世の中にあふれるたくさんのデータに注目し、正しい意味や活用方法を、ジャーナリストの長野智子さんとともに検証していくコンテンツ『データの裏側』。

 今回は、毎月行なっている「データの裏側会議」の様子をご紹介。編集長の長野さんをはじめ編集部員たちは、どんなデータに疑問を持ち、検証を進めていくのだろう? 「なぜ変わる? ChatGPT使ったことがある人の数」「世論調査って本当に世論を反映してる?」など、巷にあふれる曖昧なデータに焦点を当てます!

文=シンクロナス編集部

ChatGPT使ったことある人は全体の約7割!?

編集長長野(以下、長野) さて、みなさん気になるデータはありましたか?

編集黒田(以下、黒田) ChatGPTが話題ですよね。実際、ホリエモンさんがChat GPTで9割作ったビジネス本を出版されたりして。

 それで、どのぐらいの人がChatGPTを使っているのかなと思って調べてみたんです。ひとつはITmedia NEWSの読者にアンケートを取ったデータで、なんと67%の人が使っている結果に。一方LINEリサーチのデータでは、使ったことがある人は4.8%だったんですね。

 

 ITmedia NEWSの読者は、デジタル情報に対して感度の高い人たちにアンケートを取っているので67%。一方、LINEリサーチの方は、Chat GPTを知らない人が7割だったんです。

 誰に調べたとかターゲットがどこにあるかとかを知らないで、ただ見出しやプレスリリースだけ見ると、完全に誤解をするというのが気になりましたね。

編集河西(以下、河西) 7割の人が使っている肌感覚はあまりないよね。

黒田 「使ったことがある?」というデータでしたね。

長野 だとしたら、私みたいにちょっと遊んでみた、という人も数に含まれてくるよね。そういえば、ChatGPTに「売れる本のタイトルは?」と質問してみたんだけど……。

黒田 それ、めちゃくちゃ知りたいんですけど……(笑)

長野 「短くて、わかりやすくて、直感性に訴える」とか、条件が出てきたかな。

黒田 僕は「データを知るときに重要な視点は?」と質問してみました。そしたら「平均値を見るだけではなく、中央値、標準、すべて見る必要があります」って。

長野 なるほどね。もう少し経ってから、「ChatGPTとデータ」をテーマに検証してみてもいいかもね!

日本は少子化でも世界は人口増! データは見えない真実って?

編集望月(以下、望月) では次に僕から。前回、日本の少子化についてのデータ(4月30日配信「親からの仕送りが少ない! 今月メディアを賑わせたデータは?」を見たと思うんですけど、一方でインドが世界一の人口になるというデータが、国連の世界人口基金(UNFPA)というところから出ていました。

 

 これは推計なので2023年半ばでインドの人口は中国を抜いて1位になっていきますよっていうデータなんです。中国は一時期一人っ子政策をやってきましたが、どうやらインドも人口抑制の動きがあったらしいんですけど。人口が多くなると、良い方向に向かうのか、悪い方向に行くのか……。

長野 データそのもの云々というよりは、数字を受けてこれからどうなっていくのか、ということだよね。

望月 そもそも人口が多かったらどうで、少なかったらどうということは、見出しだけでは分かりづらいなぁと思ったんです。

長野 日本の人口減少は労働力の減少と一緒なのでGDPも減る一方だし。

黒田 よく言われるのは、人口爆発の背景にあるのは平均寿命が延びたからだとか。良いことがある反面、そうじゃないこともあります。あとは、アフリカや中東に人口爆発が集中しているとか、複数のデータを組み合わせて見えてくることもありそうですよね。

長野 先日勉強した特殊出生率の話で、イスラエルが3.00という高い数字の記事が出ていたけれど、イスラエルとパレスチナの戦争で亡くなる子どもの数も多く、昔からの刷り込みもあって産まなきゃという思いもあるみたい。なので、3.00という数字は必ずしも幸福度を表してないと書いてあったの。

 その記事を読んだ時に、果たしてそのそれに対する解というか、減るとか増えるとか、人間としての幸福とか、ちょっとわかんないなと思って。

河西 国の経済力みたいな問題で語られることがすごく多いけど、世界的に見て増えているところがあって、減っているところがあって、実は世界のバランスがうまくとれたみたいなことはないのかなんて思ったりしましたが。

長野 世界の人口は増えているよね。そのバランスとるために減らしている国もあるとか。その摂理的な話になっちゃうと、もうこの番組のキャパ超えちゃうよね(笑)

黒田 組み合わせが一つのキーワードになる気がしますよね。その出生率だけとか、人口がこのぐらいの数字だとかだけじゃなくて、ほかの指標を持ってくることがありそうです。

 そうそう、イスラエルは体外受精が二人まで無料という政策もやっていますね。

長野 それはすごいね。日本でも異次元の少子化なら、それぐらいやってほしいな。仕事をたくさんして、そのお金で不妊治療をしろって言われても、なんだか矛盾しちゃうじゃない?

