自己肯定感が低く、モヤモヤを抱えるエディター澤田が「私のままでいい」「今が幸せ」と言えるようになるべく、自己肯定感を回復させることに成功した人物の話を聞く本連載。
 自覚しにくいタイプの毒親を持ち、子どもの頃から自己肯定感が低かったフリーエディターMさん。後編では、Mさんが自己肯定感を回復させるために実践し、効果があった方法を教えていただきました。

文=松倉和華子

※写真はイメージです  PeopleImages/Getty Images

カンセリングで自己肯定感回復を目指す

エディター澤田:お母さんの影響で自己肯定感が低かったそうですが、そこからどうやって脱したんですか?

Mさん:「この人だ!」と思う彼ともまたうまくいかず、当時は精神状態が良くない状態だったので、藁にもすがるつもりでまずカウンセリングへ行きました。

 家族の話ってとても繊細で、普段親身になって相談に乗ってくれる友人でも、「そんなこと言ったらお母さんがかわいそうだよ」とか「あなたのこと心配して言ってくれてるんだから、あなたが大人になりなさい」とか言われるのがオチ。

 とにかく私の辛さや悩みを否定せず、共感してくれる人と話がしたくって。そこでうちの母が毒親レベル10段階のうち9以上だということを知り、「自分だけが悪いわけではなかったんだ」と気付けたことは大きかったですね。そこからはたくさん本を読んで、さまざまなワークを試しました。

ワーク1:自分のいいところを100個、紙に書き出す

Mさん:いろんな本にある「自分のいいところ、ポジティブなことを書き出す」を試しました。当時、婚活で別れを重ねて、自分を否定された気分になっていたので、自分自身で自分を肯定してあげたかったんです。

 性格から見た目、今までやってきたことや人から褒められたこと、その他にも思い当たる自分のいいところを「100個、書くぞ」と決めて、とにかく書き出していきました。

ワーク2:自分を肯定してくれる本を読み漁る

Mさん:自分の価値観を否定しない本をたくさん読みました。ホリエモンさんや勝間和代さんの本が好きだったので、昔の本からもう一度読み返したり。

 今まで就職しない、結婚してない、正社員じゃない、など世間で言われる優等生のレールから外れた生き方をしてきたので、型にはまらない生き方をする人を肯定する内容に勇気づけられました。

ワーク3:毎日瞑想し、ひたすら自分と向き合う

Mさん:寝る前の20分と決めて瞑想を日課にしました。自分の中の気持ちや声に耳を傾け、自分の子ども時代の環境を見つめ直したことで、私自身も母親がすべてになっていたことを自覚しました。

 そこから自分と母を切り離して、「母に褒められるから」「母に認めてもらうために」ではなく、“本当に自分が好きなことは?”、“本当に自分がいいと思うものは?”と考えられるようになりました。初めの2ヶ月間は瞑想するたびに泣きっぱなしでしたが、そこから理想の生活や自分がやりたいことが見えてきました。

※写真はイメージです Patrick Chu/Getty Images

ワーク4:母親に今までの気持ちを伝えた

Mさん:実家に帰ったとき、母親に今までどう思っていたか、母に言われたことで傷付いてきたこと、どうして欲しかったかを直接伝えました。そして「お母さんにも本を渡すから、これを読んで考えて欲しい」って毒親の本を勧めて。でも母は何も聞こえないフリをしてました。

 その後に帰省した時にも、変わらず前にように接してきたので、そこで私の心の蓋がパカッと開いてしまい「もういい加減にしろ! 私の人生をどこまでコントロールすれば気が済むんだ!」って泣きじゃくっブチギレました(笑)。

 これも毒親の特徴のらしいんですが、子どもの言うことに基本的に耳を貸さないというのがあります。そして家の中をひっくり返すくらい大暴れしてやっと子どもの言うことに耳を貸す、気付くというのはよくあるらしいです。私もこの二段階を経てようやく思っていたことを伝えられました。

ワーク5:仕事量を減らす

Mさん:それまで生活の9割を費やしてきた仕事を減らしました。とにかく忙しかったので、やりたいことが出てきても、忙しさでかき消されてしまっていた。

 仕事は唯一、自分を肯定できていたものだけれど、肯定感を上げるためには仕事でなくてもいいことに気づいたからです。自分がやりたいことを優先して行えるように、仕事をセーブしました。

ワーク6:都内から郊外へ引越し

Mさん:仕事をスローペースにしたし、コロナ禍になったので、タイミングよく引っ越しできたんですが、それも自分を取り戻すいい機会になりました。

 これは私の見解ですが、東京という場所は時の流れも仕事の流れも早いし、人との出会いが多い分、すごい人もたくさんいるんですよね。そういうスピード感で人々と日々会うことで自分を見失ってしまったり、劣等感が刺激されてしまう人は少なくないと思います。

