2025年7月19日から8月2日にかけて、日本代表の森下監督が5か国8試合を視察した。ベルギーを重点的に回りながら、アンデルレヒトのヨーロッパリーグ予選、スラビア・プラハの国内リーグ戦、ザルツブルクのチャンピオンズリーグ予選など、いわゆる五大リーグのビッグマッチではなく「普段行けない場所」を意識的に選んだ視察だった。ミムラユウスケ氏が、その背景と意図、そして9月以降のメンバー選考への影響を読み解く。

【テーマ】
ミムラユウスケ「森保ジャパンW杯観戦術」
【動画15】指揮官の言葉で振り返る「森保ジャパン8years」(5)

【INDEX】
・欧州視察、どんな目的?どんな成果があった?
・森保監督、注目発言は?
・欧州視察メンバーの位置付けは?
動画時間(10分23分)

「公式戦の強度」にこだわった視察設計

――今回の欧州視察はどのような内容だったのでしょうか。

ミムラユウスケ:(2025年)7月19日の試合から8月2日まで、5か国8試合を観戦しています。ベルギーを重点的に見ながら、アンデルレヒトのヨーロッパリーグ予選、森下選手が所属するレギア・ワルシャワのヨーロッパ予選、ザルツブルクのチャンピオンズリーグ予選、それからスラビア・プラハ対フラデツ・クラーロヴェという橋岡選手の試合も見に行っています。かなり普段は行けないような場所ばかりですね。

――なぜこういった試合を選んだのでしょうか。

ミムラユウスケ:森保監督としては、見に行ったのはすべて公式戦だということが大前提にあります。「公式戦の強度じゃないと意味がない」という考え方です。それに加えて、通常の欧州視察だとどうしてもビッグマッチや五大リーグの試合に足が向きがちになる。だから今回は意識的に「普段行けないところ」を選んだということです。

ちなみに、この視察期間中にはブライトン対サウサンプトンという日本人対決の試合もあったわけですが、そちらには行っていないんですね。それだけ「普段行けない公式戦」という軸を徹底していたということだと思います。

 

「チェコでチャンピオンズリーグを戦う」という選択肢

――スラビア・プラハの試合を視察したことの意味をどう見ますか。

ミムラユウスケ:森保監督と話していたのは、五大リーグでプレーすることでレベルアップするというのは間違いないけれど、例えばチェコのようにUEFAリーグランキングで10位ほどの国であっても、その国内でトップ・オブ・トップのチームに入れば、チャンピオンズリーグやヨーロッパリーグでヨーロッパの強豪と戦える機会がある。そういう「選択肢もあるんだな」ということを感じたと話していました。

これは橋岡選手本人にインタビューしたときの発言ともぴったり一致していて、橋岡選手もスラビア・プラハへの移籍を考えた際に幹部と話して、「チェコリーグのレベルよりも、チャンピオンズリーグで本気で戦いに行けるということが大きかった」と言っていました。

――リーグのランキングが下がっても、CLに出られることのほうが価値があるということですね。

ミムラユウスケ:そうなんです。これは私自身の見解も含めた話になりますが、例えば板倉選手がドイツのボルシア・メンヘングラートバッハからオランダのアヤックスに移籍した例でも同じことが言えます。UEFAランキングではドイツが4位、オランダが6位ですから、リーグのランキングとしては落ちるんですけど、アヤックスに行ってチャンピオンズリーグに出られるというのが大きなモチベーションの一つになっているはずです。選手たちの中で、「チャンピオンズリーグに出られること」の価値はかなり高まっていると感じます。

 

新フォーマットで「最低10試合」が保証されるCL

――チャンピオンズリーグの価値がさらに高まった背景はあるのでしょうか。

ミムラユウスケ:大きいのは昨シーズンからチャンピオンズリーグのフォーマットが変わったことです。以前はグループリーグ6試合が本戦出場の最低ラインでしたが、新フォーマットでは36チームによるリーグフェーズが設けられ、最低でも8試合が保証されています。さらに、36チームのうち下位12チームに入らなければ、決勝トーナメント1回戦に向けたプレーオフに参加できるので、実質的に最低10試合はCLレベルの試合ができる計算になります。

――それはたしかに選手からすれば大きいですね。

ミムラユウスケ:そうです。1シーズンで10試合があのテンションと注目度の中でできるというのは、選手にとって本当に大きな魅力です。もちろん勝ち抜けばさらに試合が増えていく。チャンピオンズリーグは見るほうからすると以前より分かりにくくなったという声もありますが、やる側の選手にとっては間違いなく価値が上がっています。森保監督の話からも、そういうトレンドを感じ取ったのかなという印象を受けました。

視察の目的は「映像では分からない空気感」

――今回の視察で監督は選手と直接会ったのでしょうか。

ミムラユウスケ:今回は選手と面談するというようなことはなかったみたいです。今年2月の視察のときは、例えば佐野海舟選手に実際に会っていたりしているんですが、今回はそういったことはなく、代表関係者で会ったとすれば長谷部コーチくらいだったということです。

――では純粋に試合を「観る」ための視察だったということですね。

ミムラユウスケ:そうです。映像でのチェックは普段からしていると思うんですが、映像だと具体的なプレーは確認できても、試合の強度や雰囲気、空気感というところまではなかなか分かりません。一回実際に見ておきたかったということでしょう。

実際、監督の感想として印象に残っているのが、「どこに行ってもスタジアムが本当に盛り上がっている」という話です。Jリーグも盛り上がってはいるけれど、また違った熱さや歴史の違いを感じたと言っていました。そういう肌感覚を確かめに行ったという側面も大きかったと思います。

 

9月招集は「三月メンバーがコア」、E-1組にもチャンス

――今回視察した選手たちは、9月以降のメンバー選考でどういう位置づけになりますか。

ミムラユウスケ:このタイミングでしか生で見られないから、実質ラストチャンスだったという可能性は十分あります。特に橋岡選手については、チャンピオンズリーグに出れば別途見る機会も生まれますが、国内リーグを生で観るという意味では今回がほぼラストチャンスだったと思います。映像でのチェックは続けるとしても、強度や空気感を含めて「基準を持ちたかった」という意味合いが強かったんじゃないでしょうか。

――9月の招集メンバーはどういった顔ぶれになりそうですか。9月はメキシコ、アメリカ、10月はパラグアイ、ブラジル、11月はアルゼンチンといった対戦が噂されています。

ミムラユウスケ:森保監督の話でも強調されていましたが、3月、6月、そしてE-1選手権で一度でも選ばれた選手はすべて候補という考え方です。E-1の選手についても、アメリカ行きのビザを取る用意をしてもらうつもりだとまで言っていました。

とはいえ、軸になるのはやはり3月のメンバーだと思います。そこから調子を落としていたり出場機会を得られていない選手のポジションに、競合する選手が入ってくるというイメージでしょうか。6月で大きくアピールした鈴木淳之介選手や町野選手なども、コンディションが整っていれば入ってくるのではないかと思います。

――固定メンバーが増えていく一方で、新戦力という視点も気になります。

ミムラユウスケ:もちろんそこは注目ですよね。ただ、森保監督の考えとしては、3月のメンバーがコアになるというところはかなり固く持っているという印象です。移籍したばかりで出場機会が限られている選手は9月に選ばれない可能性もある。一方でE-1で活躍した選手にも扉は開いている。どの選手が入ってくるか、8月末の発表が楽しみなところです。

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