チャンピオンズリーグ(CL)に出場できる選手が増えれば増えるほど、W杯でもいいプレーができるーー。この一見シンプルな命題を、ミムラユウスケ氏はさまざまな角度から解説した。今シーズンのCLには日本人選手が8人も出場。なかでも守田英正選手と伊藤洋輝選手は、36チーム中8チームしかないラウンド16直接進出のクラブに在籍するという快挙を果たした。CLの経験値は確かに蓄積されつつある。だが、真の勝負を分けるのは「ピッチの外」にあるかもしれない。コンディション管理、団結力、そして長友佑都という"見えない存在"の価値まで、ミムラユウスケ氏が語り尽くした。

【テーマ】
ミムラユウスケ「森保ジャパンW杯観戦術」
【動画9】森保ジャパンの強みと弱み(4)

【INDEX】
・W杯とCLの関係性
・CL日本人選手の評価は?
・「核」となる日本人選手は?
・W杯とCLの違い
・CL経験不足をどう埋める?
動画時間(10分08分)

「CLに出られれば出られるほどいい」W杯とCLの切っても切れない関係

――チャンピオンズリーグと日本代表の関係性について、改めて教えてください。

ミムラユウスケ:みんなが思っているのは、2014年ブラジルW杯のときの内田篤人さんのことですよね。あのとき1番いいプレーをしていたのは内田さんだとチームメイト全員が認めていたと思うんですが、やっぱり高いレベルで日常的にプレーしていると、ワールドカップという大舞台でも臆せずにいつもどおりのパフォーマンスができる。

それからもう一点。普段はリーグ戦を戦っていても、W杯はグループリーグがあるとはいえ基本的にはトーナメントです。チャンピオンズリーグもグループリーグのあるトーナメント。そういう一発勝負への「慣れ」が身につくという意味でも、CLに出られれば出られるほどいいというのはありますよね。

 

――今シーズンは日本人選手が8人もCLに出場しました。

ミムラユウスケ:遠藤航選手が最後に出場して8人という数字になりましたね。鈴木淳之介選手、板倉滉選手、南野拓実選手、堂安律選手、守田英正選手、伊藤洋輝選手、橋岡大樹選手です。実力ある選手がちゃんと出ているという印象を受けます。

特に注目してほしいのは、守田選手と伊藤洋輝選手の2人です。36チーム中8チームしかないラウンド16直接進出のチームに、日本人が2人いる。この2人は派手な活躍をするタイプではないので目立ちにくいんですが、実はすごいことをしているんですよ。日本代表のチームメイトも、内心「あれはすごい」と思っている選手は多いんじゃないですかね。そういう意味では、代表の軸になり得る選手たちだと思います。

「CLの筆頭は堂安選手」過去の最高到達点と今後の核

――CLでの日本人選手の歩みを振り返ると、現役選手で最もいいところまで行ったのは誰ですか?

ミムラユウスケ:過去の最高として引き合いに出されるのは、内田篤人さんがシャルケでベスト4まで進んだ経験ですよね。現役選手で言えば南野選手と冨安選手がいいところまで行きましたが、2人ともなかなか怪我で苦しんでいる状況です。

チャンピオンズリーグという意味での筆頭は、僕は堂安選手だと思っています。所属するフランクフルトは、昨シーズンにリーグ4位以内に入って初めてCLの舞台を踏んだわけですが、正直チームとしては苦しいシーズンでした。ただ、堂安選手個人にとってCLを初めて経験できたこと、リバプールやバルセロナと対戦できたことは、すごくポジティブな財産になったんじゃないかと思います。

「ワールドカップは環境が左右する」CLとW杯、決定的な違い

――CLを基準に考えると、日本代表がW杯で上位に行けるイメージが湧きにくいという声もあります。CLとW杯の違いはどこにあるのでしょうか?

ミムラユウスケ:チャンピオンズリーグはホームアンドアウェー方式ですから、意外と環境が左右する要因は少ないんです。一方でW杯は開催大陸によって有利不利が出やすい。

 

カタール大会は典型的な例で、アジア開催ということもあって中立の観客が日本を応援してくれましたよね。一方、ドイツやスペインは、カタールの政治に対してヨーロッパの先進国から反発があったため、応援の勢いが過去にないほど少なかった。日本はその恩恵をかなり受けたと思います。同じ構図でベスト4まで進んだのがモロッコで、アラビア語を日常的に使うアラブ諸国という枠組みのなかで、ホスト地域の追い風を最大限に生かしました。

今回のW杯で同じような恩恵を享受できるのは、開催国以外ではスペインや南米勢になるかなと思いますね。

――プレミアリーグを持つイングランドは有利に映りますが、CL目線ではどうでしょうか?

ミムラユウスケ:今シーズンのCLでは、ラウンド16直接進出の8チームにイングランドのクラブが全部入っているわけですから、リーグとしての強さは本物です。長期的な目線で言えば有利だと思いますが、ただイングランド人の選手が多いわけではないので、そこは単純にリンクしない部分もある。今のイングランド代表の調子がどうかという話まで含めると、すぐに結論は出せないかなとは思います。

「勝負はピッチの外かもしれない」CL経験の不足を補う方法

――日本人選手のCL経験不足を埋めるために、何が必要になってくるのでしょうか?

ミムラユウスケ:経験値という意味で考えると、実は今回のW杯で必要なのは「試合の環境作り」だと思っています。移動距離もあるし、時差もあるし、会場によっては暑さもある。選手がいいコンディションを保ち、実力を発揮しやすい環境を整えることが最大の課題です。勝負を決めるのはピッチの外かもしれない。

 

長友佑都選手がかつて「W杯で勝つために大事なのはコンディションと団結力だ」とおっしゃっていましたが、まさにそのとおりだと思います。コンディション管理には頭脳と、そこに投じるお金がどれだけあるかということも関わってくる。

――短期決戦における団結力とは、どのようにして生まれるのでしょうか?

ミムラユウスケ:一つに決められるものではないですよね。2006年ドイツW杯でイタリアが優勝したときは、主力選手を多く抱えるユベントスが八百長騒動でセリエBを戦わなければならないという苦境に立たされていた。その難しい状況が逆に団結を生んだとも言えます。2018年のロシアW杯の日本代表は、本大会直前にハリルホジッチ監督が解任されて批判が集中した。選手たち自身が監督交代を望んで動いた部分もあるから、「自分たちで責任を取らなければ」という意識が団結を生んだと思います。

今の日本代表は、遠藤選手が「ワールドカップ優勝」という目標を掲げて、みんながそこで一つになっています。遠藤選手はその目標を、メンバーの意見を聞いたうえで設定した。同時に「優勝にふさわしいチームになろう」というメッセージを発し続けている。その言葉が選手たちの間でいい意味での同調圧力として働いて、「ここで妥協できない」という雰囲気がチーム全体に広がっている。日本の歴史を振り返っても、今の代表は相当団結しているほうだと思いますね。

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