2026年3月の英国遠征でイングランドに1対0で勝利し、アジアのチームとして史上初めてウェンブリーで白星を手にした森保ジャパン。三苫薫の「IQとセンス」が生んだ歴史的な瞬間の裏側、試合中のフォーメーション変更をめぐる守備の混乱、そして「ワールドカップで優勝するにはまだ2段階の成長が必要」という厳しい現実まで、ミムラユウスケ氏が徹底的に語り尽くす。

【テーマ】
ミムラユウスケ「森保ジャパンW杯観戦術」
【動画17】森保ジャパン・ベストバウトvsイングランド

【INDEX】
・英国遠征どう見た?
・イングランド撃破の要因
・W杯への準備は万全か?
・強化すべき課題点
・スコットランド戦で見せた超攻撃的システム
・良い守備ができたが、攻撃面の評価は?
動画時間(23分50分)
※収録環境の影響により、映像や音声が乱れたり、聞き取りづらくなったりする箇所がございます。ご不便をおかけして申し訳ございませんが、あらかじめご了承いただけますようお願い申し上げます。

「アジアのチームとして初めてウェンブリーで勝った」

――今回の英国遠征2試合について、総括をお願いします。

ミムラユウスケ:森保監督が選手の使い分けという面でも本当にうまくマネージメントした2試合でしたね。1試合目のスコットランド戦はチャレンジ枠で選手を入れ替えて、2試合目のイングランド戦につなげるという構成で、勝ったということ以上に、トータルで見てチームとしての気温管理ができていたことがまず良かったです。

その上で、ウェンブリーで勝てたこと、そしてイングランド代表相手にアジアのチームとして史上初めて勝ったということも、誇らしいことだと思っています。

――1対0で勝った要因はどこにあると分析していますか。

ミムラユウスケ:まず自分たちがコントロールできないところで言えば、相手がベストメンバーではなかったということが一つあります。それから、スタジアムに入った7万9千何人かのうち、おそらく半分ぐらいが日本人のサポーターやファン、あるいはヨーロッパに住んでいる日本人だったのではないかという空気感があって、アウェーの雰囲気を和らげることができた。この二つの外的要因があった上で、守備でしっかり耐えられたことが大きかったですね。

そして最後の得点は、三笘薫選手のセンスです。上田綺世選手も言っていましたけど、あの場面で唯一背中側から見ていた日本人選手だった上田選手が語っていたのは、「三笘がパーマーの動きを読んで、ここで奪えると判断し、左サイドにいたのに中央エリアまで入ってきて取った」ということでした。あのボールを奪う技術と勘があってこその得点ですね。

 

「三笘のIQとセンスが2試合を通じたMVP」

――三笘選手についてはスコットランド戦でも印象的な場面があったと聞いています。

ミムラユウスケ:そうなんです。スコットランド戦では三笘選手と中村敬斗選手はポジションを入れ替えてもいいと言われていたんですね。ただ、ずっと入れ替えていなかった。ところが、谷口彰悟選手が相手の中途半端なボールをカットして攻撃が始まった瞬間に、三笘選手が外に行って、中村選手が中に入って、初めてポジションを入れ替えた最初の攻撃でゴールになった。

さらに鈴木淳之介選手が三笘選手のドリブルを見て「これはチャンスだ」と判断し、左のポケットをアンダーラップで取った。そのことで相手のセンターバックが一人引き出され、中のスペースが生まれた。三笘選手が単純にクロスを上げるだけでは、センターバックが残っていたのでクリアされるリスクが高かったはずです。三笘選手のIQとセンス、そしてそれを最終的に生かした技術、この2試合を通じたMVPは文句なしに三笘選手ですね。

――歴史的な勝利に興奮しながらも、冷静に見てワールドカップに向けた準備はできていると思いますか。

ミムラユウスケ:準備はできているとは言えます。ただ、ワールドカップで優勝するためにはまだ足りないものがある、というのが正直なところです。ワールドカップで本気のイングランド、ベストメンバーのイングランドと戦って、PKという運の要素を除いた90分でイングランドを倒すためには、チームとしてもう1段階、いや2段階ぐらい成長していかないといけない。それは現実問題としてあると思います。

フォーメーション変更時の守備が最大の課題

――では具体的に強化すべき課題はどこにありますか。

ミムラユウスケ:今回最も目立ったのが、試合中にやり方を変えたときの守備をどうするかという問題です。スコットランド戦で3-1-4-2にしたのが77分ですが、その2分後に中村選手から堂安選手への横パスをカットされてカウンターを受け、相手の18番が橋岡大樹選手を振り切ってペナルティーエリア内までシュートに行くシーンがありました。相手が枠を外したので事なきを得ましたが、あそこで失点していたら試合はまったく違うものになっていたはずです。

具体的に何が起きていたかというと、3-4-2-1でスタートしたときは相手のフォーバックに対してツーシャドウがプレッシャーをかけに行き、ワントップが相手のダブルボランチの一角を消すという守り方でした。それが3-1-4-2に変わると、ツートップが相手のツーセンターバックにマークに行き、ツーシャドウが相手のダブルボランチを見るという形に変わる。つまり、最初のファーストディフェンダーがフォワードなのかシャドウの選手なのかが変わるわけです。ウイングバックの選手も相手のサイドバックに出ていかなければならなくなり、最終ラインがマンツーマンになったりスペースが開いたりするリスクが生まれます。

この問題は実はスコットランド戦よりも前、メキシコ戦の残り9分からこのフォーメーションを試したときにも出ていました。そのときは一部の選手は「3-1-4-2でツートップにすることで相手のセンターバックからの球出しを抑えることが重要だ」と理解していたのに、別の選手たちは「前線の人数を増やして点を取りに行くメッセージだ」と受け取っていたんです。同じフォーメーション変更に対して意図の読み取り方が違っていた。それがスコットランド戦からイングランド戦の間の2日間の練習でしっかり確認されて、守備の整理が行われたというのは良かったんですけどね。...