起業、独立、複業など「自分軸」に沿った選択をすることで、より理想にフィットした働き方を手に入れようとした女性たちの連載「INDEPENDENT WOMAN!」。副業可能な化粧品メーカーに勤める長﨑範子さん。本業と副業、どちらにもWin-Winをもたらす長﨑さん流、こだわりのメソッドとは? 「楽しさ」をモットーに、自分らしい理想的な働き方をかなえた副業ストーリー後編。

文=小嶋多恵子 写真=小嶋淑子

長﨑範子 株式会社DECENCIA 商品PR担当
1984年5月11日生まれ。2003年に都内を中心に展開する大手美容院に就職。その後、メディアリレーションズとして2008年株式会社ネタもと、2012年株式会社ベンチャー広報にて経験を積む。2019年から株式会社DECENCIAの広報活動を担当。商品、企業ストーリーに共感し2020年1月より株式会社DECENCIAへ転職。現在は商品PRとしてディセンシアのブランドや商品認知度を高める業務に従事。また商品PRへの異動をきっかけに2020年3月より副業を開始。業務内容は医療法人社団の採用ブランディング、IT企業の広報、ライフスタイルブランドの広報アドバイスなど多岐にわたる。

広報のスキルを活かせないのはもったいない

 株式会社DECENCIAはポーラ・オルビスHDの企業で、グループ一同副業が認められている。長﨑さんも商品PRへの異動をきっかけに2020年3月から副業を受けるように。

 副業の申請をおこなうたびに上司からは「面白そう、無理なく頑張って」とエールを送られることもあるという社風だ。

「ディセンシアは中途採用のメンバーがほとんどです。社員の多くがスペシャリティを持っている。なので、私に限った話ではなく、副業の相談がくることは想像に難くない。多様な経験を通じて成長することを支援してくれる、非常に恵まれた環境だと思います」

 商品PRに異動し、広報という仕事が急になくなるのは怖かったと長﨑さん。

「10年以上培った広報のスキルや経験があるのに使わないのはもったいないと思っていました。積極的に副業をしたいと思っていたわけではありませんが、知人から『手伝ってほしい』と相談を受けて、無理のない程度に受けていこうと考えました。広報の勘が失われることもないし、役立つこともできる」

 そう話す長﨑さんは自身で副業との向き合い方、時短だからこそのポリシーやルールを決めている。

①できる限界を事前に伝える

「副業に充てる時間は、ひとつの案件に対して月4~6時間程度として考えています。

 日曜は完全にオフにしたいので、やるとしたら平日夜と土曜日の午前中くらいしかない。どれだけ自分に余った時間があるかを考えて、その中でできるなら引き受ける、という感じです。今は数社担当していて、一日平均して30分、週に4時間程度働いて完結していますね」

②本業と副業の連絡は混ぜない

「副業先のクライアントには、本業の業務時間中は連絡しない、業務時間外でお願いしたいと契約前にあらかじめ伝えていて、それを了承いただいた企業とだけお取引をしています。業務連絡は就業前後、昼休みにまとめてします。どうしてもという時は有給や長期休暇を利用、本業には絶対に支障をきたしません」

③本業第一! 仕事の中心にはディセンシア

「お給料をいただいていて、すごく恵まれた環境を提供してくれている勤め先が一番大事です。平日勤務時間はディセンシアだけとスパッと切り分けて。会社員なので、副業は副業と割り切る気持ちが大切です」

④仕事のパートナーの確保

「副業は無理をしない、日中に作業が発生するケースも想定してパートナーを確保しておくことも大事。

 一緒に仕事を請け負ってくれるフリーランス広報のパートナーがいるのですが、パートナーも直接クライアントと契約してプロジェクトに入ってもらう形をとっています。本業勤務時間中の連絡や時間のかかる案件などはその方に頼んでおけるという体制をつくっているので、本業に集中しながら副業の結果も残せます」

⑤担当しきれない案件は積極的に回していく

「副業のお取引先は、長年知り合いだった方がほとんどです。仕事を頼みたいんだけど、という依頼ではなくて、気軽な近況報告がてら会って、相談を聞いているうちに仕事になっていくことが多い。

 案件によって、私よりもっと最適な人がいたら積極的にご紹介しています。案件ごとに誰と組むか、チーム編成が可能なことも副業の醍醐味です」

⑥ワクワクする仕事かどうか「ときめき」を大事に

「平日の疲れている時間に副業の仕事ができるかどうか、と想像することも大切です。当然やるのは本業が終わったあとですし、そうなるとめちゃくちゃ疲れてるじゃないですか。そこに仕事へのときめきがないとやる気が出なくて、何のために仕事してるんだっけ?と。

 疲れている時でもモチベーションが上がる仕事を選んでいます。よく社内でもニコニコしているね、とかハッピーオーラが漂っていると言われるんですが、単純に好きなものに囲まれて生活しているから、心が健康なんです(笑)」

 
長﨑さんが副業として広報のアドバイスを担当するサスティナブルブランド「aloof home」。天然繊維で作られた衣類を販売、回収し、その後は農園に埋めて土に還し、野菜を育てるという循環型プラットフォーム。(上)和紙デニム ジャケット ホワイト¥26,400~44,000(下)和紙天竺ダブルレイヤードショートスリーブTシャツ オフホワイト¥11,800~19,800 https://aloof-home.com/

 

副業、時短でも圧倒的な成果を出す

 本業にも副業にも迷惑をかけない、細やかな気遣いとアイデアがあるからこそスムーズに回っている。さらに副業においては、割ける時間が限られているため、顧客満足度が大前提としてあると長﨑さん。

