Photo=Mananya Kaewthawee

文=小嶋多恵子 写真=小嶋淑子

 妊娠や出産、子育てなど、さまざまなライフステージと共に揺らぐ、働くことへの価値観――。社会の変化も大きく、既存のロールモデルが通用しない時代に、自分らしい働き方とは何か? 悩みながらも起業、独立、複業(複数の仕事を持つこと)などを選択することで、より理想にフィットした働き方を手に入れようとした女性たちの等身大なストーリーを追う。

 そもそも、現在の女性を取り巻く「働く環境」はどうなっているのだろうか。連載スタートにあたり、女性のキャリアコンサルティングをおこなう〈Waris〉代表取締役・田中美和さんと女性起業家を支援する〈女性社長.net〉代表・横田響子さんにお話をうかがった。副業、フリーランス、起業、かつてないほどに目まぐるしく変わる世の中と呼応するように加速する働き方の多様化。そんな働く女性のリアルとは?

田中美和 株式会社Waris代表取締役/共同創業者 1978生まれ。国家資格キャリアコンサルタント。2001年日経ホーム出版社(現日経BP社)に入社、働く女性向け情報誌「日経ウーマン」で編集記者として勤務した後、女性が自分らしく前向きに働き続けるサポートをおこなうべく2012年退社。2013年株式会社Warisを設立。2017年フリーランスとして働きたい人のための環境整備や政策提言をおこなう一般社団法人「プロフェッショナル&パラレルキャリア フリーランス協会」の立ち上げに参加。
 

変わるスタンダード「条件軸」より「自分軸」へ

――働く女性の悩みや考え方は、ここ数年で変化はありますか?

田中:〈Waris〉に女性を対象としたオンラインのキャリアカウンセリングサービスがありますが、利用される方が近年非常に増えています。特にコロナ禍になってからはより顕著で、カウンセリングの予約件数は前年の同時期に比べて約4倍になるほどです。

 その背景にあるのはコロナ禍で一変した働き方。リモートワークが広まり、自分と向き合う時間が増えたことで、働くことへの価値観を見直す機会ができたことが理由として大きい。ご相談の内容もこれまでの年収やポジションといった働き方に対する“条件軸”というよりは、自分と向き合った上で自分に合ったキャリアを模索する“自分軸”の働き方へとシフトしていく方が増えているのが特徴です。

 自分軸というのは、“そもそも自分が何をしたいのか”“今までの私でいいのかな?”といった本質的な自分自身への問いかけから考えることです。通勤時間がなくなり時間的余裕が生まれた。図らずも自由な働き方を疑似体験した結果、“もっとこういう働き方ができるのでは”といったような自分にとって理想とする働き方を見つめ直すきっかけになったんです。

 2011年に起こった東日本大震災の時もそうでしたが、大きな出来事に直面した時、人生を振り返る人はとても多い。“何のために生きている?”“私は何がしたいんだっけ?”と。私もその一人で、東日本大震災をきっかけにやりたいことを見つめ直し、将来的に後悔しないために会社員で働くことをやめ、独立を決意しました。なので、自身の根源的な欲求と向き合う葛藤や悩みにはとても共感できます。