2026年のFIFAワールドカップに臨む日本代表26人が発表された。GK3人、DF10人、MF8人、FW5人という構成は、センターバック7枚を擁する守備重視の布陣を映し出している。今大会で日本代表を追い続けるミムラユウスケ氏が、選手一人ひとりの役割と期待値を、フィールド内外の視点から徹底解説した。

【テーマ】
ミムラユウスケ「森保ジャパンW杯観戦術」
【動画4】W杯「26人」の取扱説明書

【INDEX】
・GK:正守護神の座と国内組の価値
#23 早川友基 / #12 大迫敬介 / #1 鈴木彩艶
・DF:戦術のバリエーションを広げる最終ライン
#5 長友佑都 / #3 谷口彰悟 / #4 板倉滉 / #16 渡辺剛 / #22 冨安健洋 / #21 伊藤洋輝 / #20 瀬古歩夢 / #2 菅原由勢 / #25 鈴木淳之介
・MF/FW:主将の覚悟と個の破壊力
#6 遠藤航 (※)/ #14 伊東純也 / #15 鎌田大地 / #11 前田大然 / #10 堂安律 / #7 田中碧 / #13 中村敬斗 / #24 佐野海舟 / #8 久保建英 / #17 鈴木唯人 / #19 小川航基 / #18 上田綺世 / #26 塩貝健人 / #9 後藤啓介
動画時間(51分08分)

※動画内のデータは2026年5月30日時のもの。
※6月12日に遠藤航選手の代表離脱が発表された。代わりに町野修斗選手が追加招集された

「鈴木彩艶なしの日本代表はちょっと考えられない」——GK3人の役割

――それぞれの選手にどういう役割が求められ、どんな活躍を期待したいか、一人ひとり解説していただけますか。

ミムラユウスケ:ゴールキーパーで言うと、まず早川選手ですね。代表出場3試合ですが、足元の技術が高いということが第一の前提としてあります。昨シーズンはJリーグのMVPを獲得しています。それに加えて、誰からも嫌われないフランクなキャラクターっていうのが大きかったのかなと思いますね。最大で2か月ほど一緒にいるわけですから、そういうキャラクターの選手はやはり大きな存在になる。

大迫選手に関しては、この4年間で森保監督の信頼を相当勝ち取った選手だと思います。直近では昨年9月のアメリカ戦、スコアは0対2でしたが、あれは0対5になってもおかしくないような試合でした。大迫選手がしっかりセーブして、どうにか最後まで戦える状況をつくったというのがありましたし、2023年9月のドイツ代表とのアウェーゲームで日本が4対1と勝った試合でも大きな役割を果たしました。彩艶選手にアクシデントがあるときや休息を与えるときには、大迫選手が試合に出る確率はかなり高いと思っています。

鈴木彩艶選手はもう、チームメイトからもファンからも正GKとしてふさわしいと認められる存在になりましたよね。ワールドカップ最終予選でも、彼がシュートを止めたからこそ最後まで攻めることができた、あるいは日本が勝てたという試合は多かった。直近のイギリス遠征でのスコットランド戦もそうでしたし、イングランド戦でも度重なるコーナーキックからの決定機をしっかり止めてくれた。彼なしの日本代表はちょっと考えられないくらいの大きな存在です。

――PK戦での起用はどうなりますか。

ミムラユウスケ:基本的には彩艶選手がスタートで出ていてアクシデントがなければ、PK戦も彩艶選手が任されると思っています。森保監督の考えをこれまでの取材を通じて見ると、PK時にキーパーを交代させることに大きなメリットを感じないタイプだという印象があります。今回も特別そういう判断をした選手を入れたわけではないと感じました。

「長友選手はチームの限られた力にレバレッジをかけてくれる存在」——DFの顔ぶれ

 

ミムラユウスケ:ディフェンス部門でいくと、まずは長友選手ですね。このシンクロナスのコーナーでは、2024年からおよそ2年以上、ずっと彼は必要な選手だと言い続けてきました。

レバレッジという言葉があります。投資の世界で言えば、限られた元手を使って大きな金額で投資ができる仕組みですが、その代わりリスクも伴う。今回の26人の中で長友選手を入れることに反対意見が出るのは分かります。ただ、優勝を目標にするチームの中で最も力が劣るのは日本というのは間違いないわけで、その限られた力を最大限発揮するために必要なのが長友選手だと思っています。

彼はどんなときも全力でやって練習の空気を変える選手ですし、試合直前でもベンチメンバーから外れたとしても声がけをして気合を注入する。ホテルに戻ったときも、4大会出た経験の中でうまくいったこと、うまくいかなかったことを、押しつけがましくなくさりげなく選手たちに伝えているという。同じ選手として同じ権利を持ちながら最下位の序列で全力を尽くしているわけですから、他の選手も「自分もしっかりやらないといけない」と奮い立たされる。