「広報のアドバイザーとしてお引き受けする場合、先方が1週間悩んだり、時間をかけて調べたりするものを、極端な話、1時間の対話で解決できるような成果が出せるかどうか。短い時間の関わりでも先方に圧倒的なメリットが生じるようなアウトプットを心がけています。この駆け引きと調整ができるのは、前職のコンサルティングワークのおかげです(笑)」

会社員でいるからこそ学び続けられる

 独自のキャリア、ポリシーのもと副業は順風満帆。収入面も充実し、経済的なストレスもないと話す長﨑さん、周囲から「独立は?」と聞かれることも多いそうだが、あり得ないと首を振る。

「その考えは今のところ100%ないです。なぜなら独立すると、いまの知識量だけで戦っていかないといけない。するとどこかでまた学びを必要とする時期がくる。会社員でいれば収入を得ながら学び続けられるし、それを副業で実践して、さらに本業に還元することができる。会社という存在があるからこそ成長できるんです」

 そのためか、「感謝」という言葉をたびたび口にする。自信と謙虚さ、そのバランス感覚がさらに成長を促す理由だろう。広報に携わることのよろこびをいまも感じながらも、その向き合い方に変化が。

「報道や広告を見て商品を購入した、採用に応募したなど、広報やPRの取り組みが課題の解決、援助につながった時はとてもうれしいです。それは昔から変わらない。でもいまは正直、広報へのこだわりがなくなってきているなと感じています。

 取引先によっての悩みや経営課題をどう解決するか。最近はマーケティングの勉強をしたり、広報ではないことにも積極的にチャレンジしています。マーケティングの知識と経験を増やして、広報PR×マーケティングの領域を深めたいんです」

揺らぐ時代こそ確かなのは「人」との繋がり

 SNSの台頭など時代とともに揺らぐメディアの存在、世代間ギャップなど広報の存り方はより複雑さを増している。

「メディアの範囲がものすごく広くなってしまった、かつて美容院にいた頃のような“ここに露出すればヒットする”といった確実性がない、いまは広報の在り方もむずかしくなったなと思いますね。どうしたらこのブランド、商品が伝わるのか、正解がわかりにくく複雑になっています。

 ただ、むずかしくなったからこそ人と会うことをより大切にしたいんです。人に会って、直接想いを伝えられる場面をどれだけ創出できるかを常に心がけています。これって最終的にAIにはできないことじゃないですか(笑)。人との繋がりを保つことだけは愚直に続けていきたいです」

 最後に長﨑さんにとって成功とは?を聞くと、「楽しいこと」と笑顔で返ってきた。

「どんなに悲しいことが起こったとしても、アイデアとユーモアがあれば切り抜けられるというのがこれまでの人生経験で感じてきたこと。『絶対そんなことできない』と言われた時ほど『チャンスしかない!』と燃えるタイプ(笑)。自分が何が楽しくて、どういったことに幸せを感じるのか、常に心が満たされている感覚を持ち続けることが大切なんじゃないかなと思っています」

 

長﨑範子さんてこんな人!ご本人のリアルに迫る一問一答。

――仕事における座右の銘は?

誠実であること。好きなことをとことん追求する。
直感に頼りすぎず、でも違和感という感覚も大事に。

――耳を傾けてよかった、人からのアドバイスは?

一瞬の感情で人を判断しない。

――仕事をする上でゆずれないことは?

限界を自分で決めない。
絶対という感情にこだわらないこと、素直に受け入れることを心がけています。

――大変な時に助けられた人やものは?

夫と娘たち。友人。今は亡き愛犬。ディセンシアのスキンケア。

――自分の強みは?

受け入れてやってみること。
言葉にならない言いたいことや伝えたいメッセージをキャッチする力。

――逆に直したいところは?

できることとできないことの落差を縮めたい。

――副業を始めたことで得た気づきは?

正解も不正解もないこと。
自分のスキルを過信するのもよくないけど、悲観的になりすぎることもない。

――副業をすることで犠牲になったことは?

家族団欒の時間。
時間は多少減りましたが、その分料理を時短するなどしてリカバリーしています。

――悩みの種は?

健康面。
最近、持病がわかったので体を整えたりケアすることに注力しています。

――ストレス解消法は?

寝る前のドラマ鑑賞。

――毎日必ずやることは?

SNSや報道のチェック。

――自分らしさを失わないために意識していることは?

家族との時間を大切にする。
日々のスキンケアで肌を整える。
ヘアメイクやファッションすべて、好きな服、装いでいること。

――落ち込んだ時の対処法は?

スキンケアをより丁寧に。
元気になれるお決まりのドラマ、映画、本を見る。
おいしいものを食べたり、自然に触れる。

――副業をしたい人へのアドバイスは?

副業先との提供業務はしっかりと確認を。
本業を第一に考え行動する。

―どんな世の中になってほしい?

どんな年代の人でも楽しくやりがいをもって生活ができること。
子供たちが夢や希望を持つことができる社会であってほしいです。

副業を始める前後の環境や気持ちの変化をチャートで分析!

 

「副業という形で広報の仕事が復活したことで新しい出会いも増え、精神的充実度は上がりました。時間的な余裕も、無駄な時間がなくなり、タイムマネージメント力が向上。

 収入面は、副業での収入が増えたことで、最小労働で最大効果を生み出せているなととても満足しています。お金に関するストレスがなくなりましたね。

 もうひとつ、副業で得たのは行動範囲の広さ。子供が小さかったので出張はNGとしていたのですが、それもようやく解禁。本業では行けない場所に行けますし、楽しく仕事をこなしながらひとりリフレッシュする時間を満喫しています(笑)」