黒田 そうですよね……。

日本の小中高生の自殺が過去最多に

黒田 暗いテーマになるんですけど、子どもの自殺が過去最多になったデータがありますね。

 

長野 この数字はショックだよね。

黒田 小中高生の自殺で514人もいるなんて。その中に小学生もいるって……。

長野 こんなに少子化って子どもを一丁目一番地ってやっている一方で、こういう衝撃的なデータを見ると、何かが私たちはズレているのかなと思ってしまいますね……。

黒田 過去最多の514人が持つ意味は今みたいな印象を抱いてしまうけれど、実はデータの見え方を変えたら違った視点があるというものをピックした方がいいかも知れないですね。

統一地方選挙で女性議員が増加。政治を志す女性が増えている?

望月 統一地方選挙で、316人全当選者の14%女性の当選者の数が増えましたというデータを見ました。これは、政治家を志す女性たちが増えている指標として読み取っていいのか、気になりました。

 

長野 このテーマ、わたし的にはどストライク!

 でも、まだ14%だけどね。確かに候補者が増えたことによって、当選者が増える。今回の統一地方選挙は、能條桃子さんがやっている「FIFTYPROJECT」や、村上財団が支援している「パブリックリーダー塾」など、民間が女性の候補者を増やそうとがんばった選挙ではあったよね。だからそういった空気感ができてきてるのかな?

 でも望月くんの「この数字は、本当に政治を志す女性が増えてきている?」という問いかけは良いポイントだと思います!

河西 イメージとしては候補者は何%になると……みたいな数値目標はあるんですかね?

長野 一応30%。国会で言えば、候補者男女均等法が成立して、そこで、各党の候補者の中で30%は女性候補にしましょうね、という努力義務は課せられています。

 でも、全体の議会で何%かというはっきりと目標は出てないんだけど、これが30%ぐらい女性になると、女性の議員が象徴的な存在ではなくなる「クリティカル:マス(Critical Mass)」になるとはいわれているの。“女だから”とか言われなくて、当然みたいな空気感は、30%を超えると一般化してくる。

 女性の議員と男性の議員では、どうしても興味を持つ法案は違っていて、男性は経済・外交・安全保障、女性は子育てとか教育などに興味があるんだけど、女性議員が30%になると、それがなくなっていくんだって。女性の中からも安全保障に関心のある人が出てきたり。

黒田 その30%の裏側は知りたいですね。そういう事のためにジェンダーギャップ指数がでていたり、国連で男女平等の指数が出たりすると思うんですけど。

 ジェンダーギャップ指数で1位のアイスランドとかを考えると、数年前の選挙で議席が過半数女性になりかけて、ちょっと届かなかったようなんですけど。世界的に見ても女性の権利だったりとか、社会的指数が確保されて、結果それが本当に男女平等なのか?という見え方もあるような気がするので。

長野 男女平等は数字なのかっていう話もあるよね。

黒田 すごくそう思います。

河西 その統一地方選で、応援演説の時に岸田首相に爆弾が投げられたという事件があったと思うんですけど、僕が興味を持ったのはその後の内閣支持率なんです。

 これ読売新聞のデータなんですけど、事件が起きたのは4月25日。一気に好転しているんです。支持が47%、不支持が37%ということですね。

 

 内閣支持率について、メディアによってもだいぶ数字が違うんじゃないか?という話はこの会議で今までもあったと思うんですけど、こういう事件で一瞬にして数字が変わってしまうものは危ないですよね。

黒田 これは世論調査なんですもんね。

河西 各社で毎月取っていると思う。その調査方法は揉んだ方がいいと思うけど。

メディアによって数字が変わる? 気になる世論調査の裏側

長野 いつも思うのだけど、新しい法案に対してとっている世論調査もあるけど、「内閣支持率」は何を支持しているんだろう?

 今回も岸田さんが爆弾を投げこまれてしまったことで、支持率が上がることがあるんですよね。今推し進める少子化対策が、急に支持を受けたわけではないわけですよね。

黒田 政策への評価ではない上がり方をしているように見えますよね。

長野 使いかたによっては、それも含めて支持率上がっているみたいなことにもなりかねない。私も結構伝えてきたんだけど、どこまで本当のことなのかな?感はある。

黒田 でも確かに議員の方に話を聞くと、めちゃくちゃ気にされていますね。

長野 10%を切ると、もう完全に危ないっていいますよね。

河西 メディアによって数字の差が出てきているのは、みんながわかっているとところではあるんですけど、その差は何なんだろう?

長野 たしかに読売系は高くて、朝日系が低い的な。恣意的な調査をしているのかしら?

