W杯本大会を見据えた日本代表の強化策として、森保一監督が「トリプルチームぐらい欲しい」と発言したことが注目を集めた。なぜアトレティコ・マドリードを参考にするのか、「トリプルチーム」とは何を意味するのか。サッカーライターのミムラユウスケ氏が、森保監督の真意を詳しく解説する。
ミムラユウスケ「森保ジャパンW杯観戦術」
【動画6】森保ジャパンの強みと弱み(1)
【INDEX】
・日本代表がアトレチコ・マドリーを参考にできる点
・森保監督が目指す「トリプルチーム」とその目的
・W杯メンバー選びの基準
動画時間(20分25分)
「守備のカルチャーを植え付けたい」森保監督のアトレティコ・マドリードを参考に
――森保監督がアトレティコ・マドリードを参考にしたいと話していたのが興味深かったですが、どう受け止めましたか?
ミムラユウスケ:戦術的に「アトレティコを完全に研究しています」という話ではなく、本人自身も「そこまでアトレティコを研究できているわけじゃない」と言っていたので、どちらかというとチームカルチャーへの共感なんだと思います。全員が献身的に守備をするという、そのマインドを日本代表に植え付けたいということを考えているのかな、と私は感じました。
その背景には、やはり格上と戦う試合の多さがあります。前回のワールドカップで日本がコスタリカのようにしっかりとボールを保持して主導権を握れた試合は1試合だけで、残りの3試合は相手が主導権を持っていた。本大会でもその比率はそこまで変わらないと思っています。決勝まで行くとすれば全部で7試合あるとして、日本が格上として戦えるのはせいぜい2試合くらいで、残りの6試合はボールを保持される展開になるはずです。
だからこそアトレティコ的なマインド、つまりレアル・マドリードやバルセロナと戦うアトレティコのようなメンタリティが必要だと森保さんは考えているのでしょう。一方でジャマイカ代表のような相手には当然やり方が変わりますし、アトレティコだってバレンシアやオサスナと対戦するときはもう少しボールを持ったりもする。そういう使い分けを含めた発想だと思います。
――ドイツにそれに匹敵するようなチームはありますか?
ミムラユウスケ:難しいですね。ドイツはスペインのような「三強がずっと続いている」という構図がないので、あれほどはっきりとした守備の文化を持つクラブがあるかというと、なかなか見当たらない気がします。フランクフルトが立ち位置的にはちょっと近いかもしれません。守備を固めてカウンターというよりは、前線の選手がハイプレスに行かない分、攻撃のときに体力を使えるようにしているサッカーをしているので、雰囲気としては似ているところもあります。
ただアトレティコの場合は、シメオネ監督とコロ・シメオネ主将というアルゼンチン色が強くて、あのアルゼンチン的な縦に早く、肉弾戦を厭わない闘争心と守備のカルチャーが一体になっている独特さがありますよね。
「守備強度と選手選考」南野と堂安がスタメンに入る理由
――守備への重視は、選手選考にも現れていますか?
ミムラユウスケ:かなり現れていると思います。今の日本代表のメンバーを見ると、守備ができるかどうかというところで判断している部分が大きい。最終予選で2シャドウの一角に南野拓実選手が全試合出ていたのはその現れだと思います。もし守備を考慮しないなら、右ウイングバックに久保建英選手を置くこともできますが、そこに堂安律選手を入れているのも、球際の強度や守備のハードワークができるからでしょう。
各ポジションの選手構成を見ても、同じタイプを複数並べているわけではなくて、特徴が違う選手を意図的に置いています。センターフォワードは万能型の上田綺世選手と得点特化型の小川航基選手、左サイドハーフは三笘薫選手とチャンスメーカー兼守備のうまさを持つタイプと、フィニッシャーとしての色が強い中村敬斗選手。右のアウトサイドも堂安選手が得点力と中の選手との絡みに長けているのに対し、伊藤敦樹選手は縦突破とクロスが武器という違いがあります。
森保さんは戦術に選手をはめ込むタイプではなく、むしろ同じポジションに違うタイプを置くことで組み合わせの幅を持たせているんだと思います。
――2シャドウを担うもう一角、南野選手の代わりがなかなかいないとも言われますが?
ミムラユウスケ:そこが一番難しいところで。久保選手と鎌田選手は両方いますが、鎌田選手は周りを活かしながらゲームを作ってフィニッシュに絡んでいくタイプで、久保選手はもう本当に直接チャンスに関わる、得点とアシストに特化したタイプです。実は南野選手はその両方とまた少し違う性質を持っていて、代役を見つけにくい。
最終予選でのアウェーゲームでは鎌田選手がスタメンになることが基本で、ホームゲームでは久保選手というように使い分けていました。これも相手にボールを握られながら時間を作るときは鎌田選手、守備を固めてくる相手を独力で剥がすときは久保選手、という論理があるわけです。
森保監督が目指す「トリプルチーム」の真の意味
――ワールドカップは消耗戦が激しいから「トリプルチームぐらい欲しい」と森保監督は発言していたそうですが、その真意はどこにあると見ていますか?
ミムラユウスケ:私の解釈では、2つのことを同時に考えているのだと思います。一つは...
