちと議論しながら体系化していくピッチレベルラボ。メンバーである岩政大樹と遠藤航が、日本とドイツでの“組織的サッカー”の内実を語る。

0:01〜 ブンデスリーガでも通用する感覚
2:12〜 理想のボランチ像に近づいてきた
3:20〜 日独で異なる“組織的”の意味合い
7:07〜 ドイツでのより攻撃的な守備戦術
8:54〜 日本でも組織的サッカーは実現できるか

 

思ったよりもやれると思った瞬間

岩政大樹(以下、岩政) 前の対談の時(2019年6月)はまだベルギー時代でしたね。だいぶ色々なものが変わったのかな。特にあの頃は世界のトップレベルというものが手探りだった感じだと思いますけど、今はブンデス1部でもやれて、手応えとして色々なものが分かってきているところだと思うんですが、沢山聞きたいことがあるんですが、自分の思っていたトップクラスのブンデスというところでやってみて感覚としてはどうですか?

遠藤航(以下、遠藤) ブンデス初挑戦にしては、思った以上にやれているなという感覚が個人的にはあって、正直ブンデス1部に昇格が決まった時とか開幕前とかは自分がどれだけやれるのかとかは、映像で見るのと実際にやる感覚は全然違うだろうなとか、そういう感覚が個人的にはあったので。でも今半分終えて、チームとしても個人としても状態は良いし、個人的にも少しずつ成長しながらブンデス1部でもやれているなと思うので充実しています。

岩政 最初ある程度やれるなと思ったのは、ボールを取り切れるなという感覚が思っていたよりあったという感じですか?

遠藤 そうですね。守備のところで言うと1対1でボールを奪うところとか、攻撃に関してはプレッシャーある中でも間でボールを受けて縦につけられるとか。そこら辺の色々ポジショニングとか細かい部分も自分で変えながらですけど、まあ良くはなってきているなと思います。

岩政 イメージとしては、ベルギーでのポジションとか役割からだいぶ変わったというのはあると思いますけど、ご自身のプレースタイルみたいなところも自分が思い描いていたところにだいぶ近づいているのかなと思うんですが、それって変えてきたところももちろんあるんですよね。

遠藤 そうですね。やっとというか、ようやく自分の描いていた理想のボランチ像に近づいている感じはあるし、ベルギーリーグは結構特殊なリーグで前少しお話しましたけど、すごい個にフォーカスしているリーグというか、組織というよりはとにかく個の局面を多く作るみたいな。結構間延びしながら1対1勝負というのが結構多かったんですけど。ブンデスはより組織的に戦いつつ、1対1をどう上手く出していくかみたいな。そこら辺は僕にとってはすごいやりやすいなという風に思っていますね。

日独で異なる“組織的”の意味合い

岩政 その組織というところで行くと、僕は昔から日本が組織的と言われることに少し違和感があって、ドイツとか見ると、もっと全体が連動してボールを狩りに行ったりとか。そういうのを見ると、そっちの方が組織的に見えてて、日本は意外と個でやってて、みんなでイメージ合わせて取りに行くというのはあまり見えなかったりするんですけど。遠藤選手の感覚だとどうですか?

遠藤 そうですね、そこの感覚が違いますね。言われたようにブンデスの方がより組織的にボールを奪いに行く、ボールを奪うためにどう組織的にプレッシャーをかけるかみたいなイメージで。日本って組織的にやるというのはどちらかというと、ボールを奪いに行くよりは自陣に引いて守ることがイコール組織的に守っているみたいな、そういう感覚が個人的にはあるなって思っていて、たまにJリーグとか見ると、僕が当時Jリーグでやっていたときには全然思わなかったんですけど、ブンデス1部でやってからJリーグを見るとまだボールを奪いに行く守備というのはなかなか浸透してないなという感覚はありますね。

岩政 へー。それってどうなんですか、かと言って奪いに行こうぜと言っても奪いに行けるものではないじゃないですか。チームとして何をベースとして落とし込むかというのはあるんですか。

遠藤 今のシュツットガルトの監督は、そこら辺の戦術というか自分たちの目指すサッカー、特に守備ではどういう風にボールを奪うかということは本当に明確にしてて、相手によってもシステムを少し変えてやったりとか、そこのボールを奪う戦術の幅を今の監督は持っているなという印象ですね。

岩政 そうなるとベースとして、ボールに寄せ切ってというのもあるけども、チームとしての立ち位置の取り方もそれがしやすくなるようなものを毎試合用意しているということですよね。

遠藤 そうですね。だから最初から自分たちの立ち位置はある程度決まっていて、例えばゴールキックの時にどっちにボールを出させるかみたいなのが決まっていて、ボールが出たらプレッシャーを最初にかける選手が一人いて、その選手がプレッシャーをかけたらそのまま連動するみたいな。その辺は特に落とし日の戦術確認の練習をするときに毎回やりますね。

日本人の戦術理解度は優れている

岩政 そうするとさっきの戦術的なというところで行くと、ピッチ上の高い位置のところの話ですよね。あと、中盤とか後ろのゾーンとかも分けて話すんですか?

遠藤 そうですね、基本的には前からプレッシャーをかけたときと剝がされたときに後ろにどうブロックを引くかで。ブロックを引く話はそこまでしないですね。もうポジションで後ろ下がるときは5-3-2で守ってとか、普通に5-4-1なのか。そこはチームの戦術相手によって変えるだけで、基本的に前からどう行くかという話が8割9割ですね。

岩政 たしかに後ろブロック組んでシステムが定まっていたら、あとはもうベースのところをやるだけですもんね。

遠藤 そうですね。なので日本よりはブロック引いてどう守るかみたいなのはやっていないですね今のチームは。特にブロックを引いた中でもどうやってもう一回自分たちがもう一度自分たちがプレスをかけれる状況を作るかみたいな話をするし、ブロックを引いている中でもどこで自分たちがアクションを起こしてボールを奪いに行くのかという話も結構しますね。

岩政 そこはやっぱり自分たちなんですね。誰かが行って、その後ろがみたいなことが全体として組織立ってボールを狩りに行くってことですね。

遠藤 そうですね、なのでブロックを引いた中でも、より攻撃的な守備をドイツでは結構選択しながらやっていく感じですね。

岩政 遠藤選手はある程度日本ではどちらかというと、そういうことができる方というか元々やっていた方だから適応が早かったのかもしれないですけど、遠藤選手の感覚だと日本人もよく知っていますけど、日本人も組織立った中だったらそういうことができると感じます?

遠藤 そう思いますね。特に今は海外でやっている選手も多いと思いますし、日本人の戦術理解度というと、他の外国人に比べて優れていると個人的には思いますし。それをどうやって日本代表だったらそこで落とし込めるのかという。代表は代表で色んなチーム戦術を普段やっている選手が集まりながらやるので、一概にこれというものを探すというのはすごく難しいし、選手も色々試行錯誤しながらやっていると思いますけど、でも全然できなくはないと思っていますけど。


(※収録は2021年1月22日に行われました)