渡部陽一が撮ってきた「戦場の写真」をベースに、争いの背景、現実とその地域の魅力について解説するコンテンツ、渡部陽一【1000枚の「戦場」】。今回は特別に、渡部氏の仕事部屋からリポート。取材先で読んで、人生に強く影響を受けた4冊の本とは?

文=シンクロナス編集部

 こんにちは。戦場カメラマンの渡部陽一です。今日は僕の仕事部屋から、ご報告させていただきます。

 僕のうしろに様々な本や資料が並んでいます。今まで取材してきた写真や、掲載された雑誌、さらに印象に残った書籍を選抜して、ここに入れてあるんです。

 

 取材資料はもちろん入れてあるんですけど、僕の仕事で一番大切なことは戦場でひたすら待つこと。そして、移動することを待つ、情勢が動くことを待つ間、日本から持ってきた本を読むことが、取材先での楽しみなんです。

 そんな取材先で読んだ本の中でも、僕自身に大きな力を与えてくれた本は、今でも大切に持っているんです。今日は、その書籍の中からいくつかご紹介したいと思います。

 とても印象に残った本のひとつめがこちら。
ジョン・スタインベックの『怒りの葡萄(上)』(新潮文庫)

 

 アメリカ大陸のゴールドラッシュの時期を描いたもので、まさにサバイバルそのもの。アメリカの開拓、人が生きていく上での尊厳、誇り、そして家族のつながり、命を賭けた日々が強烈に描かれています。この本を戦場で読み、深く、僕に影響を与えたんです。

 さらに、特に20代影響を受けたものは、
アレクサンドル・デュマの『モンテ・クリスト伯』(岩波文庫)

 

 日本では「巌窟王」とも呼ばれているモンテ・クリスト伯です。エドモン・ダンテスという主人公が、フランス南部の島に閉じ込められてしまい、そこから復活していくストーリー。まさに苦しみから、自分の人生を切り開いていく。そんな勇気と希望を与えてくれた本なんです。

 そしてもう一つやっぱり強く印象に残ったのが、
ロジェ・マルタン・デュ・ガール著の『チボー家の人々 灰色のノート』(白水Uブックス)

 

 ヨーロッパの第一次大戦期に、自由な暮らしを求めている若者たちが描かれています。封建体制の国々に対して、若者たちがどんな思いを持って、連帯を組みながら生活を整え、国というものを変えていきたいか……思いが残っているんです。

 家の中に何冊もいろいろな本があるんですけど、やはり駆け出しのカメラマンだった20代の頃に読んだ本というものが、強く印象に残っています。

 『モンテ・クリスト伯』だったり、『怒りの葡萄』であったり、『チボー家の人々』。いろいろな本があるんですけど、特にこの三冊は、今でも時間が許す時に、ちょこちょこページをめくることがあります。

 あっ! これは外せない、もう一冊ありました!
アイザック・ディネーセン著の『アフリカの日々』(晶文社)。英語名では『Out of Africa』です。

 

 アフリカ・ケニアでコーヒー農園を営んでいたデンマークの女性のアフリカでの経験を描いた作品で、メリル・ストリープとロバート・レッドフォードが出演した映画『愛と哀しみの果て』にもなっています。この本はアフリカ取材中に何度読み返したことか……。忘れられない勇気の一冊です。

 今日は、戦場カメラマンの仕事部屋から、僕の人生を変えた大切な本をご紹介させていただきました。僕の仕事部屋からのご報告でした。

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