2024年1月から2月に行われたアジアカップのときに言われていたのが熱量不足でした。遠藤選手も冨安選手もそれを認めていた。対してイランのタレミ選手は出場停止にもかかわらず、日本戦の当日にスタジアムへバスが着く前から待ち構えて、一人ひとりに声をかけて気合を入れていたという話があります。熱量があるからこそそういう行動になるわけです。同じことを繰り返さないための存在としても長友選手は不可欠で、今回入ったというのはすごく納得感があります。

谷口彰悟選手は91年生まれですが、今シーズンはベルギーで優勝争いをしたチームの主力として活躍しています。直近のイングランド戦でも相手の変則的なフォーメーションに対してディフェンスラインをうまくコントロールしていた。それに見逃されているんですが、攻撃のコーナーキックで相手の前に出ていいヘディングを打つシーンが意外とこの1年で多いんです。まだ得点には結びついていないけれど、そういうところでも期待できる選手です。彼自身がイングランド戦の後に言っていたのが面白くて、「相手監督は自分のところを穴だと思って狙ってくるだろう。でもそれをモチベーションに変えるほうが自分にプレッシャーがかかっていいプレーができると分かっている」と。精神的支柱としても頼りになる選手ですね。

板倉選手は実質チームの副キャプテン的な存在です。今シーズンはアヤックスでボランチとしても起用されていて、そこでも機能できるということが大きい。人間性については、シャルケを2部から1部に上げた後のシーズン終了時に当時の監督が「娘の結婚相手にこうなってくれたら理想だと思えるほど素晴らしい人間だった」という言葉を残しています。そういう選手がいることの意味は、プレッシャーのかかる大きな大会では特に価値があると思います。

渡辺剛選手は今シーズン、フェイノールトで加入初年度からレギュラーポジションを守り抜きました。3バックのどこでもできる選手ですが、面白いのはファン・ペルシー監督に対して自分からビルドアップへの貢献を高めたいとポジションの変更を申し出たエピソードです。ファン・ペルシー監督が2月頃に「監督室のドアはいつでもオープンにしてある」と言ったとき、最初に話しに来たのが渡辺選手だったというのもそういうキャラクターを表していると思います。

冨安選手は怪我からの復帰途上という状況でしたが、アヤックスの一員として試合に出たときのパフォーマンスはDFラインにいるレベルじゃないという圧倒的なものがありました。手詰まりになったときのカード、本当の意味でのジョーカーとして機能するのかなと想像しています。守備的なポジションでありながら攻撃的にも守備的にも戦い方を変えられるのが彼の強みです。

伊藤洋輝選手はバイエルンに移籍したというところと、この代表の中でもフィジカル能力が頭ひとつ抜けているというのが大きい。左足のロングキックの精度は、ショートレンジよりもミドル・ロングのほうが高いんじゃないかというくらい質のいいキックを持っています。強豪相手に押し込まれる時間が長い中で、一発で局面を変えられる武器になります。

瀬古選手は左のセンターバックがもっともやりやすいと話しつつ、4バックの左からウイングバックまでいろんなポジションで文句ひとつ言わずにやってきた。今シーズンのルアーブルではボランチでの起用が前半戦は多く、空中戦のデュエル勝率でリーグのトップ10に入っていました。例えば1対0でリードした終盤に相手が放り込んでくる展開になったとき、ボランチで起用して跳ね返す役割を任せることも十分描けますよね。

菅原選手はここ数年、個人分析官をつけて試合の振り返りを積み重ねてきました。試合中の駆け引きで相手をイライラさせるメンタルゲームをすごく意識していて、チェルシーでも活躍しスペイン代表にもいるククレジャのようなスタイルを目指している。プレースキッカーも務められますし、三笘選手が不在の中で右ウイングバックをもう一人用意するという視点でも、菅原選手が入るのはロジカルだったと思います。

鈴木淳之介選手はディフェンス登録の中では出場試合数が最も少なく6試合ですが、180センチで相当のジャンプ力があって空中戦に強い。加えて攻撃参加のセンスが非凡です。スコットランド戦ではアンダーラップを仕掛けて左のポケットを攻略し、そのクロスから伊東純也選手のゴールが生まれたシーンがありました。今回の戦い方を考えると、オランダ戦で彼を左のウイングバックに置き、中村敬斗選手を左シャドウで起用するアイデアもあるかもしれないと思っています。

「鎌田選手はチームとしての戦い方をもっとも表現できる選手」——中盤の核心

 

ミムラユウスケ:ミッドフィールダーでは、キャプテンの遠藤選手から始まりますね(※)。今回の怪我のリハビリで彼がとったプランが象徴的でした。メンバー発表前に復帰できるようなプランを立てることもできたけれど、彼が選んだのは6月14日のオランダ戦で最高のコンディションを発揮できるプランだったということです。しかもそれを監督やコーチングスタッフにも事前に伝えていた。メンバーに入れないリスクを厭わずに、チームに最も大きく貢献するにはどうすればいいかを考えて行動できる。それが遠藤選手の真骨頂だと思うんです。