黒田 メディアによって増減があるって世論調査感はないですよね。世論を調査しているというより、自分たちの読者ターゲット調査みたいな雰囲気がしますよね。

望月 何%っていうと根拠として強そうなイメージなんですけど、どれほど正確な数字なのか、そして政治に対してリテラシーが高い人がどれだけいる中で、内閣を評価しているのか気になりますね。

黒田 4月時点で、朝日新聞の内閣支持率は支持するは38%で、支持しないが45%です。一方、読売は支持が47%で支持するが37%ですからね。

 

長野 また、どのような聞き方をしているのか、ですよね。

黒田 全部出ています。俗に言うRDD方式ですね。無作為抽出した番号にかけていく。なので、朝日新聞の購読者だけではないはずですね。それなのに、どうしてこんなに変わるのか不思議ですよね。

河西 新聞特有の質問の仕方があるんじゃないかと思ってしまうよね。

黒田 聞けば聞くほど、データの取り方としては難しいものかもしれないですね。こういう調査ってやっぱり未回答とか、有効回答数のパーセンテージが少ない調査は、全体を表している調査ではないと、社会統計学的には言われるので。

 1万人取ってそのうち1000人が答えて、その10%ではほとんど意味ないですよね、9000人が答えてないんだから。そういうのもわからないまま僕らは見ている可能性があるので、ちょっとこれ調べたいですね。

長野 きちんとここで、世論調査について押さえとおくっていうのがいいかもしれない。

黒田 政治家も方は気にしていて、我々はスルーしている。

長野 私、伝えているのに、何だかちゃんとわかってないっていうのはよくないですね。

河西 友達に世論調査くる?と聞くと、だいたい、ないんですよ。だって僕ら日中仕事していて電話に出られないから。となると、電話に出られる人って決まってない?と想像してしまうけど。

黒田 僕、着信受けたことはありますよ。あとで調べたら世論調査に使われる番号でした。

河西 すごい根本的な質問ですけど、有効回答数って答えた人の人数だと思っていいんですか?  例えば電話に出ただけとか、途中でやめちゃった人は入れない?

望月 確かに!

河西 質問内容も聞きたいですね。

長野 朝日と読売とでこれだけ違ってくるということは、質問の仕方も各社によって違うのかしら?

  あと、そもそも調べた人数が日本国民の意見をちゃんと代表している指標があるのかな? テレビの視聴率は統計学に則ってやっていると聞いたことがあるけれど。

黒田 統計的に正しいのか?は必要ですよね。でも、正しくなかったら凹みません?

河西 正しい、正しくないかってことが話題になるとすれば、それは何のために世論調査が始まったのか、気になりますよね。

長野 そもそもの始まりと、もしかしたら今は意味合いが変わってきちゃっているのかも。見出しを取りたいがために、やっているかもしれない。

望月 海外ではどうしているのかも、気になりますよね。

長野 大統領選挙とかね。私も取材したけど、ずっと当てたところが外したりとか、結構困ってきているという話も聞いたりする。

黒田 社会調査として正しい方法で分析しようとすると、どっちにしても世論調査って不可能なんじゃないかなと思います。だって、国民全員に同じ質問ができればベストなわけじゃないですか。でもそれは無理だから、無作為抽出をしている。でもその抽出するときの作業を均等にあるっていうところで、まあ分布を作るわけですけど、作りづらいですよね。

長野 少なくとも有線電話の場合は、本当に高齢の方の可能性が高いですよね。だって今若い人だって有線電話は持ってないでしょ?

望月 そうですね。僕は携帯だけですね。

長野 今の世の中のメディアの現状が、世論調査をしづらいんじゃないかな? ほらマンションはオートロックになったりしていて。昔なんかピンポン来たじゃない?

河西 確かに、昔は面談して調査を取っていたみたいですね。

長野 この時代にインターネットを使わないで、あくまでもRDDとか電話を使っているわけでしょ?

河西 電話に出やすい人でにくい人で、性格の差もすごいありそうですよね。そんな人たちに国家機密法のアンケートなんて取ったら、結果は全然変わっちゃうよね。

黒田 電話で答えないですもんね。例え突然電話がかかってきて朝日新聞ですけど答えてもらえますかって言われたら、「ちょっと忙しいから後でもいいですか?」ってなりますよ。

河西 「本当に朝日新聞ですか?」話から始まるね。

長野 私なんか母に「知らない人の電話には絶対に答えちゃだめ」って言ってたからね。

望月 知らない番号からの電話、出ないですよね。

長野 ちょっと前に不正調査のニュースもあったよね。
世論調査のデータの裏側、ぜひ取材しましょう!

「世論調査のデータの裏側」前編はこちら👉【世論調査】メディアによって内閣支持率が変わる、これって日本だけ?(動画)

「世論調査のデータの裏側」後編はこちら👉【容認する?】知らない間に「回答」が誘導される「世論調査」の全貌

この記事を動画で見る👉「【編集会議】「政治家を志す女性が増えている?」今月「メディア」を賑わせたデータは?」