2025年3月シリーズでW杯出場を決めた日本代表。しかし手放しで喜べない現実がある。サウジアラビア戦では第二次森保政権で初めて無得点に終わり、枠内シュート率は過去6試合平均の48%からわずか16.7%まで急落した。3バックという攻撃的オプションが相手に研究され、本大会に向けた「ヒント」を与えてしまったのではないか。ミムラユウスケ氏が、3月シリーズで浮かび上がった森保ジャパンの穴を語った。

【テーマ】
ミムラユウスケ「森保ジャパンW杯観戦術」
【動画8】森保ジャパンの強みと弱み(2)

【INDEX】
森保ジャパンの穴(1)
・3-4-3はW杯本大会のメインではない?
森保ジャパンの穴(2)
・サウジ戦は日本対策のヒントを与えた?
森保ジャパンの穴(3)
・森保監督が苦手な作業は「積み上げ」
動画時間(20分19分)

――まずは2025年3月シリーズ全体の総括から聞かせてください。

ミムラユウスケ:選手たちが言うように、悪いサッカーはしていなかったとは思います。ただ最大の疑問として残ったのが、3バックの機能不全ですね。

今回採用した攻撃的な3バック、つまり三笘選手や堂安選手といったウイングの選手をウイングバックに配置したフォーメーションは、対アジアの試合や本大会でコスタリカのような引いて守るチームに対してしっかり点を取るために導入したはずです。ところがバーレーン戦でも我慢が必要な展開になり、サウジアラビア戦ではシュートの精度が著しく低下してしまった。

枠内シュート率でいうと、昨年の最終予選の最初の6試合は平均48%あったんですが、サウジアラビア戦は16.7%でした。クロスの成功率も、予選最初の6試合が30%だったのに対して、サウジアラビア戦は19.2%まで落ちています。攻撃的なオプションとして用意したフォーメーションが、相手に研究されたうえで攻めあぐねるという展開になったのは、かなり不安を感じましたね。

「同じ引き分けなら3対3のほうが良かった」

――0対0のスコアレスドローという結果についてはどう見ますか。

ミムラユウスケ:サウジアラビア戦は第二次森保政権で29試合ぶりの無得点でした。同じ引き分けで終わるにしても、個人的には3対3のほうが良かったと思っています。

この3バックというのは、守備のリスクはあるけれど点を取れる、というオプションとして用意しているはずです。だから失点しちゃったけど点は取れたよね、というほうがずっとよかった。0対0のスコアレスドローで終わってしまったことで、「じゃあこの3バックに対してどう対処すればいいか」というヒントを相手に与えてしまったんですよ。

最終予選の残り試合で3バックをやるかどうかわかりませんが、これだけ点を取ってきたシステムがなぜサウジアラビア戦だけ無得点だったのかは、本大会で対戦するチームが必ず分析してきます。三笘選手と堂安選手がいれば話は違うかもしれないけれど、あの試合の内容を見れば「こうすれば日本を抑えられる」というヒントは簡単に読み取れてしまう。そういう意味での嫌な予感はありましたね。

ミドルゾーンのブロックをどう崩すか

――サウジアラビアはそれほど深く引いていたわけではないんですか。

ミムラユウスケ:そうなんです。オーストラリア戦は相手がかなり低いブロックを作るローブロックで、アタッキングサードには入れるけれどそこからの工夫がという問題でした。一方でバーレーンとサウジアラビアはどちらかというとミドルブロックを引いてきて、アタッキングサードまでいい形で入れていたかどうかというと疑問です。ボールは持ててはいるんですが、という難しさがありましたね。

ミドルゾーンでコンパクトに守られると、これはそれはそれで難しい。しかも皮肉な話ですが、日本は2023年の6月から10連勝(練習試合・親善試合を含む)したときも、大岩監督のもとで結果を出した五輪世代も、まさにミドルゾーンでブロックを引いてショートカウンターという戦い方をしていたわけです。その崩し方がなかなか見えてこなかった。

もっとロングボールや裏へのボールを使って相手のディフェンスラインを下げ、押し込んでから攻めるという選択肢があってよかったと思います。アジアカップで日本が苦しんだのも、相手がミドルゾーンのブロックを引いてくることを逆に分析したうえで、ロングボールを放り込みまくって日本を自陣に引かせたイランやイラクのやり方が有効だったからです。日本も同じことをやってよかった場面はあったはずです。

サウジアラビア戦でいえば、中村敬斗選手はミドルシュートの精度など本来の武器があるわけですが、ミドルゾーンを突破するための剥がす作業にかなりのエネルギーを使わざるを得なかった。その結果、いい形でシュートを打つというところまでたどり着けなかったという側面があります。

3-4-3が機能するための条件

――6人メンバーを変えたサウジアラビア戦は、3バックの限界を示したとも言えますか。

ミムラユウスケ:今の3-4-3というシステムで機能させるためには、ウイングバックの選手がウイングとして勝負できるだけでなく、クロスに入って点を取れる能力が必要です。三笘選手と堂安選手を両ウイングバックに使ったときの強みというのは、ニアサイドのポケットを取れるだけでなく、ファーサイドのポケットに逆サイドから選手が飛び込んでくるオプションがあるから守りづらいんです。

一方、菅原選手にしても中村敬斗選手にしても技術はあると思いますが、クロスに入って点を取るというのは彼らの得意とするプレーではない。そう考えると、三笘選手と堂安選手なしでこの3-4-3をやるのはきつい部分があります。

個人的に思うのは、サウジアラビア戦のような大幅にメンバーを変える試合では、例えば右か左のウイングバックに前田大然選手を入れて、センターフォワードに町野選手か古橋亨梧選手を使うべきだったということです。前田選手はクロスに入る動きも得意ですし、逆サイドからクロスが入ったときにいい形で飛び込んでいくことも非常にうまい。あのメンバー構成であれば、そっちのほうがもっと機能したのではないかと思います。

サウジアラビア戦がテスト的な意味合いを持っていたのはわかります。前田選手をセンターフォワードで久しぶりに起用してみる、中村敬斗選手に長い時間ウイングバックを務めさせてみる。そういう目的があったことは理解できる。ただ結果として、同じ3-4-3のフレームに違う選手を入れて機能不全に陥ったという印象は否めません。

「積み上げ」が苦手な森保監督のチーム作り

――今回の一連の流れを見て、森保監督のチーム作りの本質的な課題が見えてきたように感じますが。...