ワーク7:やりたいことを片っ端からやる

Mさん:瞑想する中で出てきたやりたいことを紙に書き出して、片っ端からやりました。具体的には、都内から郊外への引越し、陶芸、猫との暮らし、サーフィンや畑仕事などですね。

 新しいことを始めると、新しい人脈ができるとともに、自分自身に対しても新しい発見があるんです。仕事柄、人を褒めることは多いけど、人から褒められることはほぼないので、例えば陶芸をしていて、隣の席のおじいちゃんから「すごく上手!  あんた才能あるよ、これから楽しみだね」なんて褒められた日には、肯定感爆上がりです(笑)。

 自分主体でやりたいと思ったことをやることで、幸せを感じられるようになっていったと思います。この感覚は、同じ日々の繰り返しでは気付けなかったかもしれません。

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ワーク8:スマホの中を断捨離し、SNSも自分主体に

Mさん:今の自分に必要がないと思う物や人は断捨離しました。主に連絡先やLINE、昔の写真、インスタグラムの整理などですね。シンプルに自分がいい、必要と思える人だけを身の回りに残したくって、自分の感情を乱してくるなと感じる人はブロックしたり。

 仕事の付き合いでフォローしていたインスタもフォローを外したり、自分がモヤモヤするものや情報が入ってくるところは強制終了しました。その中で離れていく人がいても「今は波長やタイミングが違ったな」と思って終わりです。

 お互いに必要であればまたそのタイミングで繋がりますから。そうしたら今までは見る用のアカウントのつもりだったインスタに、自然と自分主体で投稿できるようになりました。

ワーク9:人と比べるのを止め、人の目を気にしなくなった

Mさん:今までは自分と人とを比べて自分が幸せかどうか考えてしまっていたんですが、それを一切しなくなりました。

 “結婚していない=ヤバイ”という価値観も親や社会によって刷り込まれたものなのに、つい自分もその価値観に囚われて「マズイ!」と思うようになっていた。そこから自分が逸脱していると感じて、辛かっただけだったんですよね。

 1〜8のワークを通して、最終的にたどり着いたのが、一番幸せになる方法は、人と比べないことだとわかりました。

自己肯定感が回復した今は「毎日が幸せで仕方ない」

エディター澤田:今は自分についての捉え方も変わりましたか?

Mさん:はい。これらの行動を経て、自分にフォーカスできるようになったし、自己肯定感が回復したことでありのままの自分を直視して、正面から受け入れられるようになりました。

 今までは人より「足りていない」と感じていた自分ですが、今は「ない」ということがどれだけ自由であるか、その素晴らしさに気付けました。

 フリーランスという仕事に対しても前なら「仕事がなくなったらヤバイ」って思っていたけど、今は「仕事がなかったら好きなことができる、最高!」って思える。相変わらずないものは変わらないのに、ポジティブに考えられるようになりました。

※写真はイメージです PeopleImages/Getty Images

エディター澤田:そこからお母さんとの関係に変化はありましたか?

Mさん:変わりました。母も前に比べて何も言わなくなりましたし、私も母に優しくできるようになりました。私が何を言われてもブレなくなったし、乱されなくなった。それによって、母自体のことも受け入れられるようになりました。

 肯定とは、ありのままでいいと思うことなんですが、母に対しても基本的に「変わらないだろうな」と。また毒親の本にあったんですが、毒親は遺伝することが多く、母の母親であり私のおばあちゃんは、もっとわかりやすい毒親だったんです(笑)。

 なので、母も同じくらい苦しんだだろうし、「母もずっと一人の人間として、母親に認めてもらいたいんだろうな」と思います。今は「お母さんの娘であることは、私が地球に生まれてきた試練のひとつかな(笑)」くらいに流せるようになりました。

エディター澤田:だいぶ心持ちが変わったんですね!

Mさん:そう、要するに人生を自分軸にしたことで心に余裕が生まれたんだと思います。人が持っているものがなくても幸せと思える瞬間が増えたし、今は毎日幸せ過ぎてヤバイくらい(笑)。

 自己肯定感が低く、焦っていた30代後半は「結婚しないとヤバイよ」とか「独りでいるのはマズイ」とか、そうやって私の心を乱すことを言う人や物事を引き寄せていたようにすら感じます。

 でも自己肯定感が回復して40代を迎えた今は、ネガティブなことをいう人はまわりにいなくなりましたし、なんなら言われていても気付かなくなったのかも(笑)。

エディター澤田:それが最強のメンタルですね。

Mさん:そうそう(笑)。でもこればっかりは自分で気付かないといけないし、自分を認めて幸せになるのは、自分にしかできないことだと思うんです。自分を守るのも、自分を認めるのも、自分を幸せにするのも自分しかいないと自覚したことで、今は日々幸せを感じています。

エディター澤田:最高ですね!ありがとうございます。