KAAT 神奈川芸術劇場で『Love Beyond(Act of Remembrance)』を観てきました。
手話(英国手話)と話し言葉(英語)で演じられる演劇作品で、アーティストの意向により日本語字幕はついていません。言葉がわからなくても、むしろわからないからこそ生まれる、素晴らしい鑑賞体験でした。
耳が聞こえないハリーと、手話がわからないメイ。互いの言葉が通じないなかで懸命に伝え合おうとする姿を見ていると、観客である私たちも、彼らの語る物語をどうにか理解しようとするようになっていきます。
舞台奥に並ぶ揺らめく鏡には、曖昧になっていくハリーの記憶が映し出され、ミステリアスで幻想的な雰囲気。記憶だけでなく、徐々に手話さえも忘れて混乱に陥っていくハリーの姿は、胸に迫るものがあります。時折入るBGM(効果音?)も振動として伝わってきて、全身で物語の中へ入り込むようでした。
作・主演のラメシュ・メイヤッパンさん自身もろう者の方だそうで、観客席にも上演直前まで手話でお話しされている方がたくさんいました。終演後は、手を叩いて音を出す拍手と、両手を掲げて揺らす手話による拍手が同時に広がり、普段あまり見られない光景なので強く印象に残りました。
聞こえない人も聞こえる人も、異なる状況にある人がそれぞれの形で、同じ物語を一緒に楽しめること。私自身、シンクロナスでコンテンツを作っていく上で、とても刺激を受けました。
シンクロナスでは、テキスト・映像・音声など、さまざまな媒体でコンテンツを配信しています。アクセシビリティの観点では、まだ完璧とは言えないかもしれません。それでも、今回の舞台で得た視点を今後も忘れずに努めたいと思います。
(編集・谷本)