※6月12日に遠藤航選手の代表離脱が発表された。代わりに町野修斗選手が追加招集された。

キャプテン就任後に「自分が全ての試合で使わなくていい」と自ら監督に言いに行ったというエピソードも同じですよね。そして彼の功績は背中で引っ張ったということだけじゃなくて、ワールドカップ優勝という目標を掲げた上で、そのために何をしないといけないかをチーム全員に考えさせ行動させるよう呼びかけたことだと思います。2010年から現地で取材してきた中で、大会の1~2か月前の時点でここまで団結を感じるチームは今回が初めてです。

伊東純也選手は右のウイングバック、左のウイングバック、右のシャドー、左のシャドーとどこで出ても一定の結果を出してきた選手です。今大会では先発よりも途中から流れを変える存在としての起用が多くなる可能性があると思いますが、彼がそれで腐ることもない。森保監督の采配の幅を広げるという意味で、非常に大きなカードです。

鎌田大地選手のチームと言っていいんじゃないかと思っています。チームメイトからのリスペクトが特別に高い。クリスタルパレスでやってきたことについて久保選手が言っていたのが面白くて、「ひたすら自陣に引いてカウンターを狙うスタイルだと、攻撃に出るときのゴールとの距離が長くなってしまって、そこは単純な個の能力勝負になる。でもクリスタルパレスは守備の設定がしっかりしているからこそ、どうやって攻撃に出ていくかを考えた守備になっている。個人の力に頼らないサッカーなんじゃないか」ということを言っていて。それが今の日本代表が目指すべき形と重なっています。

興味深いのは鎌田選手に直接、リバプール戦でコナテからボールカットしてカウンターが始まったシーンについて聞いたときのことです。「あれは自分の判断ではなくて、チームとしての戦い方があって、それを実行しているだけです」という答えが返ってきました。チームとしてやろうとしているサッカーをピッチ上で最も表現できる選手が鎌田選手だと思います。フランクフルトで長谷部さんがリベロとして起用されて、長谷部さんが出ると勝つという時期がありましたが、それと重なるものを感じますね。

 

堂安選手は、右のウイングバックとして森保監督から圧倒的な信頼を勝ち得ています。守備でハードワークしながら攻撃にも出ていけるというのが大きい。3月末のインタビューで彼が話していたことが印象的でした。「試合に勝ちたいなら攻撃しろ、大会で勝ちたいなら守備をしろという言葉がある。守備が大事だ」という内容で、ほぼ同じ時期にブラジル代表のアンチェロッティ監督もクロアチア戦の前日会見で「ワールドカップで勝つのは失点が少ないチームであり、得点が多いチームではない」と言っていた。面白いほどシンクロしていました。

カタール大会では2ゴールを決めた堂安選手ですが、ドイツ戦で得点を決めた後、試合後に話を聞いても喜びを爆発させるでもなく「まだだ」という言葉が出てきたんですよ。お父さんに「1ゴール決めて満足してたんじゃないか」と言われたというエピソードも残っていて、そういう環境の中で育ってきたハングリー精神は、プロになってから養えるものじゃない。彼の大きな武器です。

田中碧選手はプレミアリーグで一度レギュラーを外されながらもポジションを勝ち取り直した。9試合起用されない状況からFAカップで起用されてチームの勝利に貢献するゴールを決めるという勝負強さがありますよね。2022年のワールドカップ最終予選でオーストラリア相手に決勝ゴールを決めたのも同じです。佐野選手からは、「田中選手と一緒にピッチに立つと自分の特徴が出やすい」と言っていました。役割分担をうまくしてくれたり、距離感の取り方が絶妙だったりして、目立たないところで周りの選手を生かすことが田中選手は本当にうまい。

中村敬斗選手は、上田選手を除くとこのメンバーの中でシュートがもっともうまい選手だと思います。シュートの選択肢とキックの技術がずば抜けている。少ないチャンスをものにしないといけない今大会の戦い方の中で大きな存在です。シャドーでもウイングバックでもできますし、その汎用性も選ばれた理由でしょうね。

佐野海舟選手はマインツで今シーズン圧倒的なパフォーマンスを見せていて、シーズン途中からは5000万ユーロ以上でなければ売れないとファンに言わせるほどの評価になっていました。リーグ戦は1試合を除く33試合でフル出場。その秘訣を直接聞いたら「頭をクリアにすること」という答えでした。体のケアではなく、試合に向けてメンタル的にいい準備をすることが強度を保つ基盤だということですね。

「久保選手中心のチームを作る可能性がある」——攻撃陣の楽しみ

ミムラユウスケ:久保選手はこのチームの攻撃の核ですね。...