フィリピン国軍の兵士 撮影:渡部陽一(2018年3月)

 渡部陽一です。

 日本で起きた連続強盗事件。指示役が「ルフィ」などと名乗っていたと言われ「ルフィ事件」として大きな話題となっています。

 凶悪な犯罪はもちろんのこと、別の視点――日本とフィリピンの関係もたびたび指摘されるようになりました

 引き金は、その「ルフィ」と目される男を含めた4人が特殊詐欺に関わったとしてフィリピンから「強制送還」されて逮捕されたことです。

 そもそもフィリピンはどんな国で、政治的にはどんな問題を抱えているのか。

 実は、昨年の6月末に世界中から注目を集めていた大統領・ドゥテルテが退任したことで、新しい局面を迎えています。

 今回のニュースレターでは、そのドゥテルテ前大統領(任期は2016年6月30日〜2022年6月30日)時代の取材をもとに、フィリピンについてご紹介したいと思います。

INDEX
1. フィリピンの国民性と、社会の闇とは?
​2.フィリピンのテロ組織の拠点
3.ドゥテルテ前大統領の存在
4.ボンボン・マルコス大統領(任期は2022年6月30日〜)の方針は!?

1.フィリピンの国民性と、社会の闇とは?

 フィリピンの方々は親日的ですごく優しい。

 愛情が豊かで家族や友人を大切にしている。

 私がぱっと思い浮かべる「フィリピンの日常」です。

 ただ一方で、貧困が大きな社会問題となっています。

 「テロ」、「戦争」または「麻薬」……、こうした悲しい出来事の根底には、必ずと言っていいほど貧困があるんですね。

 1日の暮らしを保つことができない。

 子供たちを支えることができない。

 以前、アフガニスタンについてご紹介したとき、一般の市民、農業従事者たちが麻薬の原料である「ケシ」を育てている、というお話をさせていただきました。彼・彼女たちはそれしかライフラインが存在しない。

1000枚の戦場【28枚目】アフガニスタンに広がる「ケシ」畑(撮影:渡部陽一)。写真をクリックすると解説動画に飛びます。

 その暮らしが苦しいからこそ、麻薬に手を出してしまったり、お金を得るためにテロ組織に入ってしまったりする。

 それゆえに麻薬戦争であったり、テロによって大切に育てた子供たちが殺されてしまう。

 ただ「殺されてしまう」という言葉では片付けられないぐらい、もう何十万人、何百万人という方々がテロで殺されてきたんですね。

 この負の連鎖が続くことで生活も改善されない。

2.フィリピンのテロ組織の拠点

 2016年11月からフィリピンへ何度も取材にいきました。

 僕がフィリピンに入ったときのターゲット、目的というのは、フィリピン南部ミンダナオ島です。

 

 このミンダナオ